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誰も整理してこなかったポエトリー史【ふろくnote】③ 70年代 ブラック・アーツ詩はラップのルーツ!

FM87.6Mhz 渋谷のラジオ「MIDNIGHT POETS 〜誰も整理してこなかったポエトリー史〜」は、その名のとおりポエトリーリーディングの知られざる歴史を語る特別番組です。

FM87.6Mhz 渋谷のラジオ 2023年11月11日(土)〜12月30日(土)
毎週土曜日24:00〜24:55
「MIDNIGHT POETS 〜誰も整理してこなかったポエトリー史〜」
【出演】いとうせいこう、村田活彦、ikoma

第2回は70年代ニューヨークを中心として盛り上がった「ブラック・アーツ・ムーブメント」についてお話しました。アーカイブはこちら!
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公民権運動からブラック・パワーへ

キング牧師の名前をご存知の方は多いでしょう。BLM(ブラック・ライブズ・マター)運動の源流ともいうべき、1960年代アメリカの公民権運動。人種差別撤廃を求めてアメリカ全土に広がったこの運動の中心的存在がキング牧師、マーチン・ルーサー・キングJrです。

公民権運動のピークといえるのが1963年8月28日のワシントン大行進。20万人以上が参加し、その中にはボブ・ディランもいました。このときリンカーン記念堂でキング牧師が行ったのが「I have a dream」(私には夢がある)という歴史に残る名演説です。繰り返される”I have a dream”というフレーズが強く胸に残ります。

1964年には公民権法が制定され、キング牧師はノーベル平和賞を受賞。しかし1965年、同じく黒人解放運動の指導者だったマルコムXが暗殺され、68年にはキング牧師も暗殺されてしまいます。これらの悲劇を経て、黒人自らの力によって人種差別を打破しようというスローガン「ブラックパワー」が生まれました。

アミリ・バラカとラスト・ポエッツ

そんなブラック・パワーの時代に芸術運動「ブラック・アーツ・ムーブメント」を立ち上げたのがアミリ・バラカです。彼はまずビート詩人として、デビューします。ビートニクの中心地・NYのグリニッジ・ヴィレッジで活躍し、雑誌編集者としてアレン・ギンズバーグやジャック・ケルアック作品の出版もしました。1963年にはリロイ・ジョーンズ名義で音楽評論『ブルース・ピープル』を発表。アフリカ系アメリカ人が書いたブラックミュージックの初の主要な歴史書として評価が高く、日本版も刊行されています。また翌年には戯曲『ダッチマン』でオビー賞を受賞しました。

バラカは詩を朗読するときに叫んだり、足を踏み鳴らしたり、発音のリズムをずらしたりしました。このパフォーマンが「ラスト・ポエッツ」に影響を与えたと言われています。そして「ラスト・ポエッツ」は、ラップの元祖とされるアフリカン・アメリカンとプエルトリコ系の混合グループです。

ギル・スコット=ヘロンの革命

この時代のもうひとつのアイコンが「黒いディラン」と呼ばれたギル・スコット=ヘロン。彼は少年時代を、グリニッチ・ヴィレッジに近いチェルシーのプエルトリコ系コミュニティーで過ごし、ビートニクの洗礼を受けていました。

1970年、学生だった彼は初めての小説『禿げ鷹』と詩集『Small Talk At 125th And Lenox』を刊行。さらにフライング・ダッチマンという音楽レーベルから、同名の1stアルバムを発表します。これは、詩集の作品をジャズ・ファンクに合わせて本人が朗読するというもの。有名な『Revolution Will Not Be Televised』(「革命はテレビには映らない」)のオリジナルバージョンも収録されています。

1971年にはより音楽色を強めた2ndアルバム「ピーセス・オブ・ア・マン」を発表。『Revolution Will Not Be Televised』のバンドバージョンが収録されました。まごうことなき名曲です。

やがて彼もヒップホップのルーツのひとりに数えられるようになります。2011年に62歳で亡くなるのですが、その前年には16年ぶりのアルバム『I'm New Here』を発表していて、最後までカッコ良さを見せつけてくれました。

番組では『Revolution Will Not Be Televised』をはじめポエトリーリーディングの名作、名曲も聴けます。ぜひアーカイブでチェックしてください。
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