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大きなお金

最近のニュースは、東京オリパラをめぐる贈収賄や安倍総理の国葬にかかる経費など、庶民には想像もできないお金の話ばかり。
16億って給与から否応なく天引きされた税金なんだけどな。プンプン!

賄賂も葬儀費用も自分のお金じゃないから、右から左に動かすように使えるんだろうな。

家計なら数十万、仕事でも数百万を管理するだけでドキドキしてる私とはてんで違う。

7700万円って、物理的にどれくらいのカサなんだろう。
そんなことをぼんやり考えていて、ふと思い出したことがあった。


15年も前になるだろうか。
実家の母が、九州に住む叔父のところへ行くことになった。
田舎から高速バスで出てくる母が、新幹線改札までの経路がわからないというので、その案内のため私は出かけて行った。

バスターミナルで無事母を見つけ、新幹線口まで行ったのだが、まだ時間に余裕があるので地下のコメダ珈琲に入った。

最近明るくなったとは言え、私の年代にとって西口は少々恐いイメージがある。

駅地下のコメダはソファーも小さく、テーブルの下にきっちり足を揃えないとはみ出てしまう。
多少窮屈だったが、これから九州を旅する母は楽しそうで会話も弾んだ。

が、その途中で、斜め前に座る男性2人組が私の目に入った。
ひとりは片足を大きく通路に投げ出している。
(歩く人が困るでしょ、なんて思っても言えないお二人)

高級そうな腕時計と、喜平のネックレスだったかな?とにかく見ちゃいけないけど気になる存在だった。

そちらに背を向けている母からは見えないテーブル。
私にとっては母から少し右に視線をやるだけで、男性2人組の動きも話し声もわかる。
母の話が途中から上の空になりつつあった。

そしてついに、今も忘れないその時がくる。

ひとりの男性が、
「ほな、とりあえずこれで頼むわ」と言った。
男性の手でようやく掴めるほどの札束を、ドドンと2かたまりテーブルにのせるのが見えた。

え、えええ?それがコーヒー代じゃないことはわかったが、私の見た史上最大の札束だった。

受け取った男性は「おっ」みたいな短い返事をして、すっかり承知した感じで紙袋に押し込んでいた。

あのお金で頼まれたのは何だったんだろう、たまに思い出す。

高級車の代金だったのかな。
マンションか土地でも買うための手付金?
私にはそれくらいしか思いつかないんだけど。

母に、少し早いけどお弁当買う時間もいるからと言い、コメダを出ることにした。
まだその男性客は席にいたけれど、横を通るとき少しだけ足を引っ込めてくれた。

胸のざわつきは収まらないまま、母を新幹線の改札で見送った。
遠くで銃声が鳴るような気がして(得意の妄想)、ガクガクする膝のまま私はまた私鉄の駅へと向かった。

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