4 34 おまけトーク(思い通りにならないことを楽しむ)



彼女は心の中で言葉を並べては
書き出して眺めて
書き直すことを繰り返していた

有名になりたいわけでも
売れたいわけでもなかった
彼女にとって詩を描くことは生きることと同じだった

彼女は訪れる者を拒まず
去る者を呼び止めることもせずに
多くを語らず 声を聴き 言葉を紡ぐのだった

痛みと喜び
過去の苦しみと未来への期待に
耳を澄ませて

陽と風を静かに受け入れ 囁く木のように
舞い散る花片を愛でるように
言の葉を集めて 花束にするように

彼女の胸の内に瞬いた
光景と色彩が言葉となって胸に届いた時
誰もがはっとする

昔置き忘れたかけがえのない想いに触れて
思い描いたはずの願いを垣間見て
彼女の言葉を胸にしまう

空から零れる羽根のように
空から射し込む月のように

ささやかでしかない光が眩くも温かく
許しのように胸に優しい余韻を残していく

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