31頁「あのラストシーンはただのハッピーエンドじゃない」





15の時に出会った「人は孤独だ」て言葉を覚えている
あの日全部夕陽と一緒に溶けてなくなってしまいたかった

それは自分らしく生き直すなんてカッコいいものじゃなかった
自分らしく生きるために戦い抜くような孤独だった
いい子であっても幸せになんてなれない
私は私を生きて行くことはできない
そんなこと 最初から分かっていたはずなのに

何も要らない
何を犠牲にしても

それは強さではなくて未来を損なうだけの選択だって
どうしてわからなかったのだろう

未来だけじゃない
そのために選んできたすべては私自身のためだったはず
それをすべて捨てるなんて 私そのものを捨てることと同じだった

人は孤独だ
だから私は私のために未来を探す
私の答えは私しか歩いていけない

この足では遅すぎる
この手では遠すぎる
それでも夕陽に祈りながら
未来を笑っていられるように

この手でないと意味がない
一緒でないと幸せなんて
分かち合った世界はなんて美しい
その美しさのために人は恋をする

その夕陽は 終わりゆく時ではなくて
何か始まりを告げる 希望だったのかもしれない
世界はきっと 誰かが思っているよりもずっと そんなふうにできている


人は孤独だなんて知りたくなかった全部夕陽と一緒に溶けてなくなって

「僕が15歳じゃなければ」/「聖ちゃんがいれば、他に何もいらない」
「あなたが15歳だから」/「教師をやめても、黒岩くんの隣にいたい」

頑張る糧でなく夢を未来を可能性を互いのために捨て捨てさせるということ
自分らしく在ろうとする二人が相手のために自分らしさを失うそれは危うい

自分らしく生きることは同時に孤独であることを引き受けるということ

迎えに行くから待ってて/3年越しの祈り/ずっと笑っていられますように

人を好きになること
どうすることもできない自分と相手の孤独を引き受け幸せを願うということ
ずっと笑っていられるよう祈り続けること
自分の足で立ち違う場所から眺める夕日のように

夕陽をおさめるシャッター音が2つに重なった瞬間2人は世界を分かち合う

決して替えのきかない幸せを全力で掴み取る方が世界は何倍も美しくなる
ボロボロに打ち砕かれてもまだなおそんな風に期待することをやめられない
(台詞のない1分間のラストシーン)

全てを引き受け自分の足で立ち願う誰かの幸せへの期待は 捨てなくていい「誰かを好きになることは、素晴らしいことなんだって」それは優しい希望

夕陽に溶けてなくなりたかったのは願いが叶わないと知ってしまったから
その瞳で受け止めた夕陽は世界を美しくしていたことにやっと気づいた
見たことないほど幸せそうに笑う自分らしく生きるために孤独を引き受けて

幸せって そういうことなんだ
だから 人を好きになるって 素晴らしいんだ
どんな恋だって だから そうなんだ



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