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2022.07.28

吉祥寺駅までバスに乗ってよく向かったものだ。
3年ほど前に取り壊されてしまった学習塾へ行くために、英単語帳を開きながら、毎日乗っていた。
なんでもないいつも通っている道が、早いスピードで横滑りしていくのを見ると映画を見ているような気分になる。自分が主人公のような気持ちになる。道を歩く人、道か見える店の店主、走る犬、全てエキストラのようだ。

その後ろで流れる、吉澤嘉代子のえらばれし子供たちの密話を、いつもは使わない無線のイヤホンで聞くとこんなに沢山の音が使われていたんだと感心した。
そのままiPhoneはソングバーズの2076を選んだ。本当は私がほんの前に作ったプレイリストのまま流れているだけだが。バスの中は音楽を聞くのに適しているなあと感じた。電車よりも、散歩中よりも、なんて感傷的な日なのだと、自分が情けなくてそれでいてそんな自分が愛せる気がする。

When I Was Your Manを聴きながら、アメリカではまだBruno Marsは流行っているのか気になった。ちょっと海を超えただけで、流行も言葉もわかんなくなってしまうのはなんだか少し寂しい。
私はアメリカにコンプレックスがある。戦争に負けてから今まで何も変わらず、政治でも文化でも芸術でも最先端はアメリカだ、と勝手に思っている。私がたとえアメリカへ行って英語を喋れるようになったとしても、オレゴンでであったハンサムな外国人と結婚して国籍を変えたとしてもアメリカ人にはなれない。今まで吸ってきた日本の空気と触れ合った日本人が、私を骨の髄まで日本人にしてしまっている。
テレビ番組もアメリカから帰ってきた芸能人はちやほやする。日本という国がコンプレックスの塊だから。敗戦した時から、いや、戦争を始めた瞬間から私たちの国は呪われた土地になったんだと感じる。もっと自由にいたいのに自由が怖い、誰かのモノマネばかり、これが日本人。


バスが止まった。終点だ。
まだ大丈夫だと、どうにか生きるために今日もアップリンクのネオンサインを探した。
イヤホンからLAST ALLIANCEの疾走が流れていたが、私はabcdefuに曲を変えた。

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