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個人的年間ベストアクト2023


何やかんやバタバタしてましてちょいと間が空いてしまいましたが、まだまだ続く年間ベスト企画。今回はライブのお話。2023年は(フェスを日数ではなくイベント単位で「1本」と数えるとするならば)1年間でトータル23本のライブに行きまして。

この数字だけ見ると、正直「思ったより少なかったな」と。実際コロナ禍から明けきってない2022年は26本行ってたので、それより少なかったのは自分でも意外でした。

まあその時は次いつまた「第●波」が来るかわかったもんじゃないんで、結構無理してというか「行ける時に行っとかないと」という思いも強かったんですよね。
 

そうは言っても、フェス行ったらほとんどの時間はライブ見てる模範的な観客なんで、フジロックで言えば(今改めて数え直したら)2023年は3日間で52アクト見ていた(笑)。

僕のツイートとかご覧になってる方はよくご存知かと思いますが、フジに関しては毎日15アクトくらいはノルマ的に見たいと思ってるので、マジでそれくらいが平常運転なんです。

とは言え今年はさすがにライブ見すぎてたんで、3日目の深夜あたりはほとんど記憶に残ってないものもチラホラ。写真や動画等の記録は残ってるんで間違いなく見てはいるんですが…。
 

そんなわけで、見たアーティストの数で言えば合計100組くらいは行ってるんで、おかげでベストテン決めるのも難儀するくらいいいライブにたくさん出会えた1年でした。

こっからはそんな2023年特に印象深かったライブをランキング形式でご紹介できればと。邦楽/洋楽分けずに、あくまで「自分がどれだけ心を揺さぶられたか」を基準に順位付けしてみました。よければお付き合いください。


個人的年間ベストアクト2023

別枠:V.A.「ザ・シティ・ポップ・クロニクル 林哲司の世界 in コンサート」(2023年11月5日 @東京国際フォーラム)

もともと3時間半で終わる予定が4時間20分まで延びたある意味「伝説のライブ」(笑)

 
まずは作詞家・林哲司の活動50周年を記念した“アニバーサリーコンサート”を。いきなりイレギュラーな感じで申し訳ないですが、それぞれ1~2曲しか歌ってないもんだからとりあえず別枠としてご紹介。
そもそも世代でも何でもないのにこれを見に行ったのは知り合いが出演してたからなんですけど、
日本のポップス史に名を残す作詞家の提供曲を計38曲、トータル4時間20分にわたってアーティストらが代わる代わる披露していく特大ボリュームのライブは見応え十分でした。

超豪華な出演者とバックバンド(ほとんどの時間今剛のギタープレイガン見してた笑)が集結したライブでしたが、ベストアクトはやっぱし上田正樹かな。
みんな大好き“悲しい色やね”はもう圧巻。あの「いじらしい」と言いたくなるタメた歌いまわしも堪らんかったし、バンドのアレンジも最高すぎた。思い出すだけでヨダレ出そうなレベル。
あとは寺尾聰も素晴らしかった。披露したのは“The Stolen Memories”だが、今思えばこれがあったから今剛率いる最強バンドで紅白出たんじゃないかと思うほど。結局この二人でチケ代15000円の元取れてしまった。


10位:Amaro Freitas(2023年7月8日 in Festival Fruezinho2023)

立川ステージガーデンは何かとオタク受けの悪いハコだが音は普通にいい

 
こっから本題。まずは「Festival Fruezihno 2023」の立川ステージガーデン公演で見たアマーロ・フレイタス。ブラジル出身の新進気鋭のピアニストなんですが、今回が初来日にしていきなりイベントのトリを務めるという。
この日はオーソドックスなトリオ編成だったんだけど、トリオそろって手数の多いアグレッシブな演奏の連続で。それでいて心地よく踊れる感じが見ていて超楽しかった。

とは言え、単に手数が多い演奏で押し通すだけでなく、ピアノの弦に物挟んでパーカッション的に弾いてみせたり、客に特定のキーでハミングさせた観客参加型のパフォーマンスしたり、見せ方も達者で。
そんな感じで掟などないかのようにフリーキーな演奏の連続は大いに感銘を受けました。やっぱジャズはこうでなくちゃ。お行儀よく座って見てるなんて耐えらんないよ。


9位:Durand Jones(2023年7月18日 @Billboard Live TOKYO)

