16頁『「THURSDAY'S YOUTH」という私にとって奇跡のようなバンドについて少し語らせていただいてもよろしいか【彼らの決して押し付けがましくない共感の雨に私たちはみんな救われてる】』




いつか自分は死ぬと思っていた
遠い将来とかではなく
何年後とかに

根拠がなかったけれど
理由がなかったからずっと苦しみ続けた
嘘みたいな笑顔を張り付けて
「苦しくないです」という顔をして外に出て
メッセージはネガティブを嫌って全てポジティブで
窒息しそうな心のままで何かと戦うように進み続けた

戦えない時は体を部屋に投げ出して
何もやる気が出なくて死ぬのをただ待ち望むような深夜みたいな空気で

これはいったい何なんだろう
私の人生は生きる意味はどこに向かうのか分からなくて

それでも聞こえたあなたの声で私は目覚めたみたい
見えなかったのは私の心だったのかそれとも未来だったのか

言葉が明かりのように次々と暗い場所を照らして消えた
雪とか花びらとか蛍のように
優しくて力強くて儚くて消えてしまうから何度も泣きながら聴いた

これだと思った

全ての理由がここにあった

どんなに探しても見つからなかったそれが今の私をすべて照らして
今まで生きてきたすべてを優しく「それでいいよ」て言ってくれた

生きる理由にはならなかったかもしれない
でも死ななくて済む理由にはなった
何度も聞きながら勝手に救われていたから

言葉がこんなに心に沁みこむなんて知らなかった
雨みたいに心の砂漠の中で降りしきって
一輪の花を咲かせたようだ

生きるって
そういうことなんだ
まだきっとどこかで私の戦いは終わっていない
でも「きっと大丈夫」

私は私を救う術を あなたの歌からもらったから



20歳で自分は死ぬのだと思っていた
なんの根拠もなく

何故この命が終わらず続いていくのかが不思議でたまらず
顔の上にはにっこり微笑みを貼り付け(心で絶望していた)

それはどう考えても
「不謹慎」であり
「親不孝」であり
「タブー」だった

どこにもそれを思うだけの動機が見つからない
なのに私はいつも心のどこかで
今すぐにこの命の糸がぷつりと途切れ
見えなくなるのを待っていた

24歳の春は予定外の人生の延長だった
二度目の専門学校で何を取り戻せるというのだろう

心になだれ込んでくる「死」への期待と
「生きること」への絶望に
成す術もなくひとり薄暗い部屋で溺れかけていた

死ねなかった私はこの世界と戦わなければならなかった

細いオレンジの光が薄く入る西向きの部屋で
呼吸をすることも忘れた
わたしを作りあげる全細胞たちが
彼らから紡ぎ出される言葉に集中していたから

生と死のプール底に沈んでいた私の心を浮上させるでもなく
追い打ちをかけるでもなく(静かに)
横にぴたりと寄り添いながら(まあるく透明な)
何かに包んでくれた(言葉のほとんどは驚くほどに後ろ向きで)

止まらない涙は生きることへの絶望でも死への強烈な憧れでもなく
心の中に溜まった名前も持たない感情が溶けて溢れ出すような涙だった

あなたが隣で歌ってくれるのなら
心の代弁者として歌を作り続けてくれるのなら
また心の底の海に沈んでしまっても「大丈夫かもしれない」

あの瞬間がきっと私の二度目の人生の始まりだった

万人が心地よい訳が無い
心の底で身動きが取れなくなってしまった私に
多すぎず少なすぎず甘えさせもせずでも邪険にもしない私雨に
そっと寄り添う言葉にいつだって救われている

本当は救われたいだなんて思ってなくって
救ってほしいとも思っていなくって
手を差し出してほしいとも思っていないし
支えて欲しいとも思っていない

あなたたちはただただ好きな歌を好きなように
好きなだけ伸び伸びと歌ってくれたらいい

私達はそんな歌で勝手に救われる
あなたたちの決して押し付けがましくない共感の雨によって



ここから先は

0字

¥ 100

詩人です。出版もしております。マガジンで書籍のご案内もいたしております。頂いたサポートは出版の費用にさせていただきます。