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#27 〖自分の心が反応するところに、素直に反応してみる〗

第27回目は、『辻田 寛明』さんにお話を伺いました!

「学校の先生も人なので、その先生に30人全員が相性合うっていうのはなかなか難しい」っていう話が、個人的にしっくり来ていて、そりゃそうだよなって。先生に合わす必要もなければ、学校に合わせる必要もなくって、自分自身が嫌だと感じたらそれがすべて。

親が「先生の言うことを聞かなきゃダメだ」とかも、ケースバイケースだと思っていて。命を守ること・他者を尊重すること、個性を抑圧すること・個人の意見を否定すること、っていうのはしっかり線引きしなきゃいけないんだろうなって、親目線でも成長させてもらったインタビューでした。

本日も、素敵なご縁に感謝し、このインタビュー内容をお届けします。

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『不登校の子に探求学習を届ける家庭教師事業』

いまチャレンジしていることは、2020年の9月にワオフル株式会社として登記をして、『不登校の子に探求学習を届ける家庭教師事業』をさせてもらっています。

前回インタビューしていた廣瀬さんと同じボーダレスジャパンに2019年新卒で入りました。「解決したい社会問題は何か」というところで、ぼくは「日本の子どもの自己肯定感が低い」という社会問題に対して取り組んでいきたいという想いを持っています。それを実現する第一歩として、「自己肯定感が低くなっちゃう子ってどんな子だろう」ってなったときに、不登校の子とか発達の特性を持っていてなかなかクラスに馴染めない子とか、「そういう子たちは自己肯定感が低くなるのでは」と問いを立てました。

なので、「そういう子たちの自己肯定感が低くならないような授業を創ろう」というところで、現事業が始まりました。


自分の人生にワクワクできて、どんどん幸せになれるような体験を積んでもらえたら

いまもまだ試行錯誤中なんですが、ひとつうまくいっている事業の軸は、『じぶんのものさしをつくる』というテーマです。

「なぜ自己肯定感が低くなるのだろう?」というのをすごく考えたときに、どうしても『他人との比較』で自分自身を価値づけてしまうというところが大きいのかなとぼくは思っています。大人になっても、自分に価値を見出せなかったりする人は、「あの人がこう言った」「社会のなかの基準でわたしはできていない」とか。その中で、『自分がこうありたい』というのがないな。そのときに、『じぶんのものさし』を持っていることって大事だなと思ったんです。

いまの義務教育って「こうあるべきだ」「こうなろう」とか画一的な教育って言われています。『こうあるべき像』に寄せられちゃうことがどうしても多いなと思っていて、そういうときに不登校の子たちは自己肯定感が下がってしまう。

でも学校に行かなかったとしても、『じぶんのものさし』を持てて、自分の人生にワクワクできて、どんどん幸せになれるような体験を積んでもらえたら、すごくいいのかなと思って、『じぶんのものさしを持つ』というのをテーマに持って関わっています。

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(振り子時計を作成してみた)


対話ベースで「何が好きなの?」をどんどん引き出す

『じぶんのものさしをつくる』って大人でもむずかしいことなのですが、ぼくが大事にしていることは、『子どもの中に興味・関心は絶対に眠っている』です。ただ、そこに本人も気づけていない。なので、対話ベースで「何が好きなの?」をどんどん引き出してます。

「この子はゲームしか好きじゃないんですよ」って親御さんが言っていた子でも、実はそのゲームの中でも武器の話が好きで、その武器をつくるっていうのにめちゃくちゃテンションがあがるということがわかって、「じゃあその武器つくってみようよ」って言って、段ボールで本物そっくりにつくってみた。そうなると、実は『モノづくり』が好きだということがわかって、そこからどんどん『モノづくり』に夢中になっていく。

そういった興味・関心を引き出して、そこからやりたいことを追求するというのをコーディネートするではないんですけれど、いっしょにそれを探していくということをやっています。

(家庭環境、親御さんの子どもへの態度など関係ある?)そこも一概に言えないなと思っています。本当にパターンがいろいろありすぎます。実際に親御さんが『こうあるべき』を押し付けちゃってる方もいらっしゃいます。「いい中学に・高校に行って欲しいから勉強をしてほしい」を、その子の意見を聞かずに決めちゃってる人もいます。

