「NO」と言う SATCサマンサ役キム・キャトラル不在の影響力
ニューヨークでキャリアウーマン4人組の恋愛模様を描くドラマ『セックス・アンド・ザ・シテ(SATC)』の新シーズン『And Just Like That(『SATC新章』)』に、サマンサ・ジョーンズの姿がないという違和感は半端なかったが、その理由を知り、釈然とした。
サマンサ役の女優キム・キャトラル(以後キム)には出演オファーがなかったとのことだが、それはキム自身がサマンサ役を続けたくないことを2016年から既に明確にしていたことが影響したようだ。
2017年に実現しなかった「劇場版SATC3」の台本にも問題があったという。
「ミランダの14歳の息子が、サマンサの猥褻画像を受け取り、迷惑する」というシーンが組み込まれていた。
紛れもない性犯罪である。
「サマンサというキャラクターにとって意味のある話だとは思えなかった」とキムはコメントした。
「あなたに対する一番大きい誤解はなんですか?」と聞かれたキム。
「私がSATCのサマンサではないことね」と答え、ジャーナリスト・スカヴラン(Skavlan)の番組で会場が一斉に沸いた。
国際的に問題になっている子どもへの性的表現の押し付けを拒否したキムは、本当の意味で「アダルト」「大人」である。
「NOと言うこと」
「NOと言うこと」についてキムがスピーチする動画があり、彼女の人間性がわかりやすく出ていると思ったので和訳した:
私の私生活やキャリアなど様々な場面での舵取りをする際に、とても大切にしていることについて共有したいと思います。
とても単純であると同時にとても複雑でもある言葉です。
その言葉は「No」です。
No(いいえ)、自分には無理です。
No(いやだ)、それはもう懲り懲り。
No(いや)、いじられてたまるか。
No(いいえ)、そのお給料ではお受けできません。
No(嫌です)、あたなのホテルの部屋でミーティングすることを断ります。
そして私が一番気に入っているセリフは:
No(嫌だ)、楽しくない状況に一秒たりともいたくない。
「イエス」と言うことで解放感を覚えることもありますが、「ノー」と言うことはとても強力なことです。
「ノー」という言葉は、脳から口まで移動するのに困難な場合があります。
女性の権利や意見が簡単に聞き入れられない状況があるため、この基本的な言葉「ノー」はますます重要です。
「ノー」ということは、
自分自身、自分の境界、そして自分の目標を定義するのに役立ちます。
それはあなたを創造的にし、変化を受け入れることができます。
(省略)
過去に「ノー」と言うことは、あなたの未来に「イエス」と言うことです。
結局のところ、あなたの人生の脚本家は、あなたは自身なのですから。
このスピーチは、アメリカのエンターメインメント専門雑誌『バラエティ(Variety)』が主催するイベント「パワー・オブ・ウーマン(Power of Women)」で行われ、エンタメ業界で活躍しながら社会に貢献する女性を称える趣旨があるため、「女性」という言葉が使われているが、男性やその他のジェンダー、老若男女に共通して言えることだと、個人的には思っている。
バラエティのインタビュー動画でもキムは「No」という言葉を肯定的に捉えたうえで、
「何かを決める時は、直感に耳を傾け、自分が成長できるか、学ぶことができるか」
という判断基準を大事にしていると話してっている。
ちなみにキムは、子供を持たない女性の一人だ。
ある意味、出産や子育てに「NO」
という選択をしているということになるのだが、
「過去に、子供を持たないことによる社会的な偏見について話したことがありますが、今でもそのような偏見に直面していますか。」
という質問には、こう答えている。
「私は今も若い女性たちの指導をしているので、母性的な面を表現していると感じています。
子どもがいないからといって、母性本能を持っていないわけではありません。
それは、女性だけでなく人間であることの一部です。」
私自身も子どもを持たない選択をしている。
その分、世の中の子どもたちが大人の餌食にされないように育てる環境を想像・創造するために時間を使えることを肯定的に捉えている。
また、サマンサが登場しなかったことに関しては複雑な想いが残るが、SATC新章では、過去シーズンよりも、セクシャリティーの多様性や人種差別の問題などが革新的に描かれているという意味では、進歩していると感じる部分もあった。
そのことに関しては下記Vogueの記事で分かりやすく説明されているので割愛する。
ありがとうございます✧