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推しへ。

(憶測や思い込みを含む文章になる為、固有名詞を記す事を控える)

親愛なる僕の推しへ。

2018年の春に初めてあなたのことを「応援したい」と思ってから、もうすぐ5年が経とうとしています。前身のブログも含めて、このnoteでも、あなたが所属するグループの記事をたくさん書いて来たのに、なぜ自分がこんなにもあなたに惹かれたのかであったり、あなたを推すということの意味合いであったり、そういうあなた個人に関することを、実はこれまで一度も書いたことがありませんでした。

言ってしまえば、そういうことの大部分はお手紙を何通も重ねる中で少しずつ伝えてきたつもりだったし、それでも言葉にするのが難しいようなことが書き残されて来たのだろうし、きっと言葉にすると歪になってしまうそれらのことを、わざわざ不特定多数の人たちの目に触れる形にするのが恥ずかしかったり、罪悪感があったりして、敢えてそれを書くということはしませんでした。でも、ここ半年くらいで、自分の想いを何かしらの形にしておいた方がいいかな…と思うようになりました。きっと、あなたはこれからもっと多くの人の目に触れて、多くの人から愛されるようになるでしょう。そうして、あなたが今よりもずっと大きくずっと遠くなった時にも、僕自身が原点に立ち返り、自分の深い所にあるあなたへの想いを再確認できるように、出来る限りでも形にしておくべきではないかと思ったのです。

5年というのはちょうどいい区切りでもあり、また、あなたは僕にとって最高の、そして最後の「推し」でもあると、僕自身は決めています。今までも言葉にできない想いをどうにかして言葉にしようともがき苦しんで来た僕なので、今回も恥を忍んでそれに挑んでみようと思います。

◇ ◇ ◇ ◇

2018年の春にあなたを応援しようと思ったきっかけは、些細なことでした。ライブコンサート中のほんの一瞬の出来事でしたが、それは雷に打たれたようなドラマチックな一目惚れということではなく、「この人のことを長い時間をかけて追いかけてみよう」という気持ちの萌芽のようなものでした。それから、僕はあなたのことを目で追いかけ、あなたの内面のことを知ろうとし始めました。

当時所属していたグループでの活動を通じて、あなたの色々なことが少しずつ分かってきました。いや、分かってきたような気がしました。初めは、あなたは真面目で優しく、母性が強く仲間を思いやり、利己よりも利他を大切にするような人というイメージでした。実際にそれは間違いではなく、そういう要素は今もあなたの人間性の核を成すものだと思いますが、あなたのことを意識して追いかけ始めてみると、そのイメージの内側に留まらない、少しのクセやアクのようなもの含めて、本当に多層的な魅力をあなたが持っていると分かってきたような気がしたのでした。そういう意味では、あなたが比較的内に秘めたものを表しやすい性格であったこと、グループがメンバーそれぞれの個性を引き出す事をコンセプトの一つとして活動していたことが、僕にとって幸運だったのかも知れません。

あなたは誠実で根性のある努力家で、謙虚で心配性で自分よりも周りの事を第一に考えるような人である一方、極めて負けず嫌いで、注目されたいという願望を持ち、いたずらや悪ノリが好き(で、いざとなれば一線を超えないギリギリのラインまで行くことも厭わない)という一面も見せてくれました。そして、僕が応援をし始めた頃のあなたは、作り上げられたパブリックイメージとなりたい自分のギャップに苦しんでいるようにも見え、身に付けていたアイコニックなアイテムに対するあなたの単純ではない想いを穿った時には特にそれを象徴的に感じたものですが、とにかく、あなたの言動に見え隠れしていた "複雑さ" こそが、僕にとってはとても奥深い魅力に感じられたのです。

更に、そんなあなたの内面を知っていく(ような気になっていく)のと並行して、舞台の上で躍動するあなたの輝きを目の当たりにするたび、僕は自分が応援しようと決めたのは本当に素敵な人なのだと強く実感するようになりました。長い手足をしなやかに操り、時に全力に振り切って驚くほど力強いあなたのダンス。溢れ出る情感を湛えながら、微かに震えて伸びてゆくあなたの歌声。何かを語っている時の瞳の色、手指の動き、首の角度。何よりも、表現者としての姿を受け手に見せている間中、一瞬も途切れることのない愛くるしさ。知れば知るほどあなたの魅力は全方位的で、出会ってから最初の1年であなたという存在が僕の中でどんどん大きく確かに、離れがたいものになっていったのでした。