Billboard Live Tokyoは行くたび「場違い感」を感じてしまう

 
続いて年間ベストアルバムでも紹介したドラン・ジョーンズ。散々「ライブを見たい」と喚きながら2022年のインディケーションズでの来日は見逃すなど縁に恵まれませんでしたが、念願のライブ参戦。
ビルボードでライブ見る時はいつもケチって一番上のカジュアルエリアで見てたんですけど、なぜかR指定席っていう1階席の超いいとこがあっさり取れてしまったので、かなり近くで見れて最高だった。

ポール・マッカートニー&ウイングスのカバーから始まったライブは、前半わりとポップというかスイートな歌い回しの曲が続いたんだけど、
ダニー・ハサウェイ“Someday We’ll All Be Free”のカバーでは現代アメリカに対するまっすぐな思いを伝えたり、全身で「ソウルの未来」を体現するような熱唱に感服。
一方で、昨年の日本ツアー中に母国の継母が亡くなったそうで。そんな辛い思いを経ての「今日こうして素晴らしい景色を見させてもらえたのはきっと彼女のおかげ」なんて言葉にはグッと来た。本編ラスト“Lord Have Mercy”はもう圧巻でした。

2ステ目だからか左手にサックスを、右手にレッドブル持って登場したのは笑ったけど、疲れを見せるどころか1ステ目で存分に温まってたようで、終始最高にエモーショナルな歌声聴かせてくれました。
そうそう、ライブ中に突然フロアに降りてきたかと思ったら、観客と握手しながら各フロアを練り歩くという「やしきたかじんスタイル」みたいなことやったり(笑)、人柄の良さがにじみ出てたのも良かった。


8位:The 1975(2023年4月24日 @東京ガーデンシアター)

お騒がせセレブは酒飲みながらライブします

 
来日のちょい前、ポッドキャスト番組で人種差別的なコントに嬉々として参加したとかで大バッシングに遭っていたThe1975のフロントマン、マシュー・ヒーリー。
その後、マレーシアのフェスではステージ上で調子こいた結果即刻ライブを中止させられ、ついには2024年3月でバンドとしての活動休止を宣言…と、つくづく「見といてよかった」と思ってしまう。

そもそも、来日公演の一般発売が開始されたタイミングで即完したはずなのに、件の問題が報じられてからは結構なリセールが出てまして。
そのタイミングで僕は「あんま興味無いけどせっかく現代屈指のポップバンドのライブ見れるんなら見ときたいな」と思って、完全にノリでチケット取ったんですね。
でも、そんなうがった目とかは一切なしで本当に見れてよかったと思えるすばらしいライブでした。

演奏自体はサポート4人もいたわりに難しいことは全然やってなくて、ただただ丁寧なアンサンブルで曲が紡がれていく。もっとコールドプレイみたいな大袈裟な感じなのかと思ったら意外なほど真っ当なサウンド。
「この時代に普通ここ行かんやろ」って思う80'sの香り漂う曲が多かったんだけど、そこを終始迷いなく突き進んでいく姿はまさに「王道」であり、大文字の「ロック」そのものといった感じ。
いつの世もポップであることが軽んじられがちな中で、「え?だってこれ美味いじゃん」となんの疑問も持たずに天然でやってる感じがするのが面白い。誰の口にも合いやすいロックの底力を見た。


7位:Cory Wong(2023年7月29日 in FUJI ROCK FESTIVAL 2023)

次の苗場はマジでFearless Flyersでオナシャス

 
毎度フジロックはひとり民族大移動状態で、知り合いからは「いつ見かけても走り回ってる」なんて言われる私。ヘッドライナー帯もタイムテーブルに合わせて転戦しがちですが、この人は見逃せなかった!
そんなわけでVulfpeck、The Fearless Flyersでお馴染みのギタリスト、コリー・ウォンの記念すべき初来日パフォーマンス。これがもうスゴかった!マイケル石橋言うところの「ファンキー小僧も涙モノ」です(笑)。

正直言うと、本人のソロもVulfpeckも近作がわりとポップス寄りなもんでそこまでノれてはおらず、むしろFearless Flyersの乾いたペケペケファンクにやられているもんで「どうかな〜」と思っていたんだが、
そんな思いを知ってか知らずか、VulfpeckもFearless Flyersもバッチリセットに組み込んでくれて、まさに初来日にしてオールタイムベスト的な選曲で来てくれたのがうれしい限り。

