8頁 「ハワイに飛んでいった風船」


遠い昔は飛んで行った風船のような空の向こう
手を離したらなんでも遠ざかって 離れて見えなくなって

もう会えなくなるんだって 不思議と思った
大事なものほど手を離してはいけないなんて
幼かった私に分かるわけが なかったのだけれど

とにかく 私は 別れが悲しかったのだ

それはハワイみたいな夢の場所に辿り着いたのかも
そう思ったら 空が不思議と 優しく見えた

手を離したあの遠い日と同じくらいの距離に今の私がいて
夢にもハワイにも風船は届いていないことくらい
大人の私は知っているのだけれど

忘れたくないなって 思った
風船のことを優しく覚えていてくれた人のことも
手を離して悲しくなった手も
寂しくないよって 包んでくれた手も

空っぽの手に 残った温もりも

どうか
遠いあの空と今の空が
どこかで繋がっていますように


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