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あなたから多くの感動や幸せを受け取る一方、ほとんど人生で初めての経験だった「推す」という行為の、自分なりの芯というか、状況の変化に左右されずに保ち続けたいものを築かなければ、と僕は思っていました。拙い頭で必死に考えて何となく決めたのは、ライブやイベントに全て足を運ぶとか最前列でパフォーマンスを観るとかではなく、とにかくあなたに想いを伝え続けることにエネルギーを注ごう、何を受け取ったかではなく自分が何を為したかを「納得のいく応援ができていたか」の基準にしよう、ということでした。勿論、だからと言ってできる事がたくさんあった訳ではありません。結局はお手紙を書くとかSNSで発信をするとか、そういう地道な作業に終始してしまうのですが、でも一つだけ、あなたをモデルにした主人公が登場する長い物語を描いて完成させることができたのは、自分でも充分に納得のいく応援の形でした。それはあなたに想いを伝えるということの僕なりの到達点であり、あなたの存在が僕に何かを創り上げる力を与えてくれたことの証にもなるような気がしました。

2020年夏。出会った当時の所属グループを卒業して、新たなグループの一員として歩み始めたあなたは、それまで多くの人が持っていたであろう自分に対するイメージを壊し、新しい自分を発見して魅せていくということにより積極的になったようでした。僕にはそれがとても頼もしく思えたし、あなたが今まで見せたことのない一面を見せてくれるたびに、あなたに対する僕の 「好き」、「応援したい」という気持ちは更に加速度的に大きくなっていきました。あなたは日めくりのカレンダーのように様々な姿を見せてくれたし、あなたの魅力はとめどない湧き水のように溢れ出し続けていましたが、一方でその時期は、表現者とファンが、社会的な制約によって物理的にも心理的にも隔たれるという時間が長く続きました。

2020年からの3年間は、あなたを応援しているようでいて、あなたの存在によってこちらが「生かされている」と感じることが多かったように思います。自分なりにできることをやって来たつもりでしたが、今となっては、それがあなたにとってほんの少しでも力になっていた事を願うばかりです。幸いにして、あなたとあなたの仲間達は悩み立ち止まりながらもその不遇の時間を力に換え、今も舞台に立ち続け、だから僕は今もあなたに想いを伝えることができています。そのことに関しては本当に感謝の気持ちしかありません。全てを過去にして笑える日は未だに訪れていませんが、それでも少しずつ歩みを進めて来たあなたとあなたの仲間達には、きっとこれから、濃密で冒険し甲斐のある未来が待っています。この3年間であなたからもらった多くのものへ、これからの未来で、今まで以上の応援という形で恩返しができれば嬉しいです。

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親愛なる推しへ。

あなたは美しい。あなたは強い。あなたは優しく思いやりがあり、明るく剽軽で、そして本当に優れた表現者です。あなたはこれまでもたくさんの人を魅了してきたし、これからもっともっと多くの人を虜にし、多くの人を笑顔にしていくに違いない。どうか、あなたの真ん中にあるものをしっかりと守ったまま、自信を持って舞台に立ってください。

あなたが出演した作品の劇中の言葉を借りれば、僕には応援することしかできませんが、あなたを応援できるということは僕にとって他の何物にも代えがたい幸せです。これから、僕の応援の声はあなたにとってどんどん小さく、どんどん軽くなっていくのだと思います。それはあなたがどんどん大きくなっていく、ということだから。でも、あなたが誰かの応援を必要とする限り、僕はあなたを応援し続けます。あなたが応援を必要とする限り、あなたを励ます大勢の声の一部であり続けます。そして、いつでも、あなたの望みが全て叶うことを、あなたの幸せを心から祈っています。

これからも、あなたを応援できる時間が、少しでも長く続きますように…。

(2023年1月3日)



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