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「日本のアマルフィ」から海の暮らし・文化を未来につなぐ—漁師 池田佳祐さん—

JR和歌山駅から車で約20分、南紀白浜空港からは高速道路で1時間半ほどで到着する小さな港町。

複数の漁船が並ぶ漁港

雑賀崎(さいかざき)は、その景観美から「日本のアマルフィ」とも呼ばれています。
かつて漁業で発展したこの地は、多くの地方の町村と同じように、人口の減少、高齢化、空き家の増加、後継者不足などの深刻な問題を抱えています。

そんな状況に危機感を覚え、生まれ育った町をもう一度活気あるものにしたいと立ち上がったのが池田佳祐さん
漁師として海に出ながら、新たに始めたのが古民家を改装した「新七屋」(しんちや)での民泊サービス。飲食業経験のある奥様が腕を振るう食堂も今年3月にオープンしたそう。

海辺の暮らしを体験できる宿「新七屋」

今回は過疎化する地域の活性化を目指し、次の世代へと漁村文化を繋ぐために奮闘する池田佳祐さんの取り組みについてご紹介します。


脱サラ後、Uターンで漁師になった池田さん

代々漁師を営む家系に生まれた池田さん。幼い頃から、海は身近なものだったそう。
そんな池田さんも雑賀崎を離れ、大学卒業後は医療系ベンチャーの営業職として、全国を駆け回る日々を過ごします。
そんな毎日を送る中で、帰省した際にお父様から言われた「海のことは気にせんでええ」という言葉が、池田さんを再び海へと導くことになります。

元々、お父様は池田さんが漁師になることには反対だったと言います。理由は「儲からない」から。
地元に戻って漁業を継ぐ意思を伝えるも、まったく聞き入れてもらえなかったのだそう。
代々繋いできた営みをここで終わらせていいのか、収入を増やす方法はないのか…書籍やデータを徹底的に調べ上げ、お父様にパワーポイントを使ってプレゼン。その情熱が伝わったのか、2年にも渡る説得の末、ようやく船に乗ることを許していただいたのだとか。

このエピソードだけでも池田さんの行動力、粘り強さがよく分かります。
漁業、そして地元を盛り上げたいという池田さんの熱い思いは、そこで暮らす方々にとっても大きな力になっていくはずです。


4月上旬、社内の有志数名が池田さんのもとを訪れました。

漁船の前で池田さんと記念撮影

池田さんの営む宿に宿泊し、漁師が水揚げ後の魚を漁港で直に販売するという珍しいスタイルの市場を見学したり、地域のお店を訪問したり…地元の方々と交流しながら、昼間は各自リモートワークにて業務を行う雑賀崎でのワーケーション。

漁師が水揚げした魚介類は漁港で直販される
斜面に住宅が立ち並び、階段や坂道が多いのが特徴
これもまた「日本のアマルフィ」と呼ばれる理由の1つ

実際に現地に足を運び、海辺の暮らしを体験することで多くの気づきを得たようです。一部感想をご紹介します。

生産者さんのリアルな現場の声を聞くと、普段の仕事のモチベーションが上がる。まだまだ一次産業については知識が浅薄なので、実際に会って話を聞くことは学びになった。
地域特性を知るためには、百聞は一見に如かずだと思った。歩いて現場を知り、地元の人と話すことは大切ですね。

池田さんは、事業を少しずつ広げていく堅実さと、夢を追いかける野心の両方を持ち合わせている方だと感じた。今後の展望についても生き生きと話してくださって、心から応援したいと思った。

その土地の景色を眺め、その場所の空気を吸いながら、その土地の食べ物を食べる。そこで魚を捕った人・農作物を育てた人と話し、一緒に過ごす時間が加わることで、地場産品を食す楽しさが倍増すると思った。

漁師さんから直接魚のさばき方を教えてもらい、調理もしました

池田さんの明確な志と行動力にただ感動するしかなかった。こういう生産者を抱える我々は、何をすべきなのか考えなければいけない。

スーパーでは便利な食品を手に取ることが多いが、漁師さんがその日とれた鮮魚を送ってくれたら手間がかかっても調理の時間を作るはず。
お腹を満たすための食ではなく、生涯の勉強や趣味の一つとしてポケマルを使っていきたいなと思った。

漁港には大阪や奈良などから訪れる人が多い

現地を訪れることでその地を知り、自分とは縁遠かった場所が以前よりも身近なものになっていきます。
池田さんの取り組みを通して多くの方々が雑賀崎に興味を持っていただけるよう、微力ながら私たちも引き続きその手助けができたらと感じました。

個人店が多い雑賀崎  お店巡りも楽しそうです

前述した通り、漁師の仕事に加えて宿泊業も開始した池田さん。
池田さんが思い描くこれからのこと、地元に対する思いなど、いくつかお話を聞かせていただきました。

Q 「新七屋」での民泊サービスを始めて、周囲からの反響、何か変化などはありましたか?

まだそこまで大きなうねりにはなっていませんが、新七屋が出来てから、お客様が地域のおばちゃんと話したり、漁港の直接販売に来てくれたり、地域外の人と内の人々の繋がりができ始めています。
同じように漁家民泊をしてくれる漁師さんが増えてくれると、もっと面白い町になると思います。

Q 池田さんの考える雑賀崎の魅力は?

現在は、ほとんどの漁師が小型底曳網(そこびきあみ)漁業を営んでいますが、古くは江戸時代から昭和の始め頃まで、一本釣りで全国に名を馳せた漁師集団だったのです。
海をひらいていった伝説の漁師達の血が今の漁師たちにも流れていて、海と共に生きてきた人々の痕跡や、文化、生活の知恵が今も町中や人々の中に感じられるところだと思います。

池田さんの憧れでもある一本釣りの漁師達
右上が池田さんの曽祖父だそう

Q 今後の目標は何かありますか?

まずは一人前の漁師になることです。
一人前の漁師になったらイタリアの漁師がやっているペスカトゥーリズモ(漁業体験を含めた観光)の雑賀崎版をやりたいと思っています。最終的には、僕のように雑賀崎にUターンして漁師をしてくれる次の世代を増やしていきたいですね。

ペスカトゥーリズモ」とは、イタリアで実践されている漁村観光のこと。
漁船に乗り漁師の1日を体験したり、海の幸を味わったりするツーリスト向けの取り組みです。
ワーケーションに参加した弊社社員も、池田さんがペスカトゥーリズモについてエネルギッシュに語ってくださった姿が強く印象に残っているそうですよ。
雑賀崎観光の新しい形、私たちも今からとても楽しみです!

雑賀崎で捕れるエビはポケマルでも購入可能

池田さんの小型底引き漁船・健勝丸で捕れるのはタチウオ、マダイ、ヒラメなど様々。ポケマル上では簡単な調理でおいしくいただけるエビやイカを出品してくださっています。
景色の良さから移住する人も多いという、美しい港町・雑賀崎。そこでの暮らしを体験できる「新七屋」と合わせて、ぜひチェックしてみてくださいね。


関連リンク
◆生産者ページ
 池田佳祐 | 健勝丸
◆Fisherman’s Table & Stay 新七屋(しんちや)Instagram
   @shinchiya_saikazaki

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