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南部片富士の麓から届けるメッセージー大豆農家 加藤淳さんー

2023年3月11日。震災から12年経った今、東北で第一次産業に関わる皆さんは何を思うのか。私たちは「3.11とポケマル − 知る、つながる、食べるが力に」と題し、東北で活躍されている生産者さんにお話を伺いました。

その特集内で、加藤淳さんは「商品の背景を知り、食べることをきっかけに、岩手に想いを馳せてもらい、食べ物だけに限らない密接な関係を築いていきたい」と話してくれました。


加藤さんが暮らすのは岩手県、盛岡市。
岩手のシンボル的存在として地域の人々に親しまれている岩手山、その別称である南部片富士の麓で、「秘伝大豆」の栽培を行っています。農薬は一切使用せず、肥料は緑肥のみというオーガニック栽培にこだわっています。

加藤さんの大豆畑と南部片富士

ユーザーの方とつながる手段の一つとして、ポケマルを活用くださっているという加藤さん。今回は生産者・加藤さんと、ユーザー・家元チャンさんとのやりとりから生まれた「つながり」についてご紹介します。


3.11特集の記事が公開された際、加藤さんは1週間限定でオーダーいただいた方々に下記のお礼メッセージを送ったそう。

ご注文ありがとうございます。

3.11。僕にとって特別な日です。
記事にもありますように農にかかわる後押しをしてくれた日です。内陸で被害の無かった僕が初めて沿岸に入ったのが2週間後。それでも爪痕は生々しく、しかし海は何事もなかったかのように静謐を装い、その対比に愕然としました。自然に対してなにもできない自分の無力さを悔やみ、やがて畏怖の念に変わります。1週間後、津波を被った梅の木に花が咲いたというニュースが流れ、何故かはわかりませんが、すごくホッとした記憶があります。
自然は対立してはいけない、共生するものである。その思いから、自然と密にかかわれる有機農業を始めました。
秘伝大豆を育ててくれた畑と岩手山に畏敬の念を表します。
そして、この機会にご注文を頂けたこと、本当に感謝いたします。

南部片富士印 加藤淳

加藤さんメッセージより

このサンクスメールに対し多くの方々から返信があったようですが、その中で特に印象に残ったというのがユーザーの1人・家元チャンさんから届いた、このメッセージ。

自然と共生、同感です。
自然は逆らうものでも対立するものでもありません、人間も一部だし。
冬は玄いものを食べると良いと聞きました。例えばヒジキと黒豆の炊いたの、とか。藤ご飯と言いますが、近頃は黒豆ご飯をよく食べています。
豆大好きです。綺麗なお豆さんですね、届くのを楽しみにしています。岩手は何でも美味しい所ですね。林檎も南部煎餅も栗羊羹もヨーグルトも!大事な友達もいます。

家元チャンさんメッセージより

加藤さんは、家元チャンさんに返信を送ります。

メッセージ、ありがとうございます。
おっしゃる通りです。畑をやっていると、人智を超えたなにかを感じます。抗わずになすがままに、それを楽しんで。人は一部に過ぎないです。
僕の秘伝には自然のそういうなにかが取り込まれていると思ってます。黒豆ではありませんが、岩手山の光景を含めてお楽しみいただけると幸いです。

南部片富士印 加藤

加藤さんメッセージより

2人のやりとりはさらに続きます。

ありがとうございます。届きました!
早速水に浸けました。明日、先ずご指示通りに茹でて塩を降って頂きますね。南部片富士印の大豆に拘る理由が、きっと味にも有るのでしょう、楽しみです。これまでも無農薬で豆を作る何人かの方々から、色々な豆を買わせていただきました。炊く作業も豆は愛おしく思わせますね。
有り難うございました。

本当に味のあるお豆さんですね。
豆は凄いですね、どの豆もそれぞれ主張しますね。
大豆は昔、田んぼの畦に植えられていたと聞きます。あまり肥料も要らない手もかからないで出来たのでしょうか。
この南部片富士印豆は普通の大豆のように丸くないですが、出汁も取れるのは一緒ですね。お豆腐の濃い味、湯葉の味がします!
七歩の詩が生まれた中国では、古代から豆の文化があったのでしょうね。豆だけでなく、鳥も花も命を繋ごうとする自然は凄いです。私も豌豆豆(エンドウマメ)植えてあります。  
ご馳走様でした。ありがとうございます。

