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#22 記録、記憶。

私と恋人が付き合う前の話。
クラス内に恋人のことが好きな人がいた。
恋人に告白して、振られて、気まずくなって。

程なくして、私と恋人が付き合い始めた。
その人に伝わるのも時間の問題で。
気が付いたら、私が無視されるように、嫌な態度を取られるようになった。

「気にしてない」「好きな人を取られたんだから仕方がない」なんて思いこんで、傷ついているのに傷ついていないふりをした。それでもやっぱり苦しくて、涙を流すこともあったし、恋人に愚痴ってしまうこともあった。愚痴を言われるたびに申し訳なさそうな顔をする恋人がずっと忘れられない。

普段は、個人課題だしグループ課題でも違うグループだったから特に話す機会もなくて、そんなに苦しくはなかった。でも、この春から、同じプロジェクトをやることになった。その人が先にメンバーに決まっていて、私は後から参加することになったのだけど、断ることだってできた、もちろん。それでも断らなかったのは、その人と話せるようになる希望を捨てたくなかったから。なんて我儘なんだろう。嫌われているのをわかっていて、無理に近づいて。でも、諦められなかった。

プロジェクトの初回ミーティング。1度も合わせてもらえない目に、会話に入れてもらえないことに、次第に悪くなる雰囲気に、他のメンバーに気を遣わせてしまっていることに、気づいていて、無視をした。
終わってから、メンバーの仲のいい子に、「大丈夫?」って心配された。いつも仲良くしてくれている人達が集まってきて、心配そうな顔をするから、ああ、無理かもしれない、と思った。「大丈夫!」ってはね返して、その場から離れようと思ったのに。やっぱり恋人には勝てない。私のことが大切で、心配だと嫌でもわかるような「大丈夫?」には勝てないのだ。涙が溢れそうだった。私を独りにしないように、お昼も誘ってくれて、それでいて普段通りに接してくれた。

普段なら、たかだか1回のミーティングでこんなダメになる私ではない。

なぜこの日、私の情緒がおかしかったのか。
理由はひとつ。このままのクラスの雰囲気ではよくないと、恋人とその人が話し合いをする日だったから。
恋人が傷ついてほしくないから行かせたくない気持ちも、行って思ってることをちゃんと話してきてほしい気持ちもあった。
不安で心配で私が押しつぶされそうだった。
それでも、話が終わるのを待ちたい、待って会ってから今日を終わりにしたいと決めたのは他でもない私。そんな私の我儘を受け入れてくれて、待っている間私を独りにしないようにって友達に頼んでくれていて。本当にびっくりするくらい勝てない。

終わって会った瞬間に抱きしめてくれて、「つらい思いさせてごめん。」と言ってくれて。恋人だって十分つらい思いしたのに。私が傷つくことが嫌で、私を守ることを優先してくれた。その人が私にわざとそういう態度を取っていたこと、謝りたいと言っていることも伝えてくれた。

恋人が向き合って出した結論を無駄にしないためにも、その人が私に向き合おうとしてくれているなら、私は彼女とちゃんと向き合いたい。もちろん傷つけられたことは忘れないと思う。でもそれを一生許せないような私ではない。

私はもう十分すぎるくらい大切な人たちに囲まれている。
いつだって私の味方でいてくれるような人たち。
守られているばかりの私でいたくないから、ちょっとくらい守れるような私になりたいから。今日という日を終えて、また強くなりたいと思う。

これは前向きな記録。
明日からはまた笑顔の私でいたい。


書いていたら、恋人に会いたくなって、抱きしめてもらいたくなったのは言うまでもない。ということも忘れずに書き留めておこう。


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