Warhammer 40:000: Chaos Gate - Daemonhuntersの紹介

とりあえず実質的な記事1本目ということで先日新たなDLCが発売されそれと同時に日本語対応も行われたこのゲームについて解説していきたいと思います。実はゲームが発売されて2週間後くらいに購入して内容が気に入ったので日本語化に取り組み、6月には完成させて公開いたのですが多分日本語化MODが存在していたことを知らなかった人が大多数と思います。

今後は作成した日本語化MODについてもこちらで告知していくつもりです。

どんなゲーム?

簡潔に言えばXCOM系ゲームです。元はテーブルトップゲームとして主に海外で人気のあるWarhammer 40,000の世界を舞台に、人類をケイオス神の干渉より守るために設立された超精鋭の極秘部隊グレイナイトの部隊を指揮して、ケイオス4大神の1人であるナーグルの下僕たちと戦っていきます。

導入部が終わった後はプレイヤーは全体マップ上で自身の乗艦であり司令部ともなる打撃巡洋艦ベイルフル・エディクトを動かして各地で発生するミッションに対処していくことになります。

舞台となるティルタエウス星域への疫病の感染を防ぎ、その根源を見つけてナーグルの下僕たちの陰謀を打破することがゲームの目的です。

全体マップ

ある程度ゲームが進むと敵の艦も全体マップ上に現れ、接触すると戦闘になります。これは単なるビジュアルノベル的戦闘で敵の種類に応じていくつかの選択肢が提示されるのでその中から1つ選んで処理していきます。
艦には耐久力、シールドと兵器の強度といったパラメータがあり、これに基づいて戦闘結果が決まります。

他に移動中にランダムに発生するイベントがあり、これもどう対処するか選択しますが基本的に8割くらいは何らかのコストを払ってダメージを回避、あるいは複数のマイナス効果のうちどれか1つを選ぶというお邪魔イベントです。多分これは多くの人にとってはストレス要因なだけでしょう。

地上戦

このゲームのメイン要素となるのが地上で最大4人(一部ミッションではゲストキャラが参戦して5人に)のグレイナイトを指揮して戦う地上戦です。
戦闘は基本的にはXCOM系ですが、このゲームならではの要素としては

  • 攻撃の命中、回避といった要素はない

  • 装備やアビリティによる強化幅が非常に大きい

  • MP的なポイントを使って近接、射撃攻撃を強化可能

  • 特定条件下で確率で発動する自動アビリティがある

  • ターンが経過するに従って敵の増援や強化、妨害といったイベントが発生

といった特徴があります。

XCOMやBattletechと同様、敵を未発見の時と発見済みの時とでは若干ターンの流れが異なります。未発見の間は自分のターンのみ回ってくるので目標に向かって移動し、敵が視界内に入ると自分と敵のターンが交互に繰り返されます。正直このシステム、あまり良くないと思っていて接敵する時に最適な配置で臨みたいのにどこまで進んだら交戦状態になるのかがわかりづらいんですよね。一応敵の大まかな位置は表示されるので敵が視界に入らないぎりぎりの位置まで部隊のメンバーを移動させていくわけですが、慣れが必要ですし、慣れてもこうした細かな調整が面白いとは思えません。

敵を全滅させると再びずっと俺のターン!な状態に戻るわけですが、味方が強くなってくると遭遇した敵集団を1ターンで殲滅できることも増えてきてずっと俺のターン!→敵と遭遇、1ターン内で全滅→またずっと俺のターン!なんてこともしばしば、時にはミッション開始から1ターンで初期位置からマップの反対側まで駆け抜けてミッション終了!なんてこともあります。

戦闘システム詳細

XCOM系ゲームの基本としては遮蔽物に影に隠れて回避率を高め、同様に物陰に隠れようとする敵を側面攻撃したりするのが重要です。しかしこのゲームでは攻撃は必中です。
では遮蔽物は何の効果があるのかというと、ダメージを軽減してくれます。半遮蔽はダメージ -1、完全遮蔽はその遮蔽物を隔てた攻撃はダメージなし、45度以上の角度からの攻撃はダメージ -2となります。

また射撃武器には射程が設定されていますが、その射程の50%より遠くの敵に対してはダメージ -1、75%以上遠い敵に対してはダメージ -2となります。
基本的な武器の射程は10、攻撃力は4なので6タイル離れた半遮蔽の影の敵を射つとダメージは 4 - 1 - 1 = 2 と半減してしまうわけですね。

