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しんやの餃子世界紀行 Vol.73

「西国無双の男と3バカ勇者の大冒険」

緊急事態宣言が明けて1ヶ月半ぶりに戻る岡山。

久しぶりに戻る岡山は最初、中国地方を襲った大雨の煽りをうけ、晴れの国の様相は消えた。

この雨に流れてパクチーがスーパーから消えた。
消えたパクチーが店に並ぶことは結局この1か月間なかった。

岡山が復活すること。

最初は不安が大きかった。

僕はこの街の何も知らない。

ただ一つ決めたことがある。

岡山発の餃子屋が東京でバズった未来でも、その餃子屋は岡山で人気店でなければいけない。

じゃないと東京に出た意味がないじゃないか。

守屋はそれを他所者の新谷に託したのである。

確かに、東京の店は新谷より守屋の方が似合っている。

僕が岡山で餃子世界を盛り上げられなかったら。

守屋のプロセスは成功しないんじゃないか。

この会社にいる意味がなくなってしまう。

だから、妥協の結果で終わるわけにはいかない。

そのために何をするべきなのかを考えに考えを巡らせる。

飲食店のノウハウなんか持ち合わせていない。

でもエンターテイメントのノウハウはこの短い人生の中で少なからず心得ているはずだ。

ただ、僕らは決してテレビやyoutubeではない。

一人一人に個と個があって、その個に寄り添うことがこの店のエンターテイメントなのではないか。

守屋のような全体のグルーブを上げることは新谷にはできないけど、新谷なりの寄り添い方とグルーブの上げ方があるはずだ。

その日以来、餃子世界は下ネタが溢れかえる変な餃子屋になった。

下ネタ世界だ。

誰も傷つかない、気持ちが落ち込まない下ネタは新谷の最大の武器なのだ。

下ネタは恋愛相談に変わって、恋愛相談は恋バナに変わっていく。

みんな内に秘めたことがあって、言えないことがあって、それが誰かの何かに訴求して、輪は輪を広げた。

顔も知らない誰かが、初めて会った誰かの恋愛を本気で考えるそんな空間で、繰り返し絶えぬ談義は夜遅くまで続いた。

そんな談義でケツに火がついた西国無双な男一人

みつはたさん。
通称あさと。

よく考えたら復活して3日間、あさとが店にいない日がなかった。

その3日が過ぎて、10日間、1週間が過ぎてもなお、あさとがずっと店にいる。

すごい頻度でいる。

週に3回くらいいる。

あさとはいつしか、安藤の次にこの店で下ネタを聞いている男になった。

そんなあさとだから、基本ずっとあさとと遊んでいた。

岡山駅ナンパバトルロワイヤルではチームあさとの前に、しんやもなりくんも撃沈した。

どんなに長い時間いても、

「じゃ、新谷さん。俺次あるんで」

と、颯爽と立ち去るあさとを今月僕は何度見送ったのだろう。

しんやの髪の毛の色はラベンダーからシルバーに変わり、ミルクティーの色に変わる。

あさとが美容師であったおかげで、その日から次いでに新谷もモテ始めたくらいにして。

基本ずっと女の話しかしない。
女の話でしか盛り上がれない男が、しんやにとって4月までのあさとだった。

でも、今月のあさととはお互い尽きない女の話の間と間で、すごくコアな話をする仲になった。

すごく実直の男だ、あさとは。

でも周りのみんなと変わらず23歳の若者だ。

不安や悩み、わからないことは山のように目の前に積まれている。

歳上として、そんな悩みにストレートな解決方を提示してあげたいと思うが、そんな術をぼくは持ち合わせていない。

何より、自分が選んだこの道を切り開きたいと志すあさとの見たいと思う自分がいる。

先輩だから
リスペクトをしてもらってありがたい。

でも僕は僕で、君のことをリスペクトしているし。

お前でしか開かない道がどんな道なのか、これからも見たい。

人が人生で得た教訓や成功や失敗なんて、所詮他人にとってはヒントでしかない。

誰かが踏んだ道を進むな、あさと。

お前はお前の道を行け。

それが例え誰かが踏んだ道だとしても、これは俺の道だと言い張って進め。

