YUIMETALのこと。2018年のBABYMETALのこと。(前編)
(この記事は過去に別のブログサイトで公開したものです)
2018年10月19日夜。
BABYMETALの各種公式アカウントで、「新体制についてのお知らせ」と銘打った報告が投稿され、休養中であったYUIMETALがBABYMETALから離脱すること、今後はSU‐METAL、MOAMETALを“中心とした”新体制に移行する事が明らかにされました。
同時に水野由結名義で所属事務所アミューズのアーティストページに「ファンの皆様へ」という一文が投稿されました。水野由結さん本人が紡いだと思われるその文章は、端正できびきびとしていて、余計な情報を排し感情を抑えながらも真摯であり、僕にとっては自分が常々イメージしていた水野さんの人間性に当てはまる印象のものでした。
僕は直前までYUIMETALの復帰については楽観的に考えていましたので、報せを受け取った時に大きなショックを受けたのは間違いなかったのですが、一方でどこか「ああ、やっぱりそうか」と納得してしまった自分もありました。幕張でお会いした方に言われた「(YUIMETALが復帰すると)信じたかった、のかも知れませんね」という言葉が、僕のこの半年間の実際だったような気がします。僕はむりやり楽観的に構えてはいたものの、広島での『LEGEND S』公演をドクターストップというアナウンスで急遽欠席して以来、結局は離脱という決定が為されたのちの水野由結としてのコメントに至るまで、YUIMETALの「姿」や「言葉」が一切リリースされなかったこと。更に不在の明確な発表が5月からの欧米ツアーが開始しても無かったこと。世界中のBABYMETALファンたちが不安に駆られ、焦燥し、要ること要らないことを想像し、疑心暗鬼になっていた半年間でした。
昨年12月以来のYUIMETALの不在と結果したチームからの離脱、そして5月のライブ以降で明らかになったBABYMETALとしての「変化」は整理し、分けなくてはならないと考えていて、そしてこれは多くのメイトさんも同様なのではないかと思います。1年に満たない短い期間で立て続け起こった大きな出来事で感情を揺さぶられ続け、冷静にフラットな視点で今のBABYMETALを見ることはなかなか簡単ではありませんが、何年か後の自分のためにも少し文章に残しておきたいと思います。
起こったこと
■2017年12月2日
12月2日と3日に広島グリーンアリーナで行われる『LEGEND − S − 洗礼の儀 − 』公演にYUIMETALが参加しない事が発表される。理由は体調不良によりドクターストップのため。(Twitter、LINEへの投稿は残っているものの、リンク先のニュースリリースは削除されてるようです)
BABYMETAL on Twitter: "BABYMETAL 広島公演「LEGEND − S − 洗礼の儀 − 」についてのご報告とお詫び
https://t.co/xUiVyY7ZV7
■ 2018年1月5日
藤岡幹大氏が逝去。
報告は1月9日夜、本人のTwitterアカウントに投稿された。
■2018年2月26日
WORLD TOUR 2018のスケジュールが発表される。
■2018年4月1日
各種SNS公式アカウントにより 「新たなお告げ」としてMETAL RESISTANCE EPISODE Ⅶのティザー映像がリリースされる。
■2018年4月30日
アメリカにおけるレコードレーベル「BABYMETAL RECORDS」の設立が発表される。
■2018年5月1日
公式アカウントからMETAL RESISTANCE EPISODE Ⅶの詳細、THE CHOSEN SEVENの内容を示唆する投稿がされる。
■2018年5月7日
新曲「Distortion」リリース。
■2018年5月8日~5月20日
5月8日のミズーリ州カンザスシティーからBABYMETAL WORLD TOUR 2018 in US がスタート。YUIMETALは不在で、新たな衣装とメイク、2人のダンサーを従えた “DARK SIDE” のパフォーマンスが初めて披露された。
<画像引用:音楽ナタリー>
■2018年5月9日
BABYMETAL WORLD TOUR 2018 in JAPANの開催が発表される。
■2018年6月1日~6月9日
ドイツ ニュルンベルク Rock am Ring からBABYMETAL WORLD TOUR 2018 in EUROPEがスタート。メンバー構成、演出等はUSツアーと変わらず。最終日の6月9日はイギリスでのDownload UKに参加。
■2018年8月23日
Good Things Festivalへの参加が発表される。オーストラリアでの初めてのライブ。
■2018年9月3日
Judas Priestのサポートアクトとしてシンガポールでのライブに参加することが決定。
■2018年9月7日
Sabaton、Galactic Empireを迎えて埼玉スーパーアリーナで『DARK NIGHT CARNIVAL』の開催が発表される。
■2018年10月19日
新曲「Starlight」リリース。YUIMETALの脱退を発表。
YUIMETALについて
YUIMETALに関する公式な情報は2017年12月2日『LEGEND − S − 洗礼の儀 − 』への不参加が発表されて以降、2018年10月19日に脱退が明らかにされるまで全くリリースされることはありませんでした。唯一、2018年8月15日にJAPAN TOURのチケット先行発売の際に「YUIMETALの出演は未定となっております」という短いコメントが注意書きに添えられていただけでした。また、公式アカウント以外からの発信としては、5月10日にアメリカのマネジメント会社の広報が「YUIMETALは脱退していない」というコメントを発表。( www.altpress.com )
