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可食部が30%から60%にアップ、フードロスの削減にも。生産者が作る「真鯛」を使った防災食—三重県南伊勢町・友栄水産

ポケマルチャレンジャーアワード2024、今年度の年度テーマは「食と防災」でした。友栄水産の橋本純さんは、自社で開発した防災食について発表してくれました。

友栄水産の橋本純さん。2年連続での受賞となりました

実際に被災地での炊き出しでも活躍したこちらの加工品は、これまでは廃棄されていた頭部や骨といった部分まで使用することで、可食部が30%から60%にアップ。ロスの削減、海洋資源の有効活用にもつながりました。

今回これらの加工品を開発した背景やそこから見えてきた「食」の可能性など、真鯛を使った加工品を作るまでのこと、これからのことを橋本さんに伺ってみました。

「レトルト加工」で傷みやすい生魚の長期保存が可能に

橋本さんが新たに商品化したのが「鯛めしの素」、そして味付けした干物をレトルトパウチした「おやつひもの」。

簡単に調理できる「鯛めしの素」
味付けした干物をレトルト加工した「おやつひもの」
現在は自店舗のみでの販売だそう

元々はお子さんのために真鯛を使って栄養価の高い食品を作りたい思いから商品づくりがスタートしたそうですが、東日本大震災の発生後から「防災」を意識した商品づくりが頭の中に浮かんでいたといいます。

傷みやすい生魚を加工するにあたって冷凍食品という選択肢もありましたが、レトルト加工を選んだのは常温保存が可能なため。「設備投資等の初期コストはかかるものの、常温で保存ができる分、在庫の保管や発送といった部分で費用が抑えられる」のだそう。レトルトにすることで実際に冷蔵庫や冷凍庫等の設備が整っていない場所にも持ち込みができ、能登地方の避難所での炊き出しにも使用されました。

避難所で多くの方々に鯛めしが振る舞われました

生産から携わっているからこそできた「鯛めしの素」

今回「鯛めしの素」を作ろうと思ったのは、真鯛の生産者が加工品を作ることで、差別化できるポイントが多くあると感じたからだそう。

橋本さんは市販の鯛めしを買って実食したり、ラベルに記載してある原材料をチェックしたりと、6次産業化するにあたっての研究を重ねました。その際に目についたのが鯛の身の量。自社で真鯛を生産しているからこそ仕入れのコストがカットでき、その分他社製品よりも多く鯛を使用した贅沢な鯛めしが完成しました。

調理も簡単で、研いだお米に鯛めしの素を加え、お米の合数に合わせた水を足して炊飯するだけ。国産真鯛をたっぷり使ったおいしい鯛めしが手軽に出来上がります。

廃棄部分を有効活用した「おやつひもの」

鯛めしの素には主に身の部分を多く使用しているため、硬い骨や頭部はどうしてもロスになってしまったそう。それをうまく加工したのが「おやつひもの」。鯛の骨ごと加工することで廃棄部分を大幅に減らすことに成功しました。こちらはその名の通り、補食として手軽に栄養補給してもらうのが目的だそうです。

補食としても活躍する「おやつひもの」

加工品の開発が生産現場の問題解決、災害への備えにも

橋本さんは今回の取り組みを通して「ロスが減ったことで資源率や自給率の増加につながる。こういった加工品が増えることで生産現場が抱える問題の解決に少しでも寄与できるのでは」と考えています。さらに自分の生産物が防災食、備蓄食になり得るという新たな可能性も見いだせたようでした。

廃棄を限りなく少なくしながら生産物をうまく加工し、なおかつ被災地での支援活動で役立てられたという経験を通して、橋本さんの取り組みの幅がさらに広がりました。真鯛の養殖だけでなく、ゲストハウスや体験プログラムの運営、加工品の開発など、チャレンジを続けている橋本さん。「今もこれからも、生産者として命を支えるモノを作り続ける」というその言葉通り、今後も私達に新しい価値や経験を提供してくれるはずです。

橋本さん、ありがとうございました

(取材/執筆:PR 西宮)


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