顕在性不安尺度について
病院で使われる検査に「顕在性不安尺度」があります。
MASと略したりする。
名前の通り、不安の強さを測る質問紙だけど、
MMPIという心理検査からの抜粋だったりする。
MMPIは500問以上あるので、
不安に関する項目だけに絞って60問ほどになっている。
ということは、MASの項目はMMPIでもあるわけです。
だいたいMMPIのHs尺度、D尺度、Pt尺度からできている。
不安と言っても、この三尺度の複合体なわけです。
あまり、そうした面を強調している研究は見たことないけど。
詳しいことは省きますが、不安の構成要素として
Hs尺度:身体的な不調感
D尺度:気分の落ち込み、自己否定
Pt尺度:対人恐怖や強迫症状
この三つがある。
それがMASの前提になっているらしい。
それぞれ、対身体、対自己、対他者と読み取れますね。
この三つの領域で不具合が生じるのが「不安」である。
漠然と「不安」という塊があるように思えるけれど、
分析してみると三つの感情が入り交じっている。
考えてみると、体調が思わしくないなら気分は沈むし、
そのことで自分を責めると、人からも責められている感じがする。
それで人に会うのが怖くなり、緊張感で身体も消耗していく。
消耗するからますます気分は落ち込んで、自分を責めてしまう。
そこには循環構造があります。
悪循環ですね。
この三つの感情がぐるぐる回って抜け出せなくなる。
これを「不安」と定義づけるわけです。
すると、この悪循環のどこかでループを止めればいい。
理屈は簡単。
実行は難しいです。
簡単だったら、誰もカウンセラーなんかに相談しません。
そこで、どこから手を使えるか考えるのが不安の臨床です。
心療内科で bio-psycho-social という考え方があります。
精神分析家のバリントが提唱した概念です。
bio は身体面、まずお薬を使ってよく休むようにしましょう。
psycho は心理面、自分の置かれた状況を振り返ります。
social は社会面、デイケアなど安心できる場に参加します。
これもほら、対身体、対自己、対他者になってるでしょ?
「ひと」というのはこの三つの側面に支えられている。
どこかだけ注目してはダメ。
三つを少しずつ回復していくことで
「不安」の悪循環を断ち切ることができるのです。
だからって簡単じゃないですけどね。
前回書いた「調律的傾聴」をしてくれる人との出会いが
転機になるんじゃないかと思います。
それは家族でもいいし、学校の先生でもいい。
会社の同僚にそんな人がいれば運がいいと思う。
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