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ひよこがやってきた

クロアチア東部のスラヴォニア地方に引越して2ヶ月半が過ぎた。今まで暮らしていたコルチュラ島から北に450km、同じ国でこそあるものの、食文化も気候も人々もまるで違う外国に来た気分だった。

土地は細長く分けられていて、例えば私達が住む集落周辺では3000m2(20m×150m)単位で所有されている。土地の端っこにおまけみたいな民家があって、人々は鶏や羊や豚や山羊それから番犬として大きな犬を飼って、野菜や果物を育てて暮らしている。

庭で鶏を飼ってるお家がご近所さんに何軒もあって、朝5時に雄鶏がコケコッコ〜と鳴くのどかな集落だったから、私達が鶏を飼い始めるハードルも高くなくて引越した1ヶ月後にひよこがやってきた。

5〜7羽くらい飼う予定でひよこ売りのおじさん家に行ったんだけど、ぴよぴよぴよぴよ鳴いてる箱いっぱいのひよこ達に心奪われ(はじめて見る小さなひよこ達のかわいいことかわいいこと)、10羽で100kn(約1733円)にするよっておじさんに言われて迷ったけど10羽迎えることにして、最後おまけだよって1羽ひょいっと箱に入れてくれた。

たまごを産むメスのひよこがほしかったんだけどおじさんは正確には判別できないらしく、「持ち上げて足をぴんと伸ばした子はオスで曲げる子はメス」という初めてきく判別方法で、たぶんこれはメスかなって選んでくれた。

生後2日目の小さな小さなひよこ。30分の長旅を無事に終えてお家にやってきた日。
おしめしてるみたいなおしりがかわいい。おしりが重いからかまだ足が弱いからかわかんないけど立ち上がれずにぽよぽよ歩くのもかわいい。時々アキレス腱伸ばすみたいにストレッチするのもかわいい。

ひよこを迎える前に実家のじいちゃんばあちゃんと電話したら「じいちゃん達が小さかった時代はみんな外に鶏小屋あって鶏飼ってだっけよ〜」「ご飯の残りあげたら育つから難しくねえよ〜」「3羽飼うのも5羽飼うのもほだい変わんね〜」って言ってた。

ひよこのうちに玄米をあげて胃を強くすると大きくなってから何でも食べる強い子になること、玄米の中でも特に青米が好きなことをきいて閃いた。

ちょうどコンテナ稲作でお米を育てたところで、収穫のタイミングの都合で黄金色になってない青米もあって、これが栄養価の高いひよこの大好物だったとは。点と点が繋がったぞ。

とはいえ稲から外したお米は硬い籾殻に覆われていて、籾殻を取り除く作業が必要になる。機械化が進んだ現代では機械で籾摺りが可能だけど、米を育てる人がいなければ機械もないクロアチア・スラヴォニアの地で使えるのは人の手しかない。

餃子の皮をつくる麺棒で叩いて指先でちまちま剥くと、見慣れたお米が現れる。
こうして手に入れた貴重な青米を浸水させて砕いてあげたら、かわいい小さな嘴でつんつん食べた。

雑草が大好きで、庭に生えてる雑草をみじん切りにしてあげると大興奮でぴぴぴぴぴぴぴぴって鳴く。少し大きめの雑草を見つけたひよこは走り出して他の子が追いかけて大運動会状態になる。外の世界に雑草がたくさんあることを知らない箱入り娘達が、外に出かけたらどんなに天国か想像しただけでにやにやする。

庭の土にはミミズもたくさんいて、生後3週間過ぎたあたりからミミズを見つけたらあげていて、これがまた大興奮の大運動会。1匹のミミズをみんなで取り合っておいかけっこして最後には誰かがごっくん飲み込む。

栗の鬼皮・渋皮、白菜の芯、人参の葉っぱ、普段捨てていたものをひよこ達は大興奮で食べる。ひよこにとっては雑草と野菜の区別がないんだろうな。

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