岩倉しおり「さよならは青色」
全ての大人になった人たちへ
今はもう失われた(かもしれない)
あの日々の 再録のような
もう戻れない だから残したものが
どうか 永遠になるように
春
桜は泣いている
光の中で
微笑むように
青空に包まれて
シャボン玉のように散りながら
弾けたら あなたの記憶の中で
思い出となって 咲く
夏
圧倒的な光を散りばめた中で
水滴が涼しくて スイカが美味しい
蝉の鳴き声が聞こえる
水の中で光が揺れる
髪についた水滴が 地面に染みを作る
団扇 風鈴 花火と金魚
暑さで光が解けて 夕日が崩れ落ちてくる
リンゴ飴とラムネ
汗と、甘さが解けて 星のような美しさを残す
秋
星を象ったような
銀杏が金色を散らして降り積もる
あの夏の日々が こうして落ちていく
夏の余韻 増していく星の輝き
色づいていく秋は紅に燃えて揺れる
光が柔らかく 雨が冷たく
夕日が静かに 涼しさの中に寂しさを連れてくる
あの日弾けたシャボン玉は空の中に
冬
溶けていったあの日々は 雪になってもう一度
寒さが増して 冷たく美しく
日々は降り積もった雪道のように
しんしんと続く
光は鋭く 色は淡く 雪が白く
すべては美しさの中で佇む
あの日の約束
満点の星空
雪は美しい
桜は儚い
あの日々は すべて 愛しい
零れ落ちたもの
見逃したもの
すべてそのフィルムの中で 永遠となって息づく
あなたの 心の中で
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