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@onefiveとSNS

現代においては、ミュージシャンやタレント、アクターなどエンターテインメントの世界に携わる人々にとって、プロモーション活動の中でSNSを活用するということはもはや不可欠な要素になった。@onefiveもまた、デビューした当初から積極的にSNSを活用してきたグループだ。というよりも、これまでのところは、プロモーション活動のほとんどがSNSとWeb媒体によって為されていると言っても良いかも知れない。

そもそも@onefiveは自らの存在自体を「SNSアカウントの開設」を通じて世の中に発信したグループであった。2019年10月15日にTwitter、Instagram、YouTubeチャンネルのアカウントが同時に立ち上げられ、「Pinky Promise」のティザー映像が公開された。そして、それを音楽ナタリーが記事として取り上げることによって多くの人がグループの存在を初めて知ることとなった。

2019年10月19日、『さくら学院祭☆2019』のステージでのパフォーマンスを持って@onefiveは実質的な活動をスタートさせたが、その活動の範囲は主にSNSの中に留められていた。19日のステージの直後、@onefiveの "正体" を紹介する記事が幾つかのエンタメニュースサイトに掲載され、20日にはデビューソングである「Pinky Promise」が各種音楽サービスで配信開始されたものの、その後は@onefiveとして単独のインタビュー記事などが雑誌やWeb媒体に掲載されることはなかった。一方でTwitterとInstagramの公式アカウントは活発に発信をおこなっていて、2019年10月15日のアカウント開設から2019年12月31日までにTwitterでは79回、Instagramでは84回の投稿がされている。この時期、2つのSNSでの投稿の多くは同期していて、フォトを伴うものはInstagramとTwitterの両方から、テキストやリンクなど情報のみの時はTwitterから発信されていた。

当時@onefiveの4人はまださくら学院に在籍中であり、年明けには受験も控える最上級生が揃って派生ユニット(≠部活動)として本体から離れて活動することを不安視する声も少なからず聞こえた。その不安への答えという訳ではないと思うが、彼女たちの置かれた状況を考えれば、あくまでもさくら学院生としての活動を主としながら@onefiveはSNSでの発信をメインに無理のない形で動く、というのは理にかなったものであった。

初期の投稿内容は「Pinky Promise」のMVやスチール撮影時のオフショットなどが中心で、新たに撮影された写真などは無かったが、特徴的だったのはメンバーが自撮りしたり他のメンバーを撮影した写真が本人のテキストを添えて投稿されたことだ。加えて、まだ数は少なかったがInstagramのストーリーズへの投稿もあり、ファンはメンバーから "直接" 発信を受け取ったような気分を味わうことが出来た。もちろんこれはメンバーからの直接発信が極めて少ないさくら学院とのギャップがあるからこそ目立ったことでもあるのだが、SNSを活用することによって@onefiveの活動がさくら学院に影響する事を最小限に抑えつつ、2つのグループの活動を差別化することが出来ていたのではないかと思う。

2020年3月末までは同じような内容が続いたが、中にはメンバーたちがファッションやメイクのポイントを自分自身で解説する短い動画の投稿などもあった。

この時点では@onefiveが4月から独り立ちする予定であったのは間違いないし、このように自撮りやテキスト投稿、動画を通じて(グループアカウントではあったが)、SNSでメンバーが個々に発信することに慣れようとしている時期だったのではないかと考えている。そしてそれは、4月以降のステイホーム期間にInstagramのストーリーズで4人がそれぞれの「おうち時間」を紹介する、という流れに繋がっていくのだが、形としてはさくら学院に在籍し続けながら学院生として露出することがほとんどなく、しかも@onefiveとしての活動も制限される難しい時期において、InstagramやTwitterが果たした役割は大きかったと言えるだろう。

5月にはTwitter、Instagram、YouTubeに続く4つ目のサービスとして、noteに@onefiveの公式アカウントが開設された。初めはメンバーがオリジナルグッズのアイデアを出し合う座談会のテキストとTwitterのアンケート機能と連動させ、ファン参加型の企画としてマグカップのデザインを決定した。noteではその後、2020年11月から4人が持ち回りで記事を書くマガジン(有料コンテンツ)の投稿が始まり、12月の配信ライブではファンからライブレポートを募り掲載するという企画もおこなわれた。noteはSNSとは異なるかも知れないが、@onefiveのグループの個性をよく示すメディアプラットフォームだと個人的には思っているので、今後もうまく活用してくれることを期待している。

Twitter/Instagramと同じタイミングで開設されたYouTubeチャンネルは、アクティブな他の2つのSNSと比べて、当初はあまり目立つことはなかった。メンバーが集まったり、外部でのイベントに参加することが難しい状況が続いたため、基本的にはミュージックヴィデオや短い告知メッセージの映像を公開する場として使われていた。だが、2020年10月20日にグループとして初めてとなるライブトーク『「雫」リリース記念 @onefiveと"おしゃべりの秋"』が配信されたことで、YouTubeチャンネルのコンテンツも広がりを見せることとなった。これ以降、現在(2021年7月5日)までに合わせて4回のトークプログラムが配信されていて、これはレギュラー番組などを持たない@onefiveのファンにとって、4人のリアルな姿を見ることができる貴重な機会であった。

