3頁 「残すべきは愛し愛された思い出」




愛されたことを どれだけ信じて
胸に抱えて 翼に変えて
飛んでいけるだろう

誰かのために どこまで遠くへ行けるだろう

最初から 誰かのためを 思ったわけじゃない

気づいたら 私のためが
誰かのためにも なっていた

こんな私が
こんな私でも

誰かに差し出せるものがある

それもやっぱり 誰かが教えてくれたことだった

色んな思いがあるけれど
どれか一つを持っていくとしたら

「ありがとう」
それだけでいい

私にもあるもの
私にしかないもの

それを信じてさえいればいい

――――――
(another)

言葉の力を 信じることは

希望だと 思った

眩い絶望 それも、 悪くない。

――――――



まだ薄ら暗い明け方
潜り込んだ布団は余白は信じられないくらいに狭かった
耐えきれなくなってぎゅっと握ったシーツの裾

「さっきまで会っていた」実感
リアルな全部が駆け巡って光になってショート
一瞬にして空気に溶けてなくなる

死ぬほど好きな人がいる
仕事の時間以外の生活が回らなくなるほどに
約束でも確実でもない関係だから「ない」のと一緒はなんて心細い
人生と天秤にかけるほどの人
将来を約束する以外に、生きる理由が見当たらない

わかりやすい幸せは迷わなくて済むように対処療法
「結婚すれば変われるよ」でもそれは私を生きやすくしてくれますか?

お金がなければ自由さえ手に入れられない
そうまでして生きて
やりたいことも特になかった
けれども自由までもを奪われるわけにはいかない
お金はただの引換券


一生一人で生きて行くの?
寂しくない?
どうやって食べていくの?


生命保険は本当に保険でしかない
月数万円の「精神安定剤」けれどもどれだけのもの
「死の自由」なんていくらあっても買えなかった

幸せはなんなの
何がしたくて生きてるの
どこに向かうの


けれども唯一の生きる意味は、その人しか、いない

わかっているけどどうしようもない
この世界に存在する希望はあなただけ


生きて行くしかない
引越しは新しい希望をくれるし
手紙は時間を越えて当時へと心を飛ばす

家を往復するだけの生活に
唯一の他人が現れた瞬間

「私の何が好きなのですか」―
―「あなたの言葉が好きだ」


あなたのために書こう
世界の全てのために
その世界はもう訪れない予感があった

言葉にしたらすべてが終わってしまう
これはそんな世界だった

「私はあなたの記憶に残りたい」
約束された永遠はこんな場所にあったのだ

そのときもらった言葉が
記憶があるだけで
救われる
ほら、この手紙にも

あなたの言葉はきっと人を救う
だから生きていかなくてはいけない
私の唯一の“生きる意味”が「書いて生きろ」と言っている
それは、なんて眩い絶望だろう

もしかしたら誰かと結婚するかもしれない。
死ぬまで一人かもしれない
「そんなのはわからない/どちらでもいい」

愛し愛された記憶は永遠なのだ

一緒に連れ添う人がいなくても
その思い出があれば生きていけそう
目を閉じて、瞼の裏で感じる万能感
もらった言葉も体温も生きる力も
脳内で繰り返し再生される永遠だ

そして私の中で自由の引換券は姿を変えた
愛し愛された思い出が両手に溢れるほどに残っている


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