その先で待ってるから、しんやひろきの夢を支えるチームのひとりとして盛り上げてくれ。

俺もそこそこには頑張るよ。

しんやが岡山へ戻る最終日、星が見たいと遊びすぎてヘトヘトのあさとの車で向かう美星町。

満開の星とは程遠く、生憎の曇り空がブワッと広がる暗闇の山中で僕たちの上だけふわっと開いた夜空に浮かぶ星を見て

「やっぱり俺待ってるなー」

と言ったあさとは流石西国無双の男の顔。

何故かそんなドラマチックなはずの夜をかき消す

「暗い!怖い!無理!」

と叫ぶ悪ガキ3人。

第三期岡山を語る上で、あさとは勿論主人公なのだが、外して語れないのがとうい、れい、ニコちゃん。

悪ガキ3人組である。

この3人にレンを加えた4人は新谷の生誕祭@岡山で初めて会った4人である。

特にとうい、れい、ニコちゃんとはマジで3日に一回くらいのペースで遊んだ。

3人とも20歳。
齢にして12つ。
干支はちょうど一回り離れている。

そんな若者たちと毎夜の如くアホみたいに遊んだ。

この3人の仲良し具合と言ったらすごい。

小学生で時が止まっている。

アホとアホとアホが寄り添ってどうやったら思いつくのかもわからない遊びを日夜研究している。

タバコと酒が飲める小学生みたいだ。

そんな彼らの終わらない青春は必ずいつかお互いが離れ離れになって散ってしまうことを何よりも彼ら3人がよくわかっている。

その切なさを背負う彼らが過ごす日々の一端にしんやの名前が一瞬でも刻まれたことを光栄に耽りながら。

壊れるから美しいんだということを彼らから学ぶ。

壊さないように守ることが愚かだから今を楽しむ彼らのが、よっぽど大人より大人だ。

にこちゃんはこのかけがえのない輪の中で確実に大人になっていく自分を俯瞰して見ている。

そして、まず自分が離れてしまうことをきちんと理解している。

れいもとういもそんな不安に負けないようにしている。

それでも弱い。
男の子はやっぱり、女の子には勝てないね。

にこちゃん、あなたは強い女です。ですが強い女だと周りの環境に許されてはいけません。

周りのイメージに悩んではいけません。
少し上に見られてしまう自分の中の等身大をもっと大切に。

素敵な女になりなさい。

れいはいつも泣き虫だね。
泣くことは悪いことじゃかいから大丈夫。

でもね?
男の子は強く生きなきゃいけない時がくる。

だから大事な時にちゃんと泣けるように、泣かないれいをしっかり作ろう。

そしてとうい。
色々複雑な事情を抱えて、それでも強く前向きに生きて偉いね。

でもその事情は君が死ぬまで必ずついて回る。
その運命を愛するために、真っ当に生きなければいけないよ。

周りがどんなに甘やかしても、周りのみんながやってても。

法に触れない世界線で生きなさい。
悪いことをしない大人になりなさい。

君の業は、君でしか解決できない。
だから、正しく生きなさい。

それでも人生がうまくいかなかったら。

しんやが一生面倒見るから。

だから安心しなさい。
ただね?
しんやは誰よりも厳しいよ?

だからついてきなさい。

なんとかしましょう。

そんなこんなで刺激的だった岡山はまたしても自粛要請のせいでまた終わってしまった。

悔しいな。
悔しいですよ、しんやは。

でも確実に残した爪痕は両手だけじゃなく足の分も加えて岡山の街に残る。

あさとやニコちゃんやれいやとういを始め、この1か月で仲良くなった全員がその爪痕の証人である。

確実に岡山に新谷世界って餃子屋があったことをみんなが覚えている。

閉店早かったなあ。

まあ良いわ、

東京にもしんやを待つ誰かが居る。

だってしんやさんは、主人公だから。

というわけで岡山のみなさん、体に気をつけてしんやの帰りをお待ちくださいませ。

困ったことがあったらすぐ連絡してちょうだい。

東京の皆さん。

みんなのしんやが東京に戻ってきましたよ。

伝説的な夜を作りましょう。
こっちの準備は完璧です。

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