時系列で見れば、このYouTubeで初めてのトークプログラムを配信した頃を境に(「雫」の配信リリースのタイミングでもあった)、@onefiveのSNSへのアプローチは新しい段階に入ったように思える。11月19日にはLINEの公式アカウントが開設され、情報提供の形に新しいバリエーションが加えられた。そして、2020年12月22日の『@onefiveオンラインライブ -Blue Winter2020-』において、TikTokのアカウントを開設することが発表された。

@official.onefive

私たち@onefive のTikTokが開設されました!今後の私たちのTikTokでの活動もお楽しみ下さい!@onefive #ワンファイブ #tiktok始めました #女子高生 #TikTokXmas

♬ まだ見ぬ世界 - @onefive

KANOがライブのトーク中に突然「TikTokやらない?」と言い出す "体" でアカウント開設が告げられたのであるが、もちろん以前からチーム内でTikTokを始める時期は検討されていたのだろう。映像に特化して簡単に加工や編集がおこなえるTikTokは、@onefiveと同年代の若い人たちにとっては今やInstagramを凌駕するほどの人気を持つと思われるが、それだけに使い方が難しい側面もある。以前から彼女たちを支えていたファン層などに鑑みても、初期の段階からではなく、グループが独り立ちして、メンバーがSNSの運用に慣れたタイミングでTikTokを使い始めたのは納得ができるものであった。


@onefiveとSNSの関係性

2021年7月の時点で@onefiveはTwitter、Instagram、YouTube、TikTok、加えてLINE、noteで公式アカウントを運用しており(スケジュールのまとめとしてはGoogleアカウントも使われている)、使えるサービスが出揃ってきた事もあって、それぞれの役割も固まってきたように見える。Twitterは初期と異なりメンバーの言葉を直接伝えるというよりは、情報をいち早く、或いは繰り返して伝える役割が大きくなった印象である。Instagramはやはりフォトに強い。特に、ファッションブランドとのコラボレーションが進んでいる期間は、まずInstagramでフォトが公開される事が多く、@onefiveのアカウントは華やかな空気に包まれていた。一方、ストーリーズでメンバーのプライベートなどを発信する回数は減少していて、そのストーリーズが担っていた役割を受け継いだと思われるのが、TikTokだ。TikTokでは告知やメンバーが集合した際に撮影された動画も投稿されるが、4人が自宅で撮影したものが発信される割合が、やはり大きい。長いテキストの投稿が可能なnoteと併せて、メンバー個人からの直接の発信は、この2つのプラットフォームを中心におこなっていくということなのではないかと思う。

さて、ここからは僕が@onefiveのSNSに触れて来て感じた、ごくごく個人的な感想である。@onefiveのSNSの使い方は慎重でよく練られたものだと僕は思っている。「慎重」というのはさくら学院からそのままグループに持ち込まれた文化であるとも言えるが、各SNSをスタートする時期への配慮や、メンバーが段階を踏んで発信により深く関わって行った経緯などは@onefiveの一つの特徴である慎重さの表れだ考えられるし、例えばLINE、TikTokのアカウントを立て続けに開設したことによって、4人のメンバーがそれぞれ異なるプラットフォームでソロ配信をおこなうことができるようになった流れは、このグループが存外にしたたかであることを感じさせるものでもあった(穿ち過ぎかも知れないが)。

誕生の瞬間からSNSと深い関わりを持って活動してきた@onefiveだが、グループとしてのSNSへの向き合い方を考えてみると、まず一つにはもちろん、コストをかけずにプロモーションができるということがあるだろう。公式ホームページやファンクラブの設立を望む声もあり、僕もそれには全面的に賛成するのだが、まだ、今しばらくはこのSNSを活用した草の根的なプロモーション活動を続けるのではないかと個人的には思っている。そして、もう一つ印象的なのは、SNSをプロモーションの手段として使うのと同時に、メンバーの表現を磨く場として上手に使っているということだ。

2021年6月19日に渋谷タワーレコードでおこなわれた、映像作品のオンライン視聴イベント。その中で、「ソロ配信をしたおかげで、トークスキルやチャットへの対応力が上がった」ということをメンバーが口にする場面があった。noteでは長文のテキストや写真を、InstagramストーリーズやTikTokではセルフプロデュース、演技、ダンスや歌も披露する機会を得た。オフィシャルな場に限らず、常に見られていると意識することでファッションやメイクへの探求心も強まるし、YouTubeチャンネルでの配信は、近い未来に持つことになるかも知れないレギュラー配信番組のイメージトレーニングにもなるだろう。そして、SNSから発信される表現の中にも@onefiveならではの「品」と「誇り」が保たれていることも、忘れてはならない要素だ。

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偶然にも、このテキストを書いている7月5日に@onefiveのTwitterアカウントのフォロワーが10,000人に達した。Instagram、TikTok、YouTubeチャンネルに続いての1万フォロワー達成となる。メジャーなアーティストの基準からすれば決して多いとは言えない数であるが、一つの区切りであるのは間違いない。ここからグループが積極的に認知を広げる方向へと歩み出すことも充分に考えられるし、今はまだどちらかと言えば "閉じた" 世界への発信となっている@onefiveのSNSが、もっともっと多くの人へ彼女たち自身の魅力を届ける手段として機能し始める日を、僕は楽しみに待ちたいと思う。

(2021年7月5日)





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