ポップスだけでなく、近年メジャーシーンにおいて「ギターソロ」の価値が大いに揺らいでいる中で、
それこそAOR的な「80'sポップソング」におけるギターの佇まいを完璧にトレースしつつ、なおかつそれを2020年代の音としてバンドで再構築させる手腕は見事という他ない。
それでいて本人がやってるのは鋭く手数の多いチャカチャカ系カッティングばかりなのだからもう…。

そんな中で、本編終盤の“Assassin”とアンコールの“Ketosis”は個人的ハイライト。ホーン隊のバケモノっぷりにも終始唖然でした。
まあなんだ、僕がどれだけ言葉を尽くそうが、Dr.ファンクシッテルーさんのブログには情報、熱とも到底敵わないので、細かいことは全部こちらでご参照ください(笑)。


6位:Fishmans(2023年10月24日 @Zepp DiverCity)

ポスターとか撮ってなかったのでパスの写真を(笑)

 
ここでようやくの邦楽勢。私にとって永遠のNo.1バンド・フィッシュマンズの7年ぶりとなる東名阪ツアーの東京公演。
昨年は「Wind Parade」でのライブも現地で見たし、もはや2010年代以降に関東圏でやったライブはほぼ全部見てるんですよ。
(唯一見逃したのがよりによってスカパラとの対バンで、サプライズゲストにオザケン出たやつ。悔やんでも悔やみきれない笑)

極めつけは2022年にリキッドでやった「History of Fishmans」に2日とも行き、映画も仕事がらみで試写と映画館で計5回見てしまい、完全にトキシックなファンになってしまった。
そんなわけで、大体のセットや客演の予想はついていたし、「今の俺にとってもうサプライズはないだろう」とタカをくくってたら、とんでもない爆弾が二つも用意されてました…。

まず一つ目は“LONG SEASON”。今回のツアータイトルにもなっていたからやるのはわかってたけど、まさかあんなアレンジを加えてくるとは…。
そのアレンジというのが、昨年のBoiler RoomでDJのMall Grabがプレイして話題となった“LONG SEASON”の高速ミックスへのアンサーとして、何とそれを一部人力で再現してみせたのだ!これはアガった…。


そしてもう一つは、佐藤伸治存命時ですら一度もライブで披露したことのなかった“Pokka Pokka”を、まさかのGEZANマヒトゥ・ザ・ピーポーをボーカルに据えて披露したこと。
個人的にフィッシュマンズは『宇宙 日本 世田谷』から入ったもんで、このアルバム収録曲への思い入れは強いんだけど、
マヒトの楽曲への思わぬハマり具合も含めてちょっと感動してしまった。「まだまだフィッシュマンズは進化していく」、そんなことを感じさせられたのでした。


5位:Oscar Jerome(2023年5月27日 in GREENROOM FESTIVAL '23)

事務員みたいな七三ワイシャツ姿も素敵

 
続いてはオスカー・ジェローム。サウスロンドンを拠点にUKジャズシーンでその名を轟かせるギタリスト/シンガーソングライターですけども、これはもう「モノが違う」という他ない。
その日は正午からフェスを存分に楽しんでいたつもりだったんですけど、「マジでここまで何だったのか」というレベルのすさまじいグルーヴに唖然としてしまった。

本人によるギターに加えベース、ドラム、パーカッションという4人編成なんだけど、そんな最少人数でこのグルーヴを出せること自体意味がわからないというか。
クールだけどメロウで、それでいて踊れて聴き馴染みはひたすら良く…。曲もほぼ知らないニワカ状態で行っても一発でもってかれる達者なプレイ、サウンドにもうウットリ。

総じて見ていると、バンドメンバーは本当にシンプルなビートを演奏してるだけなんですよね。しかしそこに乗ってくるオスカー氏のプレイが圧倒的。飲まれたら最後、もう渦潮だよ(笑)。
フェスの短い時間でも存分にプレイで客を惹きつけ、黙らせ、そして踊らせた天才ギタリスト。そりゃ引く手あまたなのは当然ですわ。次は単独でちゃんと見たい!