家元チャンさんメッセージより

自分の狭い範疇でしかないのですが、それでもこの豆を食べたとき、枝豆で食したのですが、未だにその衝撃を憶えています。
自分で作りたいと思い、今年で13シーズン目に入ります。
ああすればよかったとかこうすればとか、毎年試行錯誤の繰り返しですが、そこそこ満足できるものには仕上げってると思っております。何よりもご評価いただけることが嬉しいです。
お豆腐の濃い味というご評価は、僕が目指しているところに行きつきつつあるものと嬉しく思い、また今年も試行錯誤していきます。
豆は凄いです。まさに「滋養に満ちた」ものと思います。
大豆は肥料分を入れない方がうまくいく作物で、あまり手をかけなくてもできます。(ちなみに僕は農薬なし、肥料は緑肥のみです。)人工的に多く実る環境を整えるのではなく、自然に委ねてあるがままの環境で育てることで、味が強く出ると思っています。
家元チャンさんの豌豆豆もそんな環境で、おいしくおいしく育っているのではないかと思います。手塩にかけた豆、食卓に上がるのが楽しみですね。
盛岡もだいぶ春めいてきました。僕の畑は岩手山のすぐ麓で寒いのですが、それでも雪がだいぶ解けてきました。新しいシーズンが始まります。枝豆になるのは9月末です。また一年、命を紡いでいきます。
ありがとうございました。

南部片富士印 加藤淳

加藤さんメッセージより

生産者と購入者。普段は交わる機会の少ない両者ですが、ポケマルを通じてお互いへの感謝や想いを伝え合うことで、それ以上の関係性が生まれています。

筆者は今回加藤さんと直接やりとりし、お話の機会をいただきました。

ポケマルを選んだ理由は何ですか?

髙橋代表の現場に入って培った感覚に共感したことです。また、ユーザーとのコミュニケーションが双方向でできること、そして双方向を望んでいる(苦にならない)ユーザーがたくさんいると思えたことも大きいです。

実際に使ってみてどう感じましたか?

最初は使い方が解らず、またECも初めてだったので不安だったが、暖かいユーザーに巡り合えて嬉しかったです。苦情に関しても直接ヒアリングできるので、何に対しての苦情なのかを把握でき、それによって的確に対処ができます。

ユーザーさんとの印象的なやりとり、ポケマルを通じて生まれた関係性など何かありましたら教えてください!

60%ほどが虫に食われていた枝豆を送ってしまい、その様子を写真付きでごちそうさま投稿されました。まずはお詫びの言葉、混入の状況、品質管理の手順、混入の経緯、再発防止策とコミュニティで丁寧に説明をしたところ、ご理解をいただいた、ということがありました。「思えば、オーガニックは虫の混入は当たり前」とのお言葉をいただきましたが、それに対し、「ありがたいが、それには甘えることはできない。口に入るものであり、また楽しみにしている気持ちを踏みにじることになる。混入は正直0にはできないが、近づけるように努力することはできる。」と返信し、「頑張ってください。応援します。」という言葉で完結しました。このやり取りはコミュニティという誰でもが見られる場所で行われたので、非常に神経を使いましたが、いまでは感慨深い思い出です。この方とはその後数回お付き合いいただきました。

また、昨年はコロナ禍にもかかわらず3回も東京から栽培のお手伝いに来た方がいらっしゃいます。この方は2年前に飲食の事業を始められ、大豆を使いたいと相談を受けました。起業するのであれば軌道に乗るまで協力すると、無償で提供し、販促も兼ねてその店のイベントに参加し自分の農業に関わるスタンスの話をしたことがあります。これが縁で、その方が懇意にしている生産者とも繋がり、今年はその生産者のところに援農に行く予定です。これもネットでのつながりがリアルにまで発展したよい事例かなと思います。

加藤さんがユーザーさんとのつながりを大切に思っていることが伝わります。

また、加藤さんは商品に同梱する写真を毎回変えているそう。季節に合わせた写真とユニークなメッセージはファンも多いんだとか。

こだわりが光るカードです!

震災後に農業を始めたという加藤さん。貴重なタンパク源でもある大豆を育てることを選んだのは、地震によって物流が滞り、スーパーに長い列ができた当時の経験が大きく影響しているそうです。

普段私たちは、納豆や豆腐など、加工された状態で大豆をいただくことの方が圧倒的に多いように思います。ですが、加藤さんの秘伝大豆は茹でて塩をふり、まるで枝豆のようにいただくのがおすすめ。

加藤さんの畑で育った「秘伝大豆」

岩手の自然に抱かれて育った加藤さんの大豆、ぜひ一度味わってみませんか?


◆生産者ページ
 加藤 淳 | 南部片富士印
◆Facebook
 南部片富士印 秘伝大豆

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