小説同人誌の作り方

第28回文学フリマ東京に出店した時の経験から、小説同人誌を出すために何をしてきたかを書いていきます。

①イベント申し込み

まずは申し込みます。

本を完成させる自信があってもなくても申し込みます。

〆切と本を売る場を作ることで、強制的に自分を動かします。俗に言う「締め切り駆動開発」です。

②スケジューリング

参加を決めたのが1月末、イベントが5月のGW、印刷所の締切が4月末。

作成に使える期間はざっと3ヶ月。

プロット、執筆、修正で1ヶ月づつ、合間合間で表紙や装丁、印刷所のことをやっていくことにします。

③本の作成

・プロット

2月。構想と絵コンテと台本と役者、ロケ地を決めていく作業をやります。

今回の場合は最初の構想が「思ったより面白くならない……」というわけで頓挫し、当初の予定よりプロットにかけられる時間が大幅に減ってしまったことが後の悲劇に。


・執筆

3月。何はともあれ、プロットの粗さに不安があるとはいえ、そろそろ執筆を始めないと締切に間に合わない可能性が高いので、毎日時間を取って書いていきます。平日1時間、休日3時間、1000文字/時で書く予定で作っていきました……が。

全く持って予定通りに進まない。

 ・プロットが荒い

 ・考え込んでしまって書くだけに集中できない

 ・描写が思いつかない

 ・調子にムラがある

 ・(もしかすると)タイピングが遅い

等の理由で、1000文字に届かないことも多かったです。

プロットで話の前後がどうなるかはわかっているはずで、辻褄は最悪修正フェーズで直せるはず。

そう信じて、手が止まったら他の書けそうなシーンから作ってました。


・修正

4月。何はともあれ、初稿が完成したので、試しに文庫本の版面に作った本文を流し込みます。

1月に抱いた理想とのギャップ(ページ数とか文体とか)が凄惨すぎて一瞬目の前が真っ暗になりますが、すぐに気を持ち直して修正作業に入ります。

縦書きにした本文を都度印刷して赤ペンを入れ、それを元にPC上で修正します。

1.全体のバランス

ページ数、または文字数を横軸に、起伏を縦軸にしてざっくりしたグラフを作ります。

「このシーン薄くない?」と思った箇所を加筆・修正し、全体的なバランスを調整します。

2.表現・台詞の修正

例え方や台詞回し、描写を改善します。

3.誤字脱字、縦書きにしたときのレイアウト

文庫本の版面に再度本文を流し込み、初稿よりはかなり良くなったことに胸を撫で下ろしつつ、誤字脱字、文章の塊としての見栄えを整えていきます。

④書籍の作成

執筆と並行して、書籍として本を作る作業を進めていきます。朝は執筆、夜は印刷会社と仕様の選定、というように進めていました。

ざっと以下のような作業があります。

 ・表紙イラスト作成依頼

 ・表紙デザイン作成

 ・タイトル決め

 ・タイトルロゴ作成

 ・印刷所探し

 ・仕様決め

これらを修正作業と同時に全部やろうとしていたら確実に大変なことになっていたので、可能な作業は出来るだけ前倒しで実施しておいて良かったと思っています。少しだけ本文作成の息抜きにもなりました。

⑤入稿

印刷会社によってシステムが複雑なので、最終締切の一週間前入稿を目処に入稿しました。

表紙作成に不慣れなので、印刷所からのNGが3個ほど出ました。それを直す時間が余裕で確保出来たので、早めの入稿にして良かったと思っています。

⑥イベント準備

印刷所からOKが貰えたら、あとは本が届くまで出来ることは……あります。ありまくりです。

 ・ポスター作成

 ・値札作成

 ・お品書き作成

 ・敷布新調

 ・ポスタースタンド作成

 ・お釣りを用意

 ・ツイッターで宣伝

その他諸々。何もかもを常時やっている本屋の偉大さがよくわかりました。

余裕があればコピ本を追加で作りたかった……。

⑦イベント当日

設営します。布を敷き、ポスターを掲げ、ディスプレイ台を置きます。

届いた本に狂喜乱舞しつつ、机の上に並べます。

準備完了。あとは開場するのを待つ以外、本当に出来ることは何もありません。

著者の知名度、事前の宣伝、ブースの目に止まりやすさ、本の外見の魅力等に応じてお客さんが来ます。
来たお客さんが実際の本の面白さ、文体に応じて購入して下さいます。

来てくださったお客様を歓待しつつ、最後まで自分も楽しみます。

◆良かったこと

・最初に決めたスケジュール通りに作ったこと

「まだ完璧じゃないし……」と言っても制作期間は伸びないので、諦めて前に進みました。結果的にはそれでギリギリくらいだったので、予定遵守での進行にして良かったと思ってます。

・わかりやすさ重視

お品書きや裏表紙にあらすじを載せたり、表紙イラストを依頼したりタイトルでキャラを表したり、内容がわかりやすくするための工夫は色々とありました。初めての人で買ってくださる人が結構いたのはそのおかげかなと思ってます。

イラストを描いてくれた友人には本当に感謝しかありません。

◆悪かったこと

・プロットが荒い上に薄い

制作期間の短さもあったけれども、それにしても大雑把な作りで、書く時に迷うことが多かったです。

あと、そもそも長編向きの作りになっていなかった上に、それに気がついたのが4月というのが致命的でした。ssに慣れてる人間が急に長編を書こうとするとこうなるんだな、ということがよくわかりました。

・執筆速度

執筆の項でも書いたやつです。執筆に1時間取る他に、明日書く箇所のプロットに不明点がないか確認したり、調べ直したりする作業をやる時間が30分だけでも確保できていたら良かったのかなーと。

あとバッファがありませんでした。

・宣伝

 ・始める時期が遅い
 ・情報が少ない
 ・伝える相手がそう多くない

の三拍子揃ってしまっていました。

時期については、プロット出来たあたりから……それどころか文フリに出すと決めたあたりから、積極的に宣伝をし始めてしまっても良かった気がします。

情報量と伝える相手については、模索中で勉強中です。

ただ、常日頃からツイッターで作品を発信して、定期的に新作を上げて、著者の"私"を宣伝する必要はありそうだなーと思いました。

他のアイデアあったら、是非ご教授願いたいです。

最後に

ただ文章を作って現地に行けば売れるというわけではないので、大変なことも多かったですが、それでも出来上がった本を手に取る喜びは素晴らしいものがありました。

そして、そんな大事な自分の子が、目の前で選ばれて買われていく喜び。こればかりはイベントに参加しないと得られない幸せです。

作ることが好きな諸氏におかれましては、きっと楽しいことがたくさんあると思います。みんなも小説本を作ろう!

蛇足 ページ数と文字数と厚みの関係の話

書店に並ぶ一般的な文庫本(300p)は一冊で大体10万字。書籍用のクリーム色の薄い紙で製本してもらうと、1.5cm程度の厚みの文庫本になります。

今回の私のスケジュール(平日1時間、休日3時間、1000文字/時、執筆期間は1ヶ月)で書ける文字数は、順当にいったとして4.8万文字。8mm厚の文庫本になります。

参考になれば幸いです。

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