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SF(すこし・ふしぎ)なお話が好きな方へ。お菓子な物語詩、あります。

窓際の温度は冷気で少し下がる
暖かい部屋と外気に挟まれ、
外が見えないほど窓ガラスは曇る

ここは、おせんべい工場の2階
ふきよせを作る部署
通称「ひなの巣」

「ひなの巣 冬」より

あられ工場さんの詩集『ひなの巣』は、米菓工場にある「ふきよせ」専門部署が舞台の物語詩連作。色とりどりのお菓子の可愛らしさと、登場人物たちのちょっと不思議な日常が印象的な一冊です。

著者本人が装幀を手がけた新装版が、やしの実ブックスより発売中。表紙は包装紙のイメージ、トビラを開けると内箱、さらにページをめくればふきよせの缶…と、お菓子をつまむときのささやかなワクワク感をデザインで表現しています。

その『ひなの巣 新装版』に、詩人・ヤリタミサコさんから素敵なコメントをいただきました! 嬉しすぎる…。承諾をいただいて全文紹介しますね。

詩集『ひなの巣』を拝読しました。
装丁も遊びに富んでいて、奥付も食品成分表の形式で楽しいです。
「台風の朝に」という詩では、「ベルリン 天使の詩」という映画が背景に流れていますね。ブルーノ・ガンツの微笑みを思い出します。。。

また、この詩集のそれぞれの詩は、オープン(開かれて)に終わっているところが素晴らしい個性です。一般的には、お話しの終わり、ということで、クローズで閉じる傾向で終わらせる詩が多いのですが、あられ工場さんの詩の終わり方は、明るくオープンです。
たとえば「今日も仕事が始まる」(ひなの巣とうさぎ)、「飲みたいな」(ソーダの気泡と金平糖)、「今日も切る」(ヤマさんのこと)、「スープを飲もう」(川へ行く)、「突然答えが分かったりするもんだよ」(新しい一年)など。

私は長いこと詩人をしていますが、全編、未来へつながってオープンに終わる詩集はめったに見ません。感心しました!おそらく、あられ工場さん自身の心の構えが開かれているからだと思います。

…著者本人も、担当編集も気づかなかったところを、鮮やかに掬い取って言葉にしていただきました。ヤリタさん、本当にありがとうございます。

あらためまして、あられ工場『ひなの巣 新装版』好評発売中です。


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