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「ブラック霞ヶ関」著者の千正康裕氏と考える家族と社会保障 【PMI ThinkTank】

Public Meets Innovation(以下PMI)が4月7日に公開した、ミレニアル世代の官民100人とつくりあげた「ミレニアル政策ペーパー第一弾 〜家族イノベーション〜昭和・平成の家族のモデルを超えた、多様な幸せを支える社会のかたち〜」。

今日、テクノロジー、経済・文化の急速な進化・グローバル化が進む中、個人の働き方やライフスタイルを含む生き方の選択肢は過去になく多様化しています。こうした中、私たちは、特にイノベーションが進んでいない分野として、家族のあり方に注目するようになりました。

家族は、それを取り巻く社会の変化に大きさに比べて、テクノロジーやルール、規範のアップデートが十分に進んできたとは言えません。この結果、「戦後の日本が象徴として描いてきた ”家族のかたち”と、個人が求める幸福の形とのズレが生じている」という点に、私たちは問題意識を感じています。

#ミレニアル政策ペーパー では、戦後から続いてきた昭和平成の家族のモデルを再定義し、一人一人が自分らしい生き方を選択できるためにどういった視点が必要か、政策、テクノロジー、文化・社会規範の3つの切り口から検討しています。

そうして作り上げたミレニアル政策ペーパーを