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【おはなし】告白雨雲 #毎週ショートショートnote

僕は雲だ。

空に浮かんで人間や自然を眺めている。

時々、人間が空に飛ばした「意識」を吸収することがある。
それは、後悔、懺悔、怒りなど周りに言えない事だ。人間側の言い分は天に告白するって感じなのか。

僕は「意識」を吸収して体は黒くなり雨雲になる。

こうなると僕の行動は決まっている。あの森へ行く。
あの森は雨が好きなんだ。

僕は吸収した「意識」を森の上で解放する。
森はサワサワと木々を揺らし、小川を豊かな水で満たしていく。
石に張りついたコケの色は濃くなり、小さな動物たちは木陰で雨宿りをする。

人間の黒い「意識」を浴びても森は嫌な顔もせず、ただそこに在る。
否定も肯定もせずに、うんうんと聞いているのだろう。

ひとしきり解放すると、僕の体は再び白くなった。

森から土と植物の香りが僕のところまで届いた。
森はキラキラと輝いている。

「キレイだね。僕は君が在るから体が黒くなる事もそんなに嫌じゃないんだ。いつもありがとう。僕は君のことが好きだよ。」

(410字)

『本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です』

今週もこちらの企画に参加させていただきました。
いつもありがとうございます。