詩龍

詩を書きます。GofLGBT。

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最近の記事

『グリスを塗ってよ』

僕たちはもう ロボットになっちまった 価値観は大量に流通 検索すれば見つかる理由 魂はID 電気があれば呼吸もできる ICひとつでどこでも行ける 画像も音楽も 昨日の文句も憂鬱も 完全保存のメモリー でも摩擦がひどいんだ グリスを塗ってよ 誰か

    • 路草の智慧

      植物は知っている 力を振りかざさずとも 風が優しく揺らしてくれることを 孤独に抗わずとも 虫が花粉を運びに来ることを この影から逃げずとも 光降り注ぐ時が来ることを 今は蕾を持たずとも 花咲く季節が来ることを 心静かに生きる術を

      • 音を聞く

        雨が 蕾を濡らしている 木は不思議だ その全体が一つの命でありながら 一本の枝が 花のひとつひとつが それぞれに独立して命を宿している 雨は不思議だ その現象がひとつの命であるかのように 濡れてゆく街が 雨粒のひとつひとつが それぞれに雨と呼ばれている 蕾は明日 咲くのだろう どんなに濡れていようとも 雨は消え 蕾は花に変わる 私はその音を聞く

        • 『いつまでも』

          いつまでも 変わらないのは 誰もいない海に 一人で佇んているからか 願い事は 波打ち際の飛沫のように 手放しては返る 美しくうずく 世界のすべてが夕日のように 目を逸らせば消えてしまうから 僕は今日も 誰もいない海を見ている 記憶の無人島にいる

        『グリスを塗ってよ』

          『死』

          鼻先から上空までの あるいは足の裏から地平の彼方までの 果てしない自由と距離感 瞬間の森羅万象に 抱かれ 溶かされてゆく 脳のオシログラフが描く 宝石の如く美しい電気信号の なぞられる軌跡 あるいは美しい模様が レーザーのように まっすぐ最後の歌声を響かせる 耳と舌に別れを告げた インクの裏の もう一つの言葉を君に送る 「私」と言う名の望遠鏡が 見渡した世界の 欠片たる光 それは 存在を証明する為に仕掛けた この世界の輝き

          『死』

          『詩』

          鼻先から上空までの あるいは足の裏から地平の彼方までの 果てしない自由と距離感 瞬間の森羅万象を 汲み上げ 組み立てること 脳のオシログラフが描く 宝石の如く美しい電気信号の なぞられる軌跡 あるいは美しい模様に 耳を澄ませ 舞台の上で演じてみせること 耳と舌の為の巧妙な楽譜 インクの裏に もう一つの言葉を潜ませること 文字と言う名の望遠鏡で 世界を見渡すこと またその指南書 または 存在を証明する為に仕掛けた 計算式のこと

          『詩』

          『いつまでも』

          僕達は 振り払うために 手を繋いだんじゃない 僕達は 口を塞ぐために 言葉を持ったんじゃない 僕達は 心挫けるために 立ちあがったんじゃない 僕達は 覚めてしまう為に 夢を見たんじゃない たとえ何かが変わっても 変わらない想いを いつまでも

          『いつまでも』

          『イヤフォン』

          絡んだコードをほどくように 耳元に当てるイヤフォン 季節の風に吹かれながら 心の輪郭に相応しい キレイな音を探しながら 雑音に支配されない 一時の理想を手に入れる 贅沢で だけど平凡なこと 連なる毎日 曲と曲の隙間に似た 空白が必要なんだ だから、僕は音楽を聴く

          『イヤフォン』

          『伝える』

          夜明けの光 染まる雲たち 静かに降り積もる雪の白さ 都会の空に輝く満月 風に舞う春の花びら 美しいものに 心動くこと 誰かが僕に 教えてくれたこと 美しいものに 心動くこと 明日の子供達に 伝えたいこと この世界に 人の心に いつまでもあり続けますように 伝えなければ 忘れてしまう 誰もが忘れ 消えてしまいそうだから 美しいものに 人は心動く 終わらせたくなくて 君に伝える

          『伝える』

          『井戸』

          湧き上がる情動に 汲み上げる装置を与えれば 感動と言う名の井戸が組み上がる

          『井戸』

          『詩人』

          詩人とはね 詩を書く人ではなく 詩を読む人なんだ 詩人はとはね 世界のあらゆる現象に 言葉を見つける人なんだ そして私も 世界の景色の隅々まで 読み尽くしたくてしょうがない だから君の声も もっと聞かせてほしい 美しいものはいらない その震える声帯を 君の生を 私に読ませるんだ

          『詩人』

          『宇宙』

          小さな卵のなかに宇宙を詰め込んで 太陽と月を回していたいんだ 幸福の隙間に痛みが生まれるなら 平坦な海をどこまでも広げて 砂嵐に埋めて たまたま道路を渡れる時のような 単純な自由が欲しい 5秒後に消えて構わない 3秒だけ息を止めさせて 2秒だけ目を閉じさせて いつからだろう お皿の上には薬と毒だけ 話し相手は王様と奴隷 音楽と罵声 そんなのばかりで ミミズにでもなったみたいだ 悪い魔法にかけられて 死ぬところだった 小さな卵のなかに宇宙を詰め込んで 太陽と月を回していた

          『宇宙』

          『藁』

          いつからか ともだちという響きに 恋をし過ぎていた かけがえのない愛しさが 温もりが この日々にあるのに 風に流せ 世界の美しさを忘れ 心が飢えるなら 何度でも空を仰げ 痛みに溺れても それなら藁くらいにはなるだろう 十分だ 藁が舟になるくらい 僕なんてちっぽけなのだから

          『藁』

          『さらば原発』の日

          ある午後のニュースでは 「本日をもちまして  日本にある  すべての原子力発電所が  無事、停止しました」と ニュースキャスターの声が流れていた 続いて総理大臣が この偉業を称え 誇らしげに笑ってみせた 新聞の一面には 「さらば原発」 と書かれていた 「人類の過ちが精算された日」 「これがオレ達の正ルートだった」 SNSには そんな呟きも飛び交う 「壊すために作ったようなもんだな」 その傍らで 祖父の呟きが突き抜けた 祖父は かつて電力会社に務めていた 原子力発電所だ

          『さらば原発』の日

          『悔しい』

          悔しい 様々な言葉を貫き 雲を貫き 雨粒は やっと 落ちるべき地面を見つけた それがこの悔しいだ この命の芯となり 悔しいは尖り 他のどの言葉よりも濃く満たし 今、燃えている 悔しい これだけが 私を許してくれ 私は許すことができた

          『悔しい』

          『世界から春が消えても』

          世界から春が消えても 僕らの世界から 春が消えることはない 冬の合間の穏やかな日を 降り注ぐ陽射しのやわらかさを 僕らは春と呼ぶだろう くつろぐ猫の毛繕いを 犬小屋で眠る犬のお腹を 駆け抜ける少女の後ろ姿を 風に吹かれる少年を 僕らは春と呼ぶだろう

          『世界から春が消えても』