成宮アイコ「朗読詩集:伝説にならないで ハロー言葉、 あなたがひとりで打ち込んだ文字はわたしたちの目に見えているノー!モア!エモーショナル!」

待ちわびた詩集だ。
たとえばそれは、
 飛行機雲みたいに追いかけている新しいバンドの新譜だったり
流れ星を見て、
 急いで手を伸ばすかのように願いごとをする光の軌跡だったり
500円を握りしめて、
少年誌を買いに行くような衝動で。

そういうものだ。
あんたの言葉をずっと待ってたんだ。て手を挙げて挨拶するような気軽さで
ドキドキしながら、かつての少年のように、わくわくしながら読む。

内容はそういうものじゃないのかもしれないけれど、
この本の中には何か期待してしまう。やってくれそうな何かを待ちわびて
言葉を冒険みたいに読み進む。

世界はちゃんと優しい。これからそのことを証明します。
冒頭からそんな宣誓を感じる。決意とでもいえばいいのか。
そんな世界の中で人はどれほど優しくあれるだろう。
まるで成宮氏の言葉はBUMP OF CHICKENだ。
射貫くような言葉はだからこんなにも優しい。

それは詩
 生き抜いた証

それは軌跡じゃない、過去じゃない。
これから未来を眩く照らす、存在証明の、灯だ。

―――――――――――

世界はちゃんと優しい
これからそのことを証明します。

「死なないで」

誰かに向けた言葉は、でも・・・・
――でも。
明かりを探すようにあなたの言葉を探している。

大丈夫じゃないけど大丈夫。
生きているだけで偉いかな。
射貫くような言葉は海の底まで届けばいい。

「理由」そのたった3文字の中に詰め込んだ言葉は
あなただけの物語。

切実なそれは祈りにも似た。

言葉は鳥だ。
鳥は運ぶのだ。
寂しさを。
どこまでも。――どこまでも。
生きて行くための、約束を。

「消えないで」まるでそれは花
根っこを伸ばして這い進む
強く深く泥臭く地道に心の奥へ
そして 私だけの 花を咲かせる。

一緒の夢を見よう。
寂しさを分かち合うように。
あなたがいなくなって、いた分と同じだけの空洞はあえて埋めない。
ここはあなたの居た場所という、傷。
空みたいな、悲しみ。

真実は言葉の中に生きた重みをかさねて。
苦しみだけの世界なんてすべて嘘。
真実は白すぎて美しすぎて手に負えない。

間違いだらけ。傷だらけの足跡はそれだけで魔法みたいに尊い。
壁も画面も夜も越えて行け。満月のような眩さで。週7で更新される物語。
コインロッカーはSNS。その手帳にとって空は栞。
言葉に殴られる泣き声が聞こえる。あなたの言葉。

スマホはここでは意味がないらしい。救難信号はことごとく聞こえない。
誰に宛てるのでもないSOS。耳を澄ませる人、人知れず涙を流す。
自由に重ねた既読。

世界は変わらない。
感情は要らない。
「いなくならないで。」

暗闇の中で吸い込まれる靴の音。
生きて行くためのnote。作り話。あなただけの物語。
プラカードの代わりの言葉を。
シルエットのアイコンを。

ここにいるんでしょ。
画面をなぞるあなたの言葉をおいかけるように。
それはタイムラインを流れて私の眼に留まる。
もしかしたら、流れ星だったのかもしれない。
「死なないで」「消えないで」「いなくならないで」

世界よ 祈りをどうか聞いてくれ。
「伝説にならないで。」
言葉を綴れる人よ。また会おう。あなたは生きて刻む人。

その軌跡の全てを 私は愛するために。
今日も 詩を綴る。

―――――――成宮アイコ氏に、よせて。


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