#DontBeSilentとかやってんじゃねーよと思った話。【森喜朗さんの一件について思うこと｜その1】

　東京五輪パラリンピック大会組織委員会森会長の女性蔑視発言が話題を呼んでいる。非難轟轟、世間に味方はほぼいないのではないだろうか。

私も、もちろん「ろくでもないクソじじい」だと思った。中学時代に読んだ夏目漱石やそこらの文豪の作品には「女なのでわからない、女なのでできない」というような発言は腐るほど出てきたけれど、そんな訳がないことはとっくのとうに知れている。

けれど、SNSで「#DontBeSilent」のハッシュタグが出回っている、しかも一般人だけでなく大使館の公式アカウントで発されているという状況を見て、冷静に事態を見るようになった。

まず、性差による優劣判断は時代にそぐわない

立場の上下という差が出てきたのはまた話が別だが、確かに身体性能の関係で男女でできることとできないことがあるのは事実だ。女性の方が、できない項目が多かったのではないだろうか。重いものが持てないとか、高いところのものが取れない、とか。

ただ、何せ人間の技術は進歩している。そのおかげで「できないこと」は問題にならなくなってきた。槍持ってマンモスでも追いかける時代ならまだしも、人間の生産活動は技術の進歩によりほぼ性差なく行える時代なのだ（PCのキーボード打つなんて、別にそんなに力のいることではないし）。性差がなくなった以上、偉いとか偉くないとか、優れているとか劣っているとか、その判断が「男」か「女」かでなされることはとってもナンセンスだ。

確かに「女々しい」という言葉があるくらいだから、多少は思考回路が違うところがあるのかもしれない。けれど、「だから女はダメなんだ」というような言い方ができるほどの格差はなくなっているはずなのだ。

森さん、よくないよ。まったくもう。

なんでこんなことになっちゃったのだろうか

確かに、「ジェンダー平等を実現しよう」というのはSDGsの中に入っている。森さんの発言に対して多方面から批判の声が上がることは間違っていない。けれど、「男尊女卑」というのも文化の一つであって、そう簡単に否定してよいものなのか？と思う側面もある。歴史的に見てそうならざるを得ない社会構造があったのは確かなのではないだろうか。

特に、日本の場合は命を懸けて戦う「武士」がいた時代があった。戦国時代や幕末の動乱期のことを考えれば、武士というお仕事も、きっと女性には難しかったのかもしれない。それに、オフェンスがいればディフェンスも必要なわけで、サポーターも必要なわけで。家や家族を守るという立派な使命を、奥方様たちは果たしてこられたことだろう。

役割分担があるところまではいいのだけれど、そこで「偉さ」が絡んできたのがよくなかった。「あなたたちを守るために、危ないところで命掛けで戦ってます！」と男である武士に言われてしまったら、そりゃあんたの方が偉いよと思ってしまう。だから、とてもとても長い間女性たちは誰も文句言わなかったのだろう。

しかも、武士という職業がなくなってからも、ずーっとずーっと「武士道」の精神は評価されてきた。今だって、「侍ジャパン」とか言っているし、それは今なお日本の誇りであることは間違いではない。ただ、多分、「武士＝男」という定義と「だから女はダメなんだ」的な思考も一緒に受け継いできちゃったのがよくなかった。

それでも、何百年もかけて蓄積してきた価値観はそう簡単に変わらない。良いところも悪いところも、全部ひっくるめたそれが「文化」というものなのではなかろうか。そして、それが森さんのような先輩方の価値観をつくってきたのだろう。

文句をいう筋合いは、ないはず。

森さんの発言が日本の文化を背景に生まれたものだったのなら、そこに良し悪しの評価をして、攻撃をする権利なんて我々にはないと思う。

多様性の議論って、どこへ行ってしまったんだろう。人道性の議論ってとても難しいはずなのに、誰かの物差しで悪いと決めつけてしまっていいのだろうか。動植物の多様性は守るけど、人間の多様性は認めないなんて、そんなことになっていやしないか。

やっていることも考え方も違うから人間って面白いし、面白いなっていう客観的な視点を持っていないとその面白い世界が消えてしまう。

森さんの発言を問題視することは構わないし、それは正しいこと。だけど、ハッシュタグまで作って拡散して、一方的に責め立てるのはお門違いだ。

でも、ダメなものはダメよ

一緒になって責めずにこういう風に思えるのは、令和を生きる平成生まれの現代っ子だからなのも重々承知している。女だから何かを諦めた経験も、軽んじられた経験もない。むしろ、女であるから甘やかされる世界を生きている。

ので、怒っている人たちを怒る権利はないのです。いやー、めんどくさいですね、世の中って。

それに、「マンモス追いかけていた時代」はもう存在しないから何言ってもいいけれど、狩猟採集の文化は誇るべきものなので。決して優劣付けるべきでないのも重々承知だ。

何はともあれ、性差別によって誰かが悲しむということは明白だ。そもそも性別を男と女で分けることそのもので傷ついて、苦しい思いをしている人がたくさんいる。

森さんはじめ、「だから女はダメなんだ」的な考えを持つ方々には今一度考え直していただきたい。