食事介助の面接②
前回は…
いよいよ面接が始まったワタシ。副館長から思いがけず資格取得のお誘いを受けたのであった。
「ご存知の通り離職率が高くて常に人不足です。ワタシさんのように若い方にどんどん来てもらいたいというのが現状で…のちのち資格取得を考えてみるのはどうでしょうか?」
楽そう という理由だけで面接に来たワタシ。大変恐縮してしまう。45歳のワタシを「若い」カテゴリーにいれてくれる事も非常におどろきだ。
前職の美容業界では、40代スタッフはマダムで「熟練老練」なイメージがある。お世辞にも「若い」カテゴリーには入らない。
職種によって若さの位置付けがこうも変わるのは面白い。接する対象者が高齢だと、若さの基準が大幅に引き上げられるという事だろうか。
「現在、常用してる薬はありますか?持病とかは?」
はっ!
ワタシは何年も抗うつ剤、眠剤、抗不安薬を飲んでいた。調子が良くなってきて少しずつ減薬し、今では薬を飲まなくても 生活ができるようになっている。
「ないです。」(嘘じゃないよね?)
ドキドキ…
それでは最後の質問です。これは皆さんに投げかけてる質問で…と前置きされ、
「あなたの性格を一言で表すと?」
えっ?!?!?!?!
えーー!
面食らった。
う…なんだろう…早く答えなきゃ…
ワタシの脳は高速でこの場に最も適した言葉をハジキだす。
「粘り強さです。(キラリ✨)」
答えた瞬間、副館長からふむふむと感心した雰囲気が漂ってきた。(よかった!)
いつからこれますか?の問いに いつでも!と即答。それでは後ほど連絡します、と面接は終わった。
副館長は最後に 館内を案内してくれた。
まずは食堂。
ここで食事介助をする。一階は割と元気な方ばかりなので介助はしやすいそうだ。2階、3階は…まぁワタシさんはまだ初めてですからここからスタートですと説明を受けた。
隣は厨房室。
あぁ独特の香りだ…。どこの病院も学校も、食事を作り出す場は同じ香りがする。不思議だ。
「建物は築30年を越えて古いんですが、外壁を塗ったり設備を変えたりと色々やってるんですよー。これも最近の機械で…」と指し示したクレーンみたいな装置。
まるでアイアンマンに出てきそうな機械。かっこいい。これで職員の腰を守れますと言っていた。
外まで送ってくれた副館長は、向こう先にある有料老人ホームを指差した。
「あそこは入居するのに8000万かかるんですよ。」8000万っ!!!驚きすぎて叫んでしまった。
「最上階に大浴場があって天気がいいと窓から富士山を眺めることができるのがウリなんです。老健とは大違いです。最近は値段を下げたと言ってましたがね…」
老健に入居するのはかなり大変だと聞いてましたが…と聞くと、今でも200人の待機者がいるという。200人!昔は待機者800人だったから今はまだいいんですと。800人っ!!保育園の待機児童人数とはスケールが違う。
なぜ老健に入居者が殺到するのかと聞くと、年金の受給額範囲で介護生活が送れるからですと副館長は答えてくれた。有料老人ホームは企業の上役や経営者に人気があるんですよと教えてくれた。
なんとも言えない感覚に陥る。これはお金の有無で産まれる差なのだろうか。言葉に表せない違和感やモヤモヤはなんなんだろう。
ホテルでいったらビジネスホテルかラグジュアリーホテルか。服だったらUNIQLOかGUCCIか。
それぞれの価値観の違いだがそれにしても入居に8000万は適正な価格なのだろうか?
謎だ…わからない。
副館長とすっかり打ち解けて話し込んでしまった。「今日はありがとうございました。連絡お待ちしております。」と、老健を後にしたワタシであった。
つづく
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