否。

 

急に静かになった。

誰もいないから。

否。

さっきまで 連絡を取ろうとしていた手。

 

今心が静かなのは 侵食されているから。

恐ろしく静かで、残酷で、抗う自分もいない。

 

もう、いない方が良い。

自分がいることで、誰かを救えただろうか。

否。誰かを傷つけずにいられただろうか。

 

必要ではない。

いない方が良い。

否、最初からいない方が良かった。

 

誰か傷つかなかった人がいただろうか。

 

気づかなかった。

今の今まで。

もう自分には自尊心のかけらもない。

だからこの人格に争う術がない。

救いを外に求めるしかなくなっていた。

 

誰かに救われて良い人間ではない。

救う価値のある人間でもない。

当然、誰も救うことなどできない。

 

自分のいない世界は、きっと平和だろう。

自分の起こす余計な波はない。

凪。

それはいつも

自分がいなくなった後に感じる。

 

何を求めて

今まで生きてきたのだろう。

もう 生きていたのが

とても昔のように感じる。

 

ただ いなくなりたくて

いなくなれなくて

 

朝目覚めないことを祈っていた。

 

愛されたかったのでも

愛したかったのでもない

 

否。

愛したかったし

愛されたかった。

 

愛したし

愛された。

 

ただ いつの間にか歪んでしまった。

元の形には戻れない。

 

笑って欲しかった。

ただ そのために 僕はいらなかった。

いてはいけなかった。

 

歪んだ形は

どこに収まることもできない。

 

ただ 苦痛を生み

苦悩を生み

歪み 歪ませていく

 

自分がいなければ

歪まなかったものたち。

きれいだったはずの世界。

 

自分が存在しない世界

歪みのない とてもきれいな世界。

凪。

 

僕はいつもそれを 外から見る

今度は どこから

 

否。

 

【蛇足】

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