命中、回避の要素がないために戦闘は他のXCOM系ゲームと比べて大分予測しやすくなっています。これは好き嫌いあると思いますが、それにより後述のアビリティや装備を活かした創意工夫が大いに物を言う戦闘においては非常にうまく働いている点だと思います。ただし完全にランダム性がないわけではありません。クリティカルや状態異常、自動アビリティの発動については確率が絡んできます。

もう1つの特徴がスタンです。大半の敵はスタン値というのを持っていて、攻撃を受けるごとに基本的に1ずつ減少します。そしてスタン値が0になるとその敵は体勢を崩すわけですが、その状態で攻撃すると確定でクリティカルヒットとなります。クリティカルヒットは射撃攻撃では単にダメージが増えるだけですが、近接攻撃では相手の特定の部位を狙って攻撃して能力値の低下、アビリティ使用不能といったペナルティを与えることができます。そして最大のペナルティは処刑、これは敵を即死させるものですがそれだけでなく、部隊全員の行動回数が1回復します。処刑した当人だけでなく全員がまた行動できるようになるためこの効果は非常に大きく、戦術上極めて重要な要素と言えます。

装備アイテム

戦闘が終わると部隊は帰還し、報酬が受け取れます。この報酬はミッションでの功績に対し本部から報酬が与えられるという形になっています。
予め本部で新隊員、武器、特殊装備といったアイテムをアンロック、アップグレードしておくとミッション開始前に報酬の候補が追加されます。

戦闘終了後に補給ポイント(功績)を使って欲しい報酬を買っていくことができます。この補給ポイントは報酬タイプのアンロック、アップグレードにも使われるため、候補がいまいちであれば何も買わずに貯めておくことも必要です。また各ミッションは成功時に一定の補給ポイントがもらえますが、それに加え「被ダメージを20以下に抑える」「3人で勝利する」といったサブ目標を追加することができ、成功するともらえる補給ポイントが増えます。ミッションの種類は少ないのですが「欲しい報酬があるか」「補給ポイントを稼げそうか」といった観点も加えるとどれをやってどれをスルーするかというのはなかなか悩ましい選択となってきます。

装備にはベースアイテムに加えてTier 1~3のマスタークラフトアイテムと呼ばれる、いくつかのボーナスを持った装備が用意されています。
これはトレハンゲーのようなランダム生成ではなく、予め用意されたものがランダムに報酬の候補に並びます。

この装備、特にTier 2以上になるとかなり強く、後述のアビリティとあわせて工夫しだいで凄まじい戦果を叩き出すことが可能になります。
一例としては

  • 行動力 +1

  • 全弾薬を消費して乱射ができる機関銃に、自動リロード機能が付く

  • 武器の射程 +40%

  • 手榴弾の効果半径 2倍

XCOM系ゲームにありがちなダメージ+2とか命中率+10%とは桁違いの性能を持っています。

一部の装備はアップグレードが可能で、それにより既存のボーナスの効果を高めたり、新たなボーナスを追加することができます。初回プレイだとわかりづらいのですがこのアップグレードには疫病の種というのが必要です。ストーリーをある程度進めると戦闘で全5種類の種を拾えるようになり、この種を消費して装備に用意されたアップグレード候補を購入できます。

アビリティ

XCOM 2では昇進(レベルアップ)ごとに2つある強化のどちらかを選ぶ程度でしたが、このゲームではクラスごとに固有のアップグレードツリーを持ち、1レベルごとに2得られるポイントを割り振ってアビリティの獲得、強化が可能です。これがまた…強いのです。こちらも一例としては

  • 最大で15マス、テレポート移動しながら範囲内の敵に次々斬りつける

  • 最初は1個しか投げられない手榴弾が最終的に3種9個まで増える

  • 射程無限、遮蔽物無視の単体攻撃

XCOM 2では拡張版で新たに選ばれし者という強敵が追加されましたが、このゲームは終盤では自軍のメンバー全員がその選ばれし者以上の戦闘力を持つようになります。敵も一部厄介な能力を持つ強敵が登場するものの基本的には数字が大きくなっていくだけなので、4、5人くらいの敵集団と接敵しても1ターンで全滅させた、それどころかこちらは1人しか行動してないといったことも起きてきます。

それじゃただのヌルゲーじゃないかと思われるかもしれません。実際に一番難しいのは序盤だと思います。しかし前述の一部厄介な能力を持つ強敵はきちんと手強いですし、ストーリーを進めるために倒さなければならない中ボス、ラスボスはこれまた桁外れの能力を持っており、4人全員の能力と装備をフル活用しなければ勝つことはできないでしょう。

