15頁「SNSで死なないで」
Ⅰ
みんな「誰か」になりたいだけで
自分の身の回り以外の世界を覗こうとする
フォロワーが山ほどいたり
その力でお金を稼いでいたり
会社という枠組みにとらわれずに自由に仕事をしているように見えて
有名人同士で交流をしたりしている
質問箱をおけばたくさんの質問が来て
それに雑誌のインタビューばりに答えている姿はまるで芸能人
転がっている夢は触れられないから重さが図れなくて
持て余した手で心が空いてどこかへ行こうとしてしまう
世界のどこかで夢が誰かを追い詰めているのかも しれない
みんな「特別」になりがたっているだけで
誰もしてない奇抜なことをしてみんなに夢や勇気を与えたいと思ったりする
誰もがやっている平凡なことは
だれかの為にはならない?
毎日のルーティーンの中には
希望は見つけられない?
大げさなことでしか
感情を震わせる事ができない?
特別ではないかもしれない
満員電車のサラリーマンの背中に
ちゃんと勇気をもらう人だっている
組織の中で懸命に生くこと
超がつくほど当たり前なこと
それはとても尊くて かけがえのないこと
あなたに会いに来てくれる人は
あなたを応援してくれる人は
笑顔を見せてくれる時以外はたいがいどこかで働いている
一発逆転なんてなくてもあなたが
美しいことをそういう人たちは知っている
だから誇り高く生きていこう
フォロワーぜんぜんいなくても
友達ぜんぜんいなくても
町中でだれもあなたのことを知らなくても
いいねが一個もつかなくても
そんなことはどうでもいい
あなた自身の価値は
あなた自身とあなたが大切にしている人たちだけの中で柔らかく
情けたっぷりに愛情加点たっぷりにくだされるべきもの
(ここで言っていることは綺麗事
そういう自分だっていいねの数めちゃくちゃ気になるし
同時期の同業の周りと比べて落ち込みもするし
いいねをたくさんつけてもらう目的でわかりやすいツイートしたりするし
SNSがすべてでないのにうまく操れていない現実に自己嫌悪もする
「明日起きたらインスタのフォロワー10万人になってないかな」て独り言
言いながら寝る夜すらある)
だけど、だけど。だけど、
もしもあなたの世界がSNS中心の世界になっていて
そのなかで居場所がないと感じたり
もっと突飛なことをしなくちゃと焦ったり
注目されないと価値がないんじゃないかと思ったり
心無い言葉に傷ついたりしているのなら
そういうときには都合よく今の綺麗事を思い出してほしい
誰かの言う
「特別になりなさい」
「個性を売りにしなさい」
「誰もやっていないことをしなさい」
…そういう種類の言葉に胸の鼓動が早くなる時
どうか一度「本当にそうかな?」と胸の奥で聞き返して
きっとみんな「特別」になりたいと思っている
でもあなたのたくさんのいいところはそんなことで輝きはしない
毎日会社にちゃんと行けるとか
満員電車を耐え抜いているとか
平凡なツイートをたまにしていることとか
それに別に誰からも反応がなかったこととか
冗談がうまく言えないとか
そういうの全部SNSのネタになんかならなくていい
ただただ本当にそれだけでいいことなんだ
今日のその目に映る世界は今日のあなたしか見ていない世界
それだけでなんて綺麗なんだろう
そういうの少しずつ
一見地味な素敵さを重ねて
世界はちゃんと回っている
出会って
向き合って
笑い合うことのできる瞬間が
いちばん強く美しい
目の前のあなたの笑顔が
分かり合えた瞬間の時が止まるような静けさが
きっといつだって
何万RTとも何万いいねとも比べ物にならない価値を持っていると知っている
言葉もSNSもあなたの背中と足跡を追っていくだけでしかないんだ
Ⅱ
みんな「誰か」になりたいだけで
自分の身の回り以外の世界を覗こうとする
誰かがついてきているのか それとも背中を追いかけているだけなのか
実のところ 振り回されているのかもしれない
巷で語られている夢はもうその辺に転がっているらしい
でも持ったことがないから重さなんて分からない
どれくらいの距離があるのかも
持て余した手でなにかを探し求めて
空いた心がどこかへ行こうとしてしまう
人知れず夢が迷子になった誰かを追い詰めている
みんな「特別」になりがたっているだけで
誰もしたことのないたった一つになろうとして
誰もがやっていることは 開拓されつくした宝の地図みたいに
見向きもされずに踏まれていく
毎日の繰り返しは退屈の流刑みたいだ 感情はちょっとやそっとじゃ震えないらしい
ほこりを払って 地図を拾おう
毎日の繰り返しの中にもう一度宝を探しに行こう 感情は羅針盤だ
旅に出よう
特別ではないかもしれない背中が 勇気を教えてくれた
超がつくほど当たり前なことが 尊いこともそう
会いに来てくれる人は かけがえのない存在であることも
みんなみんな 平凡な日常が 奇跡みたいに教えてくれたんだ
毎日ちゃんとしていることとか 耐え抜いていることだとか
平凡な言葉しか言えないこととか 冗談がうまく言えなくて誰からも反応がないとか
そんな自分が生き抜いた精一杯の今日その目に映る世界は
今日の自分にしか見ていない世界だった
この世界と胸の鼓動が共鳴して愛してくれと呼んでいる
誰かにならなくても この世界はちゃんと 自分だけの世界だったんだ
誰かにとっての宝の地図は もう自分だけのもの
身体を精一杯使って歩き回った軌跡と羅針盤の行方が示してくれた
自分だけの宝の地図なんだ
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