あらまし「ホールケーキを切り分けて」日記・随筆集

買うしかないって思った。
タンブラーで知って、ずいぶんとひりひりとした言葉を書く人だと思った。
その人が作品を出すと知って、迷わずに買う。
ここまで言葉と向き合った人が、いったいどんな景色を見るのだろう
見届けるというか、見に行こうと思った。

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それは7年前の記録
なんだかどきどきしてみてしまう

茨木のり子みたいだ。どうかあなたは死なないでねって思う

あらまし氏はよく考えている。そしてよく映画を見る。
前半はまるで映画のレビューを見ているみたいだ。
良くも悪くも(なのかもしれない)考えて、何かを掘っている。

湧き水なのか、なにか源泉を探すように

街を歩く主人公と思われる人をカメラが追っていくとして、この人だと思いきや、脇道へといく人をカメラが追って、「あれ、その人なの?」というような、表立ってはないかもしれないけれど、ひっそりとした路傍にカメラが焦点を絞っていくような、そういう感じ。でも、そういうのを、私は見たいんだ。

言葉にかける人。だからなんだか勝手に親近感を抱いてしまう。

たまに見かける、磨き抜かれた言葉を持っている人

きっとひと昔前の自分が読んでいたら、付箋を貼りまくって、ノートに書き写していたと思う。

嗚呼、なんて羨ましい。
でも好きなものにひたむきに手を伸ばす姿は美しい。

あなたには幸福でいてほしい。
強く、気高く、峰の頂に咲く花のようで。

あらまし氏は、まるで戦っている。抜き身のままでもろ刃の姿で

自分に向けられた言葉がとても厳しくて、言葉が、まるで鎖みたいだと思う。質感と確かな重さを伴って、心に絡みつく。そして体は重苦しくなる。

文章から垣間見える日常に人の繋がりを見るとほっとする。

嗚呼、これが命綱なんだとはっとする。
そして食べ物もよく出てくる。同時になんだか安心する。

だめそうになっている言葉を見ると、「あきらめないで」とエールを送りたくなる。拳を握って、祈るような気持ちで、頁をめくる。

でもこの本があって、頁の途中ということが、安心させてくれる。
よかった。ここはまだ終わりじゃない。

言葉が短歌的でリズムが心地いい。ニルヴァーナみたいな危うい浮遊感

「光が好き。きれいだから」

―――――――

――分かるよ。て声をかけたくなった。


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