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1/7 キュビズム展

上野・国立西洋美術館で開催されている、キュビズム展に行った。

キュビズムがどういった思想から生まれた技法なのか、ピカソの名前くらいしか知らないわたしにとっては勉強不足どころの話ではない。何も知らなかった。

写真撮影可の展示作品もたくさんあったが、1枚も写真を撮らなかった(撮れなかった)ので、記憶が薄れない内に記録しておこうと思う。



セザンヌという画家がいる。
その人が1906年に死去し、遺された絵を大回顧展として展示したのが1907年。
その大回顧展でセザンヌが遺した絵に影響され、当時19歳でパリに来たピカソと、ジョルジュ・ブラックの2人が1915年までに描いた作品たち。
洗濯船とよばれる集合住宅で、そのあとは蜂の巣と呼ばれる八角形の集合住宅で、他の画家たちにも大いに影響を与えた。キュビズムはそうやって生まれて、広がり、進化していったということらしい。

ドイツの画商が目をつけて、広めていった。
が、一般大衆受けはあまりよくなく、さらに1915年には第一次世界大戦で徴兵されていった画家たちもいた。
パリで描いていたが元々ドイツの画商が広めた背景があったため、ピカソたちは苦い思いをしたらしい。


このざっくり歴史は展示の解説表記と音声ガイドの記憶を頼りに書いている。わたしがこの展示を観て驚いたのはその制作期間の短さと、その中で多数発表された作品群の完成度の高さだった。

ピカソの絵って、何が描いてあるのか今まで分からなかった。
記憶にあるのは角ばった線、鮮やかすぎる色使い、荒い塗り、尖った細い目の顔。

ブラックと2人、そこに至るまでの道筋を試行錯誤し、磨かれていく技術と新しく取り入れられる技法のバランスを常に探して、きっと楽しい日々だっただろうと想像できるような作品たち。
こうやって道筋を辿れば、寄り添うことができるんだという驚きがあった。
新しい表現のために、新しい絵のために、何を考えて、悩んで、描くものをどう見て研究し、どう見せたかったのかを理解したいと思った。


ジョルジュ・ブラック『大きな裸婦』(1907冬-1908/6)
見た瞬間からものすごいエネルギーで目を奪われた。恐ろしくパワーのある作品だった。
力強さ、筆の運び、色のバランス、形の捉え方、描く視点。それらに圧倒されて、ずっと見ていたいと思うけれど、こっちの体力もじりじりすり減る。
写真を撮り損ねたのはこの絵に夢中になりすぎて、撮る考えがぶっ飛んだから。

ロベール・ドローネー『パリ市』(1910-1912)
パリの美術館、ポンピドゥセンターから日本初来日したという、幅4m×高さ3m近い巨大な絵。
馬鹿みたいな感想で言うと、すっごい綺麗な絵。
引きで全景を見れば、明るい色使いで、3人の人間が青空の下で踊るように手を取っている。当時作られたばかりだというエッフェル塔が水面に反射するようにさまざまな角度から描かれている。遠景には白い壁面の建物もあって、足元には小さい花もほころんでいる。
近くで寄って見ると、モザイクのように細かく区切られた面の中をグラデーションで色が移り変わり、面ごとの色の集合体が作られる。その隣の面はまたグラデーションで対比になるように色が置かれていく。このグラデーションの描き方が天才的に綺麗で、筆致が揃っていて、調和している。


上記2作品は、キュビズム展のHPで写真を見ることができる。見てほしい。

もう1作品紹介するが、これはHPには載っていないので、是非会場(〜1/28まで)で見てくれたらと思う。


アメデ・オザンファン『食器棚』(1925)
暗い背景色に、素材そのものの色なのか、当たっている照明の色なのか、ぼんやりと光るように、でもしっかりとした存在感で描かれている、単純化された食器たち。
影と光を描きわけて立体感がある、というわけではないのに奥行きと質感を感じる。
棚を覗き込んだ時なのか、暗闇に浮かび上がるように描かれた食器たちは整頓されているわけじゃないのに、隙もなく完成されている構図だと感じた。


あと印象的だったのは、「動き」そのものを一枚に閉じ込めたような描き方だった。
「立方体(キューブ)」のようだと言われたブラックの風景画から、キュビズムという名前がつけられたらしい。立体を解体して平面で再構築する、その行為自体に「動き」がある気がする。
二次元の四角のキャンバスの静止画なのに動いているように、動画をカットで切り分けてレイヤーを重ねたようにも見える。
この気づきはとても面白いと思った。


明かり・照明のこと、構成・切り取り方、画角のこと、色・グラデーション、筆致のこと。
初めて触れて吸収しきれずあふれて苦しかったものが、文章にまとめて整理して少し染み込んできたようにも思うし、こぼした分がもう二度と戻ってこないようにも思う。

こんな機会を作ってくれた国立西洋美術館、建築物としても本当に素敵でかっこよくて、建物自体も見て楽しいし最高なので行ってください。

わたしは次の日16時まで寝込んだよ。



終わりです。

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