ただまあ、そうした強敵を除いた一般の敵との戦いでは序盤は手強く中盤は楽しく終盤はヌルい、そうしたバランスの変化はあります。

またアビリティの多くは使用のために意志力(WP)を消費するわけですが、それ以外に1WPを使用するごとにワープサージ(歪みの力の高まり)というメーターが+5されていきます。これはアビリティを使わなくても1ターンごとに15~40くらい増えていき、100まで溜まると敵の増援が現れたり、既に登場している敵にHP増加、強力なアビリティが追加といった強化、はたまた戦場にダメージゾーンを作り出したりといった災害が発生します。

艦の強化、研究

おなじみ研究と施設の強化の要素も用意されています。
プレイヤーの乗艦である巡洋艦のベイルフル・エディクトは開始時点で1つの戦役を戦い抜いており満身創痍の状態にあります。そこでサーヴィターと呼ばれる、要は下っ端エンジニアと時間を費やして失われた機能を回復させたり強化したりしなければなりません。

研究はストーリーを進めるのに必要なもの以外は主に策略と呼ばれるグローバルアビリティのアンロックのために行います。これはミッションに最大4つまで持ち込むことができ、いつでも使用可能です。各1回ずつしか使えないものの、部隊全員を別の場所にテレポートさせたり、全戦死者を復活させたりと大分無茶な効果が揃っています。

正直、これらの要素は他のXCOM系ゲームと比べて特に優れているものではありません。おなじみの要素は一応あるよ程度ですね。

キャラカスタマイズ

リブート版の本家XCOMではキャラカスタマイズ要素が充実しており、さらにModによる追加パーツなどもあって隊員の外見を実に様々なものに変えることができました。このゲームでその面はどうかというと、非常に限定的です。原作の設定通りに全員がパワーアーマー、ターミネーターアーマーという重装甲のアーマーを身に着けており脱ぐことはもちろん色を変えることもできません。パーツのデザイン、装飾を変更することぐらいしかできません。また名前は姓+名で構成されるわけですが、姓については予め用意された候補の中からしか選べませんし名も日本語入力ができません。(他アプリで入力してコピー&ペーストもできない)

評価まとめ

良い点

  • 多数あるXCOM系ゲームの中では高い完成度、オリジナリティ

  • 工夫次第で大戦果を上げられる、カタルシス溢れる戦闘システム

  • 充実した装備、アビリティといった強化要素

悪い点

  • 戦闘マップがランダム生成ではなく用意された数も少ない

  • ストレス要因になりうる全体マップでのイベント

  • キャラカスタマイズ要素はごく薄い

おまけ

Warhammer 40,000の設定(人類のみ):

Warhammer 40,000の世界ではかつて人類は宇宙に進出したのはいいものの、そこに待っていたケイオス、エルダー、オルクを始めとする異種族によってひどい目に遭います。そこに現れたのが知力100、武力100、魅力100くらいある、後に皇帝と呼ばれる英雄でした。彼は遺伝子改変によって生み出された超戦士スペースマリーンの兵団を創設、若干トラブルがあったもののその後彼らとともに進軍し、これにはさしものケイオスも抵抗不能、人類の未来は明るい!かに思われました。

しかしケイオス神は皇帝の腹心であるホルスらを誘惑して、スペースマリーンの半ばを寝返らせてしまい、これにより帝国軍は逆に押しまくられ地球まで攻め込まれてしまいます。そこで皇帝は自ら出陣し一騎打ちでホルスを倒しますが、彼自身も深手を負い「黄金の玉座」と呼ばれる生命維持装置の中で眠りについてしまうことになります。

皇帝の休眠後、帝国は彼を神と崇める神権国家のようになってしまい少しでも皇帝を貶めたり、ケイオスの影響が疑われるだけで処刑されます。また内政方面にも大いなる才能を示した皇帝がいなくなったことで技術的にも衰退し、かつて帝国の全盛期に作られたような高性能な装備や兵器は生産不能となってしまいました。今やそれらの遺物は聖なる宝として大事に管理されています。ゲーム内で登場する第一騎士団長のヴァルダン・カイはグレイナイトの中でそれら宝を守る番人的な役割も務めており、そのため彼にお願いして装備を譲ってもらうことになります。

ホルスは倒したものの、寝返ったスペースマリーンたちはケイオスの本拠である恐怖の目と呼ばれる宙域に撤退し、未だ帝国の打倒を目指しています。それに立ち向かうのが残された忠実なスペースマリーン、それより個々の能力は劣るものの数は多い、一般人により構成されたインペリアルガード、その宇宙軍である帝国海軍、ケイオスの汚染を発見し駆逐していく任務に従事する異端審問庁(インクィジション)、機械の神を崇める火星教団などです。

