千原こはぎ 「これはただの」


――恋って 苦しんだって 思った

本質的に

だから 思い出になった時 愛しいんだって 思った

雪のように解けそうで 蛍のように消えそうで

どうしよう
この想いを どうすればいいんだろう
持て余すように 頁を 行ったり来たり してしまう

――好きすぎて食べたくなる
好きを通り越したら ずっと傍にいたくなって
それでも足りなくなったら 愛を超えて
一つになりたくなってしまうのかもしれなくて

だから 食べたくなるのかもしれない
本能的な 寂しさのように

勝手に溢れてしまう 愛情のように
知らずに落ちてしまう 恋のように

死んでしまいそうなくらいに
苦しくて 愛しくて

手を繋いでもその隔たりを埋められなくて
それが堪らなく悲しくて
泣くように 微笑んでしまう

温かくて 眩しくて 泣きそうなくらいに
笑ってしまう

だから

幸福と絶望は なんだか似ているのかもしれないと 思った
どちらも男の肌のように熱くて
女の指先のように冷たくて
ぎゅっと 抱きしめて
ずっと 溺れていたくなる


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