4位:Arctic Monkeys(2023年3月12日 @東京ガーデンシアター)

髪型まで80'sロックスターみたいだったアレックスのセンスよ(笑)

 
続いてアークティック・モンキーズの単独。2000年代に中高大と学生時代を過ごしてきた身としては、いわゆる「ロックンロールリバイバル」以降のロックバンドが原体験になるんですけど、このバンドは結構特別で。
フェスに行きだした頃の2006年サマソニで、当時1st出したばかりの彼らを入場規制のMOUNTAIN STAGEでもみくちゃになりながら見ていたのは良き思い出。(翌年には史上最速、最年少でヘッドライナーに駆け上がった)

そんなわけで、1stからしっかり追っていて、なおかつ紆余曲折はありつつもしっかりプロップス保ったまま第一線で活躍し続けていて、日本も海外も評価がそんな乖離してないバンドを単独で見れるのは個人的に結構貴重。
それだけに思い入れも一入だったんですけど、変にレコ発的になり過ぎず1stから最新アルバムまでをほぼほぼキャリアを網羅したオールタイムベスト的選曲で最高でした。

正直新譜(というかここ2作のアルバム)の曲があまりライブ映えするタイプではなく、演奏的にもまだ仕上がってない感もあり、どうしても直近の曲で盛り上がりが落ち着き気味ではあったんだけど、
逆に2曲目に早くも持ってきた“Brianstorm”で「震度4~5ぐらいあるんじゃないか」って思うほどフロアが揺れる爆湧き具合にはシビれたし、
アレックスは昔「もう俺ギターロックなんかよう作らん」的なこと言ってたわりにガンガンファーストの曲やるし(しかもファーストの曲はサポート入れず4人だけで演奏するという)、みんなが聴きたい曲は全部やった感じ。

見ていて感じたのは、このバンド(ってかアレックス)がめちゃくちゃ「UK的なもの」を信じてるんだなってことで。
そう捉えてみると、初期のギターロック然とした楽曲からハードロック、ストリングス入れた映画音楽的なサウンドまで、一本筋が通ってた印象。
いろんな回り道しながら引き出しを増やし、背負わんでいいものまで背負い続けてきたこのバンドが、今自由にロックを鳴らしてることにグッと来た。その締めくくりが“505”からの“R U Mine?”とか完璧でしょう。


3位:Red Hot Chili Peppers(2023年2月19日 @東京ドーム)

年齢的なこともあろうが、アンコール込みでも105分は足りないって…

 
3位はレッチリ。僕はみんなほど熱狂的にレッチリを愛してきたわけでもないし、何なら生で見たのは2011年のサマソニ、2016年のフジのみ。しかもいずれも裏環境を優先しフル尺で見てないという。
(2011年はVillage People、2016年はKamasi Washington見てましたけど、今思い返してみてもそちらを優先したことにまったく後悔ないッス)
これがどういうことかと言うと、つまり僕はジョシュ・クリングホッファーがギターだった時代のレッチリしか生で見たことがないわけです。これは由々しき問題(笑)。

やっぱりレッチリを好きだという人は、2006年のフジしかり、2007年の東京ドームしかり、「ジョン・フルシアンテがいるレッチリ」をちゃんと見てるわけじゃないですか。
もちろん僕も映像では散々見てきましたけど、生で食らってない以上それはカウントに入らないですし。百聞は一見にしかず。
そんな中で決まった「あの4人」での来日公演、ダメ元でエントリーしたら年末進行で二徹して精根尽き果てた日に当選したんでマジで泣きそうになったよね(笑)。

冒頭のメンバー登場からの“Can't Stop”へなだれ込む展開だけで、何かもう胸いっぱいで。タイミング的にはコロナ5類移行前だったから、その時の大歓声を聞いて「俺たちの非日常」が本格的に戻ってきた感じがした。
そして誰もが待ち望んでいたものを、誰もが待ち望んでいた形で当たり前のように鳴らしてくれるという事実。ジョシュが悪いとかそういう話じゃなくて、やっぱり「この4人」でなければいけない理由しかなかった。
個人的ハイライトは音が良かった“Snow”や“Californication”、“Under The Bridge”に加えて、やると思ってなかった“Nobody Weird Like Me”あたりかな。

