林口草太朗/森田玲花「最後まで漸近線」


NOTEで好きな森田氏が作品を出していて、しかも読めることを今更知って、パン食い競争の如く食いついた。
 ずっと知っていたけれど、作品としての「言葉」を目にするのは初めてでなぜか緊張してドキドキしながら読みました。
 交互の言葉はまるでデュオ、つまりボーカル二人。まるでバンドサウンド。
つまりカーペンターズ的。ワルツ的な物語且つ詩でもその密度は小説級
林口氏は哀愁のパート
森田氏は可憐のパート
その哀色と逢色が絶妙(どちらもあいいろだから愛しくて悲しい)
すれ違いさえも映画的で美しくて短歌全て名場面

――――――――

決して交わらない放物線同士の関係性のような

交わらないことは最初から分かっていた
その定位置とも呼べる関係が続くような気がしていた
気がしていただけで――人というものは、変わる。

別れが最初から決まっていたのなら
始めたように、終わるのだろう

狼狽えたり傷ついたり揺れて浮き沈みする心を置き去りにして
――そして、関係性は変わるまるで周回軌道上

それは別れを意味する嫉妬が悲しいあなたもまた恋の犠牲者

いつの間にか本心を掌に乗せて差し出すことに臆病になっていた
それは大人になったからなのだろうか、それとも。

冗談と本音、揺れる天秤、猫と酒

背中を押したい、未練はない。この手で切ったから。
胸どこかで押しつぶされるような切なさもきっと笑える。

どこか曖昧煮え切らない飲み干しても終わらない
日常はそんなものだったか
喜びは悲しみと等価交換寂しさが代償

割り切る術はもう大人だから知っている
切ったのは心のどこだったか変わり続けるそれは風のように

歩き出したら明日はもう今日とは別物それぞれに別れようとしている
何か始まる予感

寂しさと幸せは紙一重私とあなたの背中合わせで
いつもと違う景色はそうかあれは思い出になりつつある現在進行か
そっと囁くような祈る幸せを栞のように

寂しさは一人に戻ったからもう今までの世界とは感じ方が違う

曖昧な言葉は約束にさえもならない不安でしかない
泣きたいもう泣いている涙は確かな言葉でしか止められない

吹き抜ける風は未来に揺れるはっきりしない柳がもどかしい

最初から分かっていたこと
約束された未来が目の前に来ただけでこんなに心が痛い

それは乗り合わせた電車のようなもう降りる駅さぁ踏み出して
見送るように背中を押すようにホームに降りたら幸せに向かって

――――――「「最後まで漸近線」によせて


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