若松英輔「詩集 愛について」

初期の頃の言葉の純度は薄れてしまったような気がして
それが、なんだか残念な気がして
36なんて言わないで。
30くらいで凝縮したら、もっともっと、純度が高くなって。眩しくなったのに。少し。残念。

でも、それくらいの暗がりと眩さなら、私は深い場所で、見てきたよ。たとえ実際に、体験してはいなくとも。

若松氏はパーソナルな体験が詩に乗ってくるから、きっと、それらに意味はあると思うのだけれど。

でも、言葉の贈り物で見た、眩い言葉を、私は欲している。


―――――――

彼は綴る
愛とは生きる中に含まれていると

真実とは
強さの中で輝くのではなく
弱さの中で煌めくと

その時祈りとは
光に似ている

救いとは
生き抜いた先に光る星のようだ

試練さえも
幸福に変える

永遠とは
過ぎた時の中にあったのだと

哀しみが言葉を生む

時は蘇らない
それはしまわれている

忘れ得ぬ時は
一瞬の 奇跡のようだ

哀しみは 止められない雨のようだ

防ぐ手立てがなく
降り注ぐままに
打たれるしかない

写真の中に真実のあなたはいない

真実の姿は
照らすものをも
美しくする

哀しみは
いつしか優しさに
そして捧げられる

失われたものは
星のような時間差で
感じられる それは残像のようだ

夢の中にしか あなたはいない

愛が その影に
哀しみを投げかけていく

まだ本当の愛に
私の心は届いていないのかもしれない

そして影が濃くなるならば
光は眩くなる

桜が目にした 雪のような

独りの時間の 奥に眠る思い出と共に
私はある時
決して 独りではない

その隔たりをも
愛は超える

幸福に辿り着くまで
流れ星のように

存在する意味を携えて

魔法の箱を
愛が開ける

愛に出会うということは
真実の私に辿り着くことだった

しかし愛した人の不在は
全ての意味をかきけしてしまう

あなたはこの世界そのものだったのだ

時の隔たりを
越えられるように

私は祈り
詩を綴る

言葉は愛によって
命を吹き返す

あなたが私に残ったように
私は誰かに残していけるだろうか

永遠に消えない
光のように

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