19頁「優しさは愚かじゃないって誰か言ってよ」






誰かに何かできるこの手があることが嬉しかった
その手が傷つけられることをきっと大人たちは憂いたのだろう

色んな人に手を差し伸べたら それが私の首を絞めていた(気づいたら)
息苦しさは私を臆病にさせる(そんなはずじゃなかった)

いいように使われて手が傷だらけになっていくような気がして
私は何をやっているのだろうと思った(それを人は愚かだと言った)

そんな人のために私は優しくしたわけじゃない
あの時の「ありがとう」と笑顔が眩しくて本当に本当に祈りのように
私は嬉しかったのだ(私にも誰かのために差し出せる手があること)

私はひっこめた手を見つめて迷っている
でももしも本当に困っている人が目の前にいたらきっと答えは決まっている

最初に見た光の差す方が 私に生き方の一つを示した
それを導にここまで来た私を 誰もが後ろ指を向ける

あなたのための優しさじゃない
きっと私の優しさは花言葉「あなたのことが大切」

私と同じ景色を見るかのように 
差し伸べた手を掴んだ手が同じ体温で
世界を分け合う


小さい頃から褒める時はみんなそう言ったあなたはとても優しい子
誰かが喜んでくれるのが純粋に嬉しかっただけ

「優しいね」の後にみんな言う「あんまり優しいと人はそこにつけ込むよ」

「あの子は優しいから助けてくれるでしょう」と視線と囁き
きっと譲ってくれるよあの子は優しいから
きっと代わりにやってくれるよあの子は優しいから

「優しいね」という言葉に私は怯える陰に潜む思惑に
「騙しやすそうだ」「利用できそうだ」「弱そうだ」

「優しい人故に愚か者」透明なプレートをかけられるのが透けて見える

あなたに利用されるためにあるわけではないのそれが私の優しさ
優しいと言われるがための優しさは嫌いわたしは優しくなんかない

そっとそっと誰にも知られずに跡形が残らない優しさが精一杯

あなたが私を優しいと思うのならそれはあなたが私にとって大切な人だから
優しい人を捨てた代わりに私は少しだけ強くなった

本当はこれが正解か分からない(優しさは愚かじゃないって誰か言ってよ)

大丈夫
優しさは 勇気の証
あなたの伸べたが手が 誰かを救うくらいに 温かいということ

その光のために あなたは傷つかなくていい
優しさに救われた人がいつかきっとあなたに教えてくれるから(正しさを)


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