曽野綾子「この悲しみの世に」

それはなりゆきと偶然が連れてきた
運命のような 必然だったのかもしれない

何の覚悟もなく 委ねて
それがどんな意味を持つかなんて

その時の私に 分かるわけなど なくて

後戻りが出来なくなってから
私は初めて 自分の意思で 少しだけ 歩く

まるで目覚めたように――夢から

覚悟を持てた分だけ ましだったかもしれない
そうやって裏切りに理由をつけた

責められるのでもなく
罰せられるのでもなく

最初から 許されていた
それをあの人は 愛と呼んだ

その愛のために 私は自分の意思で動いた分だけ苦しむ

痛みの分だけ 私は優しさを祈る

――この悲しみの世に

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