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虫も殺さぬ顔をして

洗面所の白い壁に、丸々とした蝿が止まっていた。

ハエ叩き取りに行こうか、夫を呼ぼうか。
歯磨きしながら迷っていたけれど、どちらもやめた。

羽化したと思ったら、この寒さで動けないのだろうか。

そんなところを叩いたりしたら、彼の(オスなのか?)人生は、いや蠅生?は残念すぎないか。

お経をあげてる和尚さんが、巨大な筆みたいな箒みたいなやつで空を払うのって、アレ蠅を追い払ってるんでしょ?

ま、とにかく今日は殺生するのはやめた。

母がよく言っていた。

殺してもいいのはムカデだけだからねと。

ムカデはお釈迦様を刺したから、いいんだと。

そう言う母は、蠅なんてバンバン叩いていたし、夕方棒を持って外に行き、外灯の周りの蜘蛛の巣を絡め取って足で踏んでいた。
ティッシュでつかんだ虫も…。

そんな時はよく「虫も殺さないような顔してるけどね」と言ってニヤリと笑った。

いやいや、人を取って食いそうな顔よ?と突っ込みたかったけれど、それは最後まで言えなかった(笑)

そんなことを思い出すとき、親って自分の中に生きているなと思う。
別の言い方をすれば、似てるんだなと。

今日の蝿はやらずに済んだけれど、もう少し暖かくなり、文字どおり五月蝿くなると、私もバンバンやることになる、たぶん。

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