そんなに絶賛なのになぜ3位止まりなのかと言ったら、席次のLive Nationクオリティと音響に尽きる。久々のドームライブはS席だったのに普通に2階席スタンド、かつステージから一番遠いほぼ真っ正面という何ともな位置。
そこまで遠いとさすがに音もあんまし良くなくて、特にフリーの音が全然聴こえないことが度々あったのは結構なマイナスポイントだった。それでも、パフォーマンス自体は音響の悪さを補って余りあるものだった。
そして2024年も5月にまさかの東京ドーム2DAYSということで、一応先行抽選エントリーしますがどうなることやら…。


2位:佐野元春 & THE COYOTE BAND(2023年9月3日 @東京国際フォーラム)

リアルに会場の最後列だったの初めてでした

 
そしてここで来ました佐野元春。ライブ自体はCDJやらサマソニやらフェスでちょくちょく見ていたものの、ここに来てドハマりしたのは2022年にリリースした2枚のアルバムがデカくて。
中でも、今回のツアータイトルにもなっている『今、何処』はあまりにこの時代を的確射抜いた素晴らしい作品だった。そんなわけで、2022年のツアーからチケット争奪戦に参戦するもことごとく落選の憂き目に。
何度目かの正直でようやくこの日のチケットを取れたが、一般発売で取ったせいかまさかの2階席最後方というポジション。正直「マジかよ」となったが、まあ後ろに気兼ねなく見れるし悪くないかと思い直した。

肝心のライブですが、基本的にアルバム『今、何処』のリリースツアーという位置づけだったんでそこからの曲を中心に(ほぼほぼ全曲やったんじゃないかな?)、前作『ENTERTAINMENT!』からも美味しいとこ取り。
加えて2010年代以降の「THE COYOTE BAND」名義の作品群から、近年のライブで定番となっている曲(ライブ盤に収録されてる曲が多かったので恐らくそうかと)をバランスよく配置した盤石のセット。

コヨーテバンドも(ライブ時点で)18年目らしいですが、とにかく演奏が上手すぎる。手練れ揃いなんだから当然だけど、それこそ達郎さんのバンドのように音源を完璧に再現するような極めて精密な演奏には震えた。
加えて国際フォーラムの音響の素晴らしさよ。さっきも言いましたけど、今回2階席の正面最後方というステージから最も遠い席で。そんな場所にいながらすべての音が本当にクリアに、ハッキリと聴こえてくるんですよ。
だからこそ、バンドの隅々まで行き届いたパフォーマンスにしっかりと刮目できたのがうれしい。ドームの劣悪な音響と比較してこちらに軍配を上げてしまうのは仕方がないこと。

そんな「今」の佐野元春 & THE COYOTE BANDを存分に堪能できるセットで本編~アンコールを締め、ダブルアンコールの冒頭で佐野さんが語ったこの言葉にはシビれた…。

僕らは今、大瀧詠一も、PANTAも、(忌野)清志郎も、坂本龍一もいない時代に生きてる。個人的には、何かポツンとした感じ。彼らの新しい音楽を聴けないのはすごく残念です。でも僕はまだ、こうして続いています。
彼らが遺してくれたものを忘れないために、よかったら次のこの曲、一緒に歌ってください。

(※2023年1月6日、NHK BSにて放送の『佐野元春プレミアムライブ2023』よりコメント全文)

その言葉とともに披露されたのはなんと“サムデイ”!小松さんのフィルインだけでみんな大歓声ですよ(笑)。やってくれることは期待しつつも、フェスで見た時は一度も聴けなかったからイントロ鳴った瞬間爆泣きです。
佐野さんが盛んに観客に歌うように促すもんだから、当然みんな大合唱。普通なら隣のオッサンが大声で歌うなんて耐えられないとこだけど、この日限りはそれがすべて感動的な方向へ向かっていく。

からの、オーラスは“アンジェリーナ”。いやもう、そらそうでしょう(笑)。まさに「究極のファンサ」と言えるこの2曲で古参の皆様の魂ブチ上げてくれ、最高の大団円で幕を閉じました。
そんなホクホクな気持ちのままホールを出ようとした時、前を歩いていたまさに古参ファンと言えるオッサンが「最近の曲は政治的すぎてさぁ」なんてしょうもない(次元の低い)こと言ってて悲しかったな。
ただ、アーティスト側はどんどん進化していってるのに、客である自分の意識がそこに全く追いついてかなくて「昔のが好きだった」と言っちゃうことってよくあるよなと。人の振り見て我が振り直さねばと思った次第。