グレイナイト

このゲームで指揮するグレイナイトは皇帝がまだ活動中であった頃にケイオスの脅威に対抗するために密かに設立された、超戦士揃いのスペースマリーンの中のさらに精鋭を集めた部隊です。自軍のメンバーがやたら強くなるのもその背景のためですね。単に物理的な戦闘力に優れているだけでなく、メンバーの全員がサイキック能力を持ち、使うことができます。普通のスペースマリーンがそんなことをしようものなら、ケイオスの影響を受けた異端者として処刑されかねません。

またグレイナイトは単に強大な力を持つだけでなくその存在が徹底的に秘匿されており、同じ職務にあたる同僚である異端審問官ですらグレイナイトの話は聞いたことはあるが実在しているとは思わなかった、と述べたりします。グレイナイトと異端審問庁は、職務的に言うと前者が県警、後者が警視庁みたいな感じですね。捜査の指揮を取るのが異端審問庁で、彼らは帝国海軍、スペースマリーンなど帝国の全ての戦力を活用する権限が与えられていますが、その中で最も強力な戦力がグレイナイトです。

このゲームでは他の帝国軍がほぼ登場しないのですが、その理由も秘密保持のためであり、仮に一般人がグレイナイトとともに戦ったら、たとえ活躍したとしても処刑されます。特に功績が大であればお目溢ししてもらえて精神浄化と呼ばれる手術で済むこともありますが、大抵はその過酷な手術に耐えられず死にます。精鋭で貴重な存在であるスペースマリーンだけはさすがにそうバンバン処刑するわけにもいかないので記憶抹消処分で済みます。

グレイナイトの組織構造

作中で騎士団長、至高騎士団長といった役職名が登場してどういう組織構造なのか原作ファンでなければわかりづらいかもしれません。グレイナイトの組織は基本的にはスペースマリーンと似たものとなっています。
スペースマリーンは1つの戦団は10個の中隊から構成されていますが、グレイナイトでは中隊のかわりに8個の騎士団が存在しており、その長が騎士団長、つまりスペースマリーンで言うところの中隊長です。

そして8人の騎士団長の上に立つ、スペースマリーンで言う所の戦団長に相当するのが至高騎士団長です。現在の至高騎士団長はカルドール・ドライゴという並外れた力を持つ原作の重要人物です。しかし今は混沌の領域をお散歩しているので不在となっています。

DLCの必要性

2022年12月時点で3つのDLCが出ていますが、大雑把に言うとどれも特に急いで買う必要はないと思います。

ゲーム本体の標準版をキャステランチャンピオン版という上位版にアップグレードします。特典としてはサントラ、あとゲーム内で原作上の人物であるグレイナイトの本拠地タイタンの城代ガラン・クロウェというキャラが仲間として加わります。私は持ってないので使い勝手はわかりませんが序盤が多少は楽になるのかなと。あとは原作ファン向けでしょうかね。

上のキャステランチャンピオン版についてくるサントラの単体販売です。音楽の方はまあ普通かなと。同じWarhammer 40KもののBattlefleet Gothicは壮大な音楽ですごく良かったですが、こちらは特にゲームとは別に聴きたくなる程ではありませんでした。

発売後半年経って発売された新DLCで、ゲーム内で使えるクラスとして新たに巨大戦闘メカのドレッドノート、配下のサーヴィターを従えてともに戦うテックマリーンが追加されます。

ただしドレッドノートはこのDLCで追加された新ミッションであるテクノファージミッションでしか使えません。またテックマリーンも12月9日現在、テックマリーンの戦闘力のうち多くを占めるサーヴィターが敵を倒しても本体に経験値が入らず成長させづらいという深刻な問題があるようです。

初の拡張コンテンツということで買う価値があるとしたらこれくらいだと思いますが現状ではまだいくつか問題があって、慌てて買う必要はないでしょう。私は買いましたが…。

日本語のクオリティ

概ね翻訳の質は高く問題ないレベルと言えます。クラス名なども原作の用語もきちんと使われていて原作ファンも満足いく出来だと思います。

問題点としては原作の用語がファン以外の人にもわかりやすいようにとの配慮からか「日本語名(カタカナ名)」みたいな表記になっており、初出だけでなく全ての場面でそうなのでちょっとうるさく感じられる箇所があります。例えば会話シーンがこんな感じです。

騎士団長(グランドマスター) ヴァルダン・カイ:
その判断の是非を決めるのはお前ではない、異端審問官(インクィジター)。それは騎士団長(グランドマスター)である私の務めだ。さて、司令(コマンダー)、君の考えを聞かせてもらおう。<歪み>(ワープ)の増大に関する異端審問官(インクィジター) ヴァキールの推測を妥当なものと思うか?

とまあこんな感じです…。

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