小林百合子「山と山小屋」

――丁度、星野道夫氏の「旅をする木」を読んで、
雑誌coyoteを読んでいた頃だった。

この本に出合ったのは。

更に言うと、
安達茉莉子氏の
「日常の中に生まれてくるある瞬間について」
を買ったときについてきた、本紹介の付録に書いているのを目にしたら、
この本が書かれてあった。

あまり興味はなく、「山か、でもちょっと遠いな」
とか、
「なんかわざわざ行くの面倒くさいに」
くらいのなんとなくな感じで、
でも「ちょっと気になるから、見るだけ」
と思ったら。

驚いた。
アラスカに見た美しさは、ここにもあったのだ。
そうして思い至る。
アラスカが特別なのではなくて、
アラスカの大自然が、命のルーツなのだとしたら。

日本にいたって、
山頂で目にした朝陽や星空や
温かな食堂や美味しいごはんに
その片鱗を見たって、全然、おかしくないわけだ。

Coyoteや星野道夫の自然が、
森の中に分け入って静かに息をして
慎重に進んでいくようなものだとしたら、

ここにあるのは「よくきたね」て笑いかけて
「まぁ入っていきなよ」て手招きする
自然の中にそっと佇む、人の営みだった。

自然っていいな
人間っていいな

――なぜか、涙ぐんだ

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