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レトルトパウチの甘栗

甘栗がね、好きなんです。

え? 

いやいや、レトルトパウチで売ってるお手軽なむき甘栗ですよ。

コンビニなんかでぶらさがってるのを見ると、どうも無性に食べたくなって手にとっちゃいます。

案外油断しているのがね、100円ショップですよ。

あれはいけない。食品コーナーになんて立ち寄らなくても、レジ横に大きなラックで「こだわりのむき甘栗 無選別120g」がだだだだんっ!と積まれていたりするんですから。

ほんとうはわたし、洗濯ばさみと封筒を買いにきただけなのに。でも、甘栗がそんなところにあるものですから。

どうしたって手にとっちゃうじゃありませんか。そうでしょう。わたしは悪くないんです。甘栗がね、どうしたっていけないんです。地味な顔して、一度心をつかまれたらもう、離れられないんですからね。

罪なやつですよ、ほんとうに。

なぜ自分でもこんな書き出しをしたのかわからない。

甘栗が好きな話を書こうと思って、つい一文目を「甘栗がね、好きなんです」と打ったばっかりに、つらつらと得体の知れないキャラクターがひとり語りを始めてしまった。

この文章をわたしに書かせているのはひとえに「甘栗が好き」の一心に過ぎない。文章とは不思議なものである。

さて、わたしが初めてレトルトパウチの甘栗を食べたのは高校時代のことだ。

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2,531字
どうでもいいことをすごくしんけんに書いています。

<※2020年7月末で廃刊予定です。月末までは更新継続中!>熱くも冷たくもない常温の日常エッセイを書いています。気持ちが疲れているときにも…

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