「魂の揺り籠」 魂のゆりかご Ⅸ



before


―ここは居心地がいい
空気が穏やかで 心はひどく落ち着いていて
風は涼しくて 光は暖かい

ここはどこだろう…
草原と 生い茂る木々

起きあがって 立ち上がって
何とはなしに歩き出す

ふと――海で泳ぐ自分を思い出した

―そこに後悔はない
揺り籠を飛び出したこと
自分の意志で飛び込んだこと
波に襲われたこと
たったそれだけだった
でも――それだけのことを全て自分で決めたのだから
選び取ったものだから
そこに不安があっても後悔はないから
こうしてこんなにも穏やかでいられる

あれは夢だったのだろう
呟いて大きくあくびをする

寝転がった

木々のささやかな唄と
草のかすかな囁きと
風の旋律が撫で
光の透き通った温もりが眠気を誘う

―また眠ろうか

今度はどんな夢を見ようか…

若葉が横切った
懐かしい薫りを残して

between

流れを整える。流れをもっとシンプルに。
これまでのことが夢だったのかもしれない。という夢
この草原は、前作の自己探索と同じ風景のように感じる。
まさかのリンク。一連の流れの中の最初の頃にいた木々と同じ薫りが懐かしい、という描写。

after

空気が静かで 心は穏やかで
草原が揺れて 風は涼しくて 光は暖かい

身体を起こして 立ち上がって
歩き出して――思い出した…

でも後悔はなかった

揺り籠を飛び出したこと 自分の意志で海に飛び込んだこと
海を泳いで波に襲われて たったそれだけのこと

それだけのことを全て自分で決めたのだから
こんなにも穏やかでいられるのだろう

あれは夢だったのだろう

寝転がったら 草のかすかな囁きと
風の旋律が 光の透き通った温もりが 眠気を誘う

―今度はどんな夢を見よう

若葉が手を振るように
ひらひらと空を舞う

懐かしい薫りがした

詩人です。出版もしております。マガジンで書籍のご案内もいたしております。頂いたサポートは出版の費用にさせていただきます。