一方で、本当に「いろいろなことをやってほしいな」って思っているけれど、なかなかできないというお子さんもいます。要因として、家庭環境というのもあるかと思いますが、その子自身が持つ特性(発達障害というワードとかで取り上げられたりするのですが)があったときに、学校に馴染みにくいということもあったりします。

家庭環境がいくらよかったとしても、大切な居場所でもあるはずの学校が、自分にとってすごく嫌な場所になる。そうなると、自己肯定感が下がっちゃうというケースもけっこう見受けられます。

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(小2生徒が作ったオリジナル素数表)


時代に対して『いい尖りかた』をした人が増えると、日本はどんどん良くなっていく

この先、自分でやりたいことを切り開いていく人たちが増えれば増えるほど、日本は明るくなるなって思っています。

これまでは大企業がたくさんあって、その大企業の中で働くことでGDPに貢献することが良しとされてきた時代だった。これからの時代は、VUCAとも言われるくらいに、何が正解かはわからない、どんな変化が起こってくるかわからないという中で、『これまでになかった新たな価値』や『いろんな人の共感を呼ぶもの』を創ることが大事だよという考え方に移行していると思っています。

そういうことを産み出せる人って、自分の好きをどんどん追求できたり、「これが絶対いいんだよ!」って言える人。時代に対して『いい尖りかた』をした人が増えると、日本はどんどん良くなっていくのかなと思っています。


日本では「なぜ子どもたちは、自分のことを卑下してしまうんだろう」って。

大学生のときに、中高生のキャリア教育にずっと関わっていました。関わったきっかけは、高校生のときに(自分自身が)かっこいい大学生に出会ってモチベーションが上がったので、ぼくもそういうことができたらなと思ってやり始めました。

地方に住む高校生たちが修学旅行で東京に来るときに、「大学になったらこういうことチャレンジできるよ」「こういう可能性が広がっているよ」みたいな感じの話をしながら、『人生のターニングポイントを中高生に届けよう』ということをずっとやっていました。

800人くらいの中高生と出会ってきたんですけれど、「いいですね」って言う子がいる反面、「それはあなただからでしょ、自分なんかは、、、」って言う子もいたんですね。そこにモヤモヤを抱えていた中で、決定的だったのは、大学院に進学してインドネシアの貧困研究をやっていて、スラム街にフィールドワークに行くことがあって、現地の子どもたちと話すんです。現地の子どもたちは「自分なんか、、、」ってことは言わなかったです。

そこではじめて、日本では「なぜ子どもたちは、自分のことを卑下してしまうんだろう」って。

インドネシアの子たちのほうが、はるかにインフラも整っていないし、モノもないし、すごく大変な生活をしているはずなのに、そんなに自分のことを卑下しない。そこで、すごく問題意識が芽生えました。

(大人になってからでもできる?)ぼくはできると思っています。もちろん子どものときよりは、大変になると思う。発達心理学的にも、幼少期に自己受容の土台ができているかどうかで、例えばバケツに穴が開いていたら、いくらバケツに水を入れてもどんどん下に流れて行っちゃうみたいな話があって。それが大人になればなるほど、その穴をふさぐのが大変になるって言われています。

大人になってからでも、土台となる『じぶんのものさし』をしっかりつくってというのは、いつからでもできるのかなと気はしています。



いろんなことをやる中で、自分の心が反応するところに、素直に反応してみる

「自分が何をしたいのか」を探す、いろいろな経験を積んでいく、というのは20歳前後だからこそできる特権かなと思っています。いろんなことをやる中で、自分の心が反応するところに、素直に反応してみる。

そういうことをやりながら、「こういうことをやってみたいのかもしれない」を見つけること。そして、見つけたときに、その分野で活き活きとしている人に出会うことなんじゃないかなって。「この人は、こんな風にやっていたんだ」「この人も20歳のときにはいろいろ悩んでいたんだ」って知れると、けっこう勇気が湧いてくる。自分も頑張れるかもしれないって。

なので、そういう人と出会えることも大事だと考えています。

学部生だったときに、いちど就活をしていて、内定ももらっていたんですけれど、その過程の中で、自分の叶えたいことに真っすぐな人にたくさん出会いました。

それこそ、ITベンチャーの社長さんだったりとか、目指している方向は違うんですけれど、21/22歳くらいから、自分のやりたいことに素直で真っすぐな人に出会うようになって、「こういう生き方かっこいいな」って感じるようになりました。