6月24日に行われたアミューズの株主総会では、質疑応答においてYUIMETALについての質問が多く投げかけられ、畠中達郎社長から「体調不良はあったものの現在は回復している。10月の日本公演は楽しみにしていてほしい」という回答がされていました。
YUIMETALの情報は徹底的に規制され、表に出ないように配慮されているように見えました。BABYMETALチームのこのやり方には当然賛否両論があり、SNS上での反応を見る限り国内外の多くのファンが「否」の立場に立っていると思われました。僕は5月にこのブログ内のエントリで書いたように、BABYMETALが “設定” を大切にし、情報を規制する事には「賛」の立場です。
体調不良が事実なら正直にアナウンスすれば良い。それがファンに向けての誠意だった…。その意見は最もであり、僕自身もBABYMETALのやり方がベストだったとは決して思ってはいないのですが、不在の理由を公式に発表すれば今度は病状などにも言及しなければならなくなる。それはYUIMETALではなく「水野由結」のパーソナルな部分に踏み込んで行く事になるので、BABYMETALチームからアナウンスし辛いというのは僕には理解ができます。最初の欠席が2017年12月。それから5か月も経った2018年5月のツアーにおいて「YUIMETALは体調不良のために参加しません」という内容を、BABYMETAL公式アカウントが33万人を超えるフォロワーに向けて発表したら、何が起きたか。運営の不備に目を向けるのであれば、同時にそれと異なるやり方を選んだ場合のリスクも考えるべきだとは思います。
YUIMETALとしての情報が徹底的に規制されていた一方、水野由結としての情報に関して箝口令が敷かれていたとは決して思えませんでした。例えば、2018年3月3日にタワレコTVで配信された「南波一海のアイドル三十六房」で当時さくら学院中等部3年であった山出愛子さんが水野由結さんのエピソードを話し、3月14日にはさくら学院公式ブログ内で、水野さんと連絡を取り合ったことを明かしました。これは2017年12月以降、アミューズ側から初めて公式な形で水野さんの近況に触れたリリースとなりました。
また、2018年6月20日にはBABYMETAL公式、さくら学院職員室、山出愛子さんなどがYUIMETAL=水野由結さんの誕生日を祝うツイートをしています。中でも佐藤日向さんは “連絡は取り合えている” という事を明かしており、水野さんについて周辺関係者がことさらデリケートになっている様子は伺えませんでした。
YUIMETALがBABYMETALを脱退するに至った経緯を考え始めると、そこには必ず「感情」が入り込んでくるし、本人たちの言葉を一切知ることが出来ない以上は多量の「憶測」が入り込んできます。どの視点から見るか、であったり、考える当人の精神状態が大きく影響してきてしまう事も否定できません。100人居ればそこには100通りの考え方が存在し、その全てが間違ってはいないと思うし、一方で全てが正解ではないとも思っています。
あくまでも僕個人の考え方であり、それを他人に押し付けるつもりは全くないことを前置いたうえで、僕が今回の経緯について考えて出した結論はこうです。BABYMETALチームは情報を規制する事で「水野由結」を守っていたと思うし、水面下では双方が復帰に向けて出来る限りの事を尽くして来たと思う。結果として水野さんは「YUIMETAL」ではなく「水野由結」を選ぶという答えを出し、チームはそれを尊重した。事の成り行きに悪意を見出そうとすれば幾らでもそう見る事はできるけれど、僕はそうは思っていません。それはもう起こった出来事に対して何を信じるのか、という問題になってきてしまうのですが…。
僕は、水野由結さんの19歳の誕生日に、こんなツイートをしました。彼女がどこで何をしているのか分からない。この先がどうなるか分からない。そんな状況で出て来たのはこんな言葉でした。
シンプルに言えば本当にこれだけの事であり、それは森先生の「(スーパーレディである事のただ一つの条件は)幸せであること」という言葉と同じであり。何かを捨ててでもそれを手に入れたいと望むなら、彼女がそう決めたのなら、それを全力で応援するしかないと強く思うのです。もちろん僕はYUIMETALが居るBABYMETALをもっと観ていたかったけれど、水野由結さんにとってそれが一番の幸せでないのならば、それを無理やり求めるのは僕の望むところではありません。
YUIMETALに対しての想い。それは本当に1人1人のメイトさんで複雑に異なり、デビュー当時から彼女を見ている人たちは、BABYMETALを応援して3年にも満たない僕には想像もできないような重くて深い想いを持っていることでしょう。でも、僕はやはり「今」の彼女たちを過去に閉じ込めたまま自分も足を止めるという事はしたくない。
過ぎ去ってしまった最高の時を繰り返し繰り返し愛で、そこに秘められた肉体と知性と技術の融合を探求しながら、今しか観る事のできない今のBABYMETALと水野由結さんを全力で応援したい。これが、現時点での僕の姿勢です。
(公開:2018年12月31日)
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