三角みづ紀「よいひかり」

誰かがいる という日常が 何て輝いていることだろう
当たり前が 日常が こんなにも危ういというのに その感謝と 尊さと 祈りと

どれだけ言葉にしても 埋められない
悲しみと 喜びと

何気ないその日常と 変化と 不変と その可能性と 普遍と

どこかではない どこにでもある風景
ここにある そこにしかない景色

日常というだけで ありとあらゆるものに囲まれている
溢れるほどの事実に埋もれて 息をしている

その中で手にした たったひとつの物で たった一つの出来事で
その出会いで こんなにも 揺れてしまう

胸の高鳴り 聞こえない雲の呼吸
うるさいくらいの鼓動 恐いくらいの静けさ

どうしよう
どうすればいいだろう
何をしたいだろう

針が 示すような 歩みと 行き先だけが 月明りのように 揺れている

それしかない
それだけでいい
それでもいい

こんな 日常という 時間を塗り重ねていく

昨日と今日と 明日を 波のように 行ったり来たりして

その物語の 続きのように 繰り返すように
変わったものが 目に留まるのか 手から溢れるのか

テーブルに置いた 何気ないものが そっと 語りかけている

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