谷郁雄「バナナタニ園」

これは、バナナ氏の詩集だと思った

書いている人は、そうではないのだけれど、
まるで手品で入れ替わったかのように、そう思った

たくさんの言葉は要らなくて
それよりも見過ごされてしまった言葉を広い集めたような

語り尽くされたのではない
でも全く斬新なわけでもない

どこにでもありふれていて
でも見落としてしまいそうな
とても大切なことなのだけれど
ふとした時には忘れていたような

この世界に触れた
なんとなくとっておきたい断片を
言葉が橋のように繋いでいく

地面は地続きであるのはあたりまえ
でもそのあたりまえが、
ずっと遠くの海にまで広がっているなんて
どうして分かるだろう

見えるかどうかではなくて
心が最初から知っていたことを
教えてくれるようで

新しいのに、懐かしい

そうして驚きと発見の風景を巡る旅をして、あとがきを読んで

あ、違うんだった、て、思い出す

ばなな氏ではなかったんだ、て

まるで手品の種明かしを見るように

どこからどこまでがそうなのか分からないくらい解け合っていて

その驚きもまた、嬉しい。

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