起業という選択肢はぼんやりあって、無くはなかったんですけれど、そこが明確に一つの選択肢として出てきたのは、その頃ですね。


こっちから与えすぎない、あえて余白をつくるというのを大事にしています

子どもの中から眠っているものを引き出せない限りは、その子たちは夢中になれないというのがあって、それを無視して「こんなこと面白い」「こんなこともできる」と言い続けても、反応が薄いんです。

その子がいかに好きなものを引き出せるかという最初の時間を大事にしていて、「どんなことが好きなの?」「今日たのしかったこと何?」みたいな、よくイング(~ing)形の質問というんですけれど、『やりたいこと』ではなく『いま好きなことは何?』という対話をしていって、それで反応する子はしてくれる。

それでも反応してくれない子には、偏愛マップといって、好きなことをひたすら書き出してもらいます。カテゴリーごとに書き出してもらいます、例えば、食べ物という欄に寿司とか肉とか、場所という欄に家とか〇〇公園とか、そういうことをやっていくと、「ゲームしか好きじゃな」って言っていたのに、「実は虫が好き」みたいなことが出てきたりして、そこから話が広がったりとかがあります。

そのようなシンキングツールを取り入れるようにしています。

(自己肯定感を高めた子たちの将来は何か考えていますか?)ぼんやりとしかないんですけれど、「こういう面白いことできるよ」ってなったあとは、それが「どう社会に還元できるか」にしっかりつなげていくことが必要だと思っています。

ゆくゆくはなんですが、子どもといろんな選択肢で働いている大人たちが、同じプラットフォーム上で簡単につながれるというか、そこで選択肢を知れた上で参加/インターンしやすいという形で、実際に働く・やってみるということを経験できるようなところも、創っていけたらなとも考えています。



オルタナティブな選択肢がちゃんと地域の中にあるのが大事

(既存教育機関との連携は?)後々、やりたい部分ではあります。ぼくがやっている探求学習って、公立学校ほど困っていて、学習指導要領で2019年定められたんですが、どうやればいいかわからないってなっている。メソッドが固まったら、それを学校に取り入れてもらいたいと思っています。

もうひとつやりたいのは、フリースクールとの提携です。学校に全員を馴染ませるというのは無理があると思っていて、学校の先生も人なので、その先生に30人全員が相性合うっていうのはなかなか難しいんじゃないかなって。

そういうときに、学校ひとつに頼るのではなくて、オルタナティブな選択肢がちゃんと地域の中にあるのが大事だよなって。フリースクールがこれから役割として重要になってくると思います。

いまのフリースクールにももちろん素晴らしい部分はたくさんあるんですけれど、学校に代わる教育の質を担保できているかというと、まだそこまではいけていない部分も多いので、その中で、(実施している)探求という点に関しては(フリースクールに)導入してもらうことで、よりよい価値を子どもたちに提供できることをやっていきたいと考えています。



『孤立しない』というのがいちばんいいところ

(ボーダレスジャパンに入って起業してよかったことは?)『孤立しない』ということが、いちばんいいことかなと思っています。いまも、ボーダレスジャパンのオフィスなんですけれど、何個も事業部のグループがいるんですね、先輩の社長さんたちがいるんですよ。「ここ困っているんですけど、どうしたらいいですかね?」ってことを、気軽にその場ですぐに聞けるっていう、そこが個人的にはすごくありがたいです。

もちろん経理や法務のバックアップがあったりとか、事務的なことを全部やってもらえるというのもありがたいんですけれど、そういうところも含めて『孤立しない』というのがいちばんいいかなと思っています。

(社会起業家が横にどんどんつながっていくことがいいことだと)ぼく自身もすごく感じていて。すごい孤独で、周り見たら共感してくれない人・わからない人がたくさんいるという中で、ボーダレスジャパンとか関係なく、いい取り組みをしているところとはつながっていきたいなと思っているので、そういうところがどんどんできてくればいいなとも思うし、これからどんどんできてきそうな予感もしています。



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(インタビュー風景:左下が辻田さん)

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(辻田寛明 2020年10月28日)


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