1位:eastern youth(2023年7月28日 in FUJI ROCK FESTIVAL 2023)

人生で上位3本に入るほど泣いたライブかも

 
そんな伝説級のライブが飛び交った2023年、僕が最も心を揺さぶられたのはフジロック初日のイースタンユースでした。意外?いやいや。2023年は彼らでしょう。
イースタン自体はフジだけでも何度も見てるし(2011年のライブは至高)、コロナ禍期間中も野音(ナンバガとの対バン)に閉館直前のSTUDIO CAST(カネコアヤノとの対バン)と絶妙なタイミングで見てこれたんだけど、
この日のライブはちょっと考えられないくらい良くて。間違いなくコロナ禍以降の、下手したら現体制になってからのベスト叩き出したんじゃないかってくらい素晴らしかった。もう最後泣きながら拳振り上げてたよ。

前見た時にも“夜明けの歌”始まりのライブはあったんだけど、やっぱりどう考えたって2023年は「コロナ禍からの夜明け」って話になってくるじゃないですか。そこで狙いすましたようにこの曲で来るんだからもう…。
この一曲で観客の気持ちを鷲掴みにしたかと思ったら、直後に“街の底”で畳み掛け、“おとぎの国”を挟んで“踵鳴る”→“男子畢生危機一髪”→“青すぎる空”→“素晴らしい世界”と怒涛の展開。

もう正気保てっていう方が無理な話になってる中、こんな言葉とともに披露された“ソンゲントジユウ”で、ここまで何とか耐えてきた涙がさめざめ出てきてしまった。

私は誰かに許されて、ここに立っているわけじゃございません。誰かに許しを得なくてはならない、そういう人生っていうのはあるんでしょうか。別に俺は許しなんて請わないからな。何をやっても。

コロナ禍でどれだけ僕らの「尊厳」と「自由」が蔑ろにされ、奪われてきたか。そんな3年間を経ての2023年夏に、この曲をこの場所、このテンションで歌うことのデカさたるや。

ここまで曲の話ばかりでしたけど、今回のライブをそれだけ特別視しているのはとにかく吉野寿のコンディションが素晴らしくて。
コロナ禍期間中のライブでは声の出力が明らかに落ちてる時があったんだけど、この日は本当に腹から声出してノドから血出るんじゃないかっていうほどの絶唱。
加えてレッドのギンッギンの音響。バンドの音を凝縮して塊を放出したような、とにかくバズーカみたいな音。フジはホワイトが一番音良いと思ってたから、レッドでここまでの爆発力をもたらす音はMogwai以来か。

そんな外音、演奏、選曲の三位一体で圧倒してきたこの日の締めくくりは、やっぱりこの曲“夏の日の午後”。この時の盛り上がりったらもうね。わざわざ言う必要もないでしょう。
2023年はイースタンにとっても「山下達郎が真っ先にフェイバリットに挙げたバンド」として記念すべき年になったわけですが(※「関ジャム」山下達郎特集内での本人発言)、
やっぱりコロナ禍のような「心の非常時」に一番必要なのはイースタンの音楽だったし、そこからもう一度動き出す時力をくれるのもまたイースタンの音楽だった。そんなことを再認識させられた名演でした。



はい、以上になります。思いが溢れすぎてしまい、ここまででトータルの文字数がとうとう10000字超えてしまいました(笑)。
締めの挨拶はほどほどに、最後に惜しくも選外となったライブを下記に羅列して終わります。ご清聴ありがとうございました。


・Brad Mehldau(2023年2月3日 @東京オペラシティ)
・bonobos(2023年3月5日 @日比谷野外大音楽堂)※解散ライブ
・Original Love(2023年4月29日 in Hyde Park Music Festival 2023)
・ムーンライダーズ(同上)
・ミツメ(2023年6月9日 @東京キネマ倶楽部)
・UA(2023年7月29日 in FUJI ROCK FESTIVAL 2023)
・B'z(2023年8月19日 @味の素スタジアム)
・A Month of Sundays(2023年8月20日 @新宿Marble)
・木村充揮(2023年9月24日 in 空飛ぶ音楽祭2023)
・吾妻光良 & Swingin' Boppers(同上)

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