雨、音、雨、音、雨、音 石、車輪、石、車輪 星の恨みは霧となり 呼吸する中で肺を満たし 毛細血管に溶け込み 全身を巡る 雨、音、雨、音、雨、音 石、車輪、石、車輪 駆け巡る苛立ちは 星の妬み 呪いを解く術は 塩を撒く手のひら 湿りは結晶となり 大地に転がる 雨、音、雨、音、雨、音 石、車輪、石、車輪
たおやかなフェンネルの茎 渦を描きのびていく芳香 土の妖精の味 手紙を書こう 考えを結晶にして ことばにいのちを吹き込む からだはことばでできている こころはことばでできている しこうはことばでできている わたしはことばでできている ここにひとりの詩人が生まれた
言葉をすることは、服を脱いでいくことに近い 少しずつ裸になっていく 思考と感情の切れ端を、建築物のように積み上げて 陽にかかげ、そこで生まれる陰に目を凝らす 言葉で着飾るように見えていても、そうではない 削ぎ落とされて、削ぎ落とされて 裸になっていく 全てを言葉にし終えたとしたら わたしは、わたししか残らない 全ての言葉を吐き出したい わたしは、わたししか残らないから
ぶんぶんぶん 黄色と黒 陽気なボヘミア民謡の舞踊 熊蜂の飛行のような緊迫感 虎の指環 アンバーに溶ける光、洞窟の闇へ落ちて ぶんぶんぶん 音は重なりながら、残響は鼓膜を犯す トパーズとブラックサファイア ゴードンが唸る 頭の中で羽ばたく ぶんぶんぶん
言葉を削る、磨く 余白を構築する 残響にいのちを感じる 鼓膜は、そこにはない音の波を追いかける ないはずの音がそこにある 音楽は 見えない建築物として あるいは 連続する波として 存在する 空白を満たす 音 その波が消えるころ 感じる 生命の鼓動 存在しないはずの音が そこにある