美しき無敵の破壊力を。



久しぶりに舞台版ライチ☆光クラブを見た。

ダフの処刑のシーンは何度見ても泣いてしまう。カネダに自分を重ねて、タミヤくんとダフがいなければ死んでしまいそうな鬱屈な気分になるのが好きだ。

親友同士の秘密基地を処刑場にされてしまって、親友を殺されて、それでもタミヤくんについていこうとするカネダが健気でとっても可愛い。


「タミヤくん、僕を撃って。僕、君に撃たれるなら大丈夫だから。」


ダフの最後の言葉。大丈夫じゃなかったじゃん。

原作ではその後、ダフは植物状態になる。舞台ではそこで死んでおしまい。どっちにしろやり切れない。

一番好きな処刑シーンは雷蔵の顔剥ぎ。

「顔はやめて!」


女の子の悲痛な叫びにも臆することなく、脳みその基盤を操作されたライチは彼女の顔の皮を剥ぐ。後ずさりながらも諦めたようにビリッと一思いに剥がれた彼女だったものは血の海に倒れ込む。

観劇した当初は、結構前の席に座っていたので返り血を浴びまくった。

ビニールシートをかぶろうという隙もないくらい夢中で見ていた。


彼女はライチの顔とお洋服を縫う係だった。

「あたし達とおなじ黒いお洋服よ!」

嬉しそうにライチに真っ黒な布切れで作った服を着せる彼女が好きだった。


「待ってライチ!...お餞別よ。」


猫の催眠マスクをライチに差し出す彼女は、

殺人マシンの母親にでもなった気分だっただろう。だって、ライチの人相を作ったのは彼女だから。

彼女の好みに、ハンサムで力強い男前が出来上がったから。


そんな男前に捕まったカノンに、ぼくは嫉妬をした。

あんなに美しい少年たちの愛と憎悪を間近で見られるのだ。羨ましい。


「僕もう綺麗じゃないの?」


ぼくがジャイボのセリフで1番好きなものだ。

ずっと美少年を貫いてきた彼も、14才を間近に控え、だんだんと汚い大人たちと同じ形になって行く。

それを拒むけれど、綺麗じゃなければゼラには愛されないと心ではわかるけれど、言うことを聞かない体への苛立ちも感じる言葉だ。

デンタク。彼はライチの基盤を作った少年だ。

最後にヘッドセットを被せてライチを暴君へと変貌させたゼラに仕返しをする。


「ごめんな、ライチ。」


悲しそうにヘッドセットを付ける彼の背中が、ぼくにはとても小さく見えた。

デンタク、雷蔵、ヤコブの3人でよくつるんでいた。

ヤコブに関してはお調子者で、でも父が落語家だから無理をしている部分もあるように見える笑顔を浮かべている。

なにかいたずらを仕掛けてはよく雷蔵に「馬鹿ね、」なんてあしらわれていた。

彼は何も知らずに着いてきて、ライチに投げ飛ばされて廃工場の壁にぶつかって死んだ。

「光」という文字の形に血が飛んだ。綺麗だと思った。

ニコは貧乏でいじめられていた寡黙な少年。いつも世間を睨みつけるような目で見ていたが、タミヤの「もっとニコニコ笑えよ!」という言葉に感化されて少しずつ柔らかい表情も見せるようになった。

笑顔が可愛いからニコ。彼が得た初めてのあだ名だった。

そんな彼は光クラブに入り、ゼラへ絶対の信頼を置くようになる。よくいえば忠誠心が溢れる。悪く言えぼ盲目的で異常な思いをゼラに向ける。

「俺はEins ニコだ。」

彼の言葉には自分が1番の称号を貰った誇りを感じる。

だからこそジャイボの裏切りも許せなかったのだろう、ライチ畑に火を放ったのはタミヤだとそそのかされ、最初こそ信じて必死に消火に行き全身に火傷を負った。

しかし、ジャイボの企みだと知り、裏切られた悔しさ、怒り、タミヤに対する罪悪感からか最後に残ったライチを1粒、タミヤに託す。

とても綺麗で熱い友情の爆誕だ。


タミヤは初期「ひかりクラブ」のリーダー。

「田宮博の ひ、田伏克也の か、金田りくの り。3人の、ひかりクラブだ!」


小学生だったあの日、彼はそう言って秘密基地の地面に文字を刻んで行った。

壁に真っ赤なペンキで光と記し、ここを自分たちの要塞にすると高らかに宣言した。

紛れもないリーダーだった。


そんな3人の元に、転校生の常川博之-ゼラ-が現れてひかりクラブは崩壊する。


美しきグランギニョルの末に、ぼくは大人になることの穢らわしさと希望を見出した。


一、己をチェスの駒と見立てよ。それに反して動くことはルールに反する。

これは僕が一番好きな十ヶ条の中の一つだ。

この誓約が宣言される時、映画でも舞台のDVDでもニコの顔が画面に映された。

その時のニコは二人ともとても精悍で、キリッと、男らしい、潔い顔をしていた。

その顔が好きだ。その顔こそEinsの称号にふさわしい。

言いたいことは山ほどあるのだが、一つだけ。


美しいことは正義だ。

なので僕は雷蔵が大好きだ。彼女は最期まで美しくあろうとした。女の子であろうとした。自分を捨てなかった。心を殺さなかった。

ぼくも、自分の心に正直にいたいと思った。


見ろ、読めとは言わないが、機会があればぜひみんなにも触れて欲しい作品の一つだ。


ライチラライチララライチ。

処刑の時間だ、ララライチ――。








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