チュロスの話⑤

役所に着いた。

駐車場には車が1台も停まっていなかった。「まさか、役所すら閉まってるのか…?」とヒヤヒヤしたが、建物に近づくと自動ドアが普通に開いた。よかった。

中に入ると、役所特有の?建物のにおい。
「うぇっ…。」
いつもは気にならないのに、胸やけ状態の鼻にはべっとりまとわりつく。

手続きの書類を探していると40歳くらいのメガネの男性職員が、「どうされましたか?」と声をかけてきた。
あ、「どうされましたか?」っていうのは、「体調悪いんですか?」じゃなくて、普通に「今日はどういったご要件で?」ってことね。

体調が悪いので話すのもおっくうだったが、接客バイトの経験もあって、嫌な客には決してなるまいと決めている。にこやかな笑顔を作って、「じゅ、住所変更したいんです…」と答えた。多分マスクで笑顔見えてないけど。

メガネ職員さんから渡された紙に個人情報を書いて返し、待ち合いの椅子に座り込む。
早く手続き終わらないかなぁと思いつつ、役所のにおいを誤魔化すためにキシリトールガムを口に入れた。

つづく