yumiko

詩を書いたり読んだり。感じたり、考えたり。 詩集感想、書評、エッセイなどを中心に。

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最近の記事

『軸足をずらす』詩集 見返し

    • 詩集『軸足をずらす』和田まさ子 感想

       前作の『かつて孤独だったかは知らない』(2016)では、移動する身体が呼び込んだ感情や体感と、深い知性に裏打ちされた思索とが接点を求め、時に共鳴し、時に軋みあいながら、和田独自の一致点を求めてうごめいているように思われた。  2018年7月に刊行された『軸足をずらす』では、精神が一歩先に出て、一致しようとする身体をむしろ後ろへ、後ろへと脱ぎ捨てて行こうとしているようにみえる。それにしても、軸足をずらす、とは、ユニークな題名である。軸足を、どこから、いずこへずらすのか。ずらす

      • 『軸足をずらす』

        • タケイ・リエ『ルーネベリと雪』(七月堂)書評~雪原から芽吹く緑

          第一印象が忘れられない・・・そんな稀有な出会いに恵まれることがある。はじめてタケイの詩作品に触れたのは、2015年、『詩と思想』の詩誌評を担当している時だった。『どぅるかまら』十七号、タケイ・リエの「遠い国」から〈ひとのたましいはわたしたちの肩に乗って移動することも書き留めておきたい〉〈生きるために死んだふりをしていた日々を噛んでのみこむと腑に落ちてきた〉を引用しつつ、「一行のみで自立しそうな、三十字前後の息の長いフレーズが、ゆるやかに続く。自由律短歌の連作と、行わけ詩との中

        『軸足をずらす』詩集 見返し

          「女性詩」成立の過程と周辺(〈私〉の物語をこそ――女性が女性の詩を読むということ)

          (『詩と思想』2016年8月号寄稿エッセイに加筆修正 約9,000字)  「男女雇用機会均等法」の前段となる「勤労婦人福祉法」が制定されたのは、1972年。それから約半世紀後の2016年4月、今なお続く格差を是正するため、「女性活躍推進法」が施行された。保育所不足や介護離職など女性を巡る課題は山積しているが、戦後日本が作り上げた利益追求型社会のひずみに苦しんでいる男性も多い(註1)。男女ともに既成の役割にとらわれない多様性を認め合う社会の早期実現を切に願う。 〝現代詩″の世

          「女性詩」成立の過程と周辺(〈私〉の物語をこそ――女性が女性の詩を読むということ)

          及川俊哉『えみしのくにがたり』を読む~弱さとは人をして祈りに導く使ひなり

          第25回 詩と思想新人賞 受賞詩集『えみしのくにがたり』(詩と思想新人賞叢書12 土曜美術社出版販売 刊)書評、詩人論(約8800字) 1.水蛭子とは、何者か 2017年夏、私は『詩と思想』の編集委員として詩と思想新人賞の一次選考に参加した。その際、文字通り“度肝を抜かれ”たのが、及川俊哉の「水蛭子(ひるこ)の神に戦を防ぐ為に戻り出でますことを請ひ願ふ詞」だった。内容にも一驚した。イザナギ、イザナミの愛児であるにも関わらず、神として奉られることのなかった「水蛭子」を大神と崇

          及川俊哉『えみしのくにがたり』を読む~弱さとは人をして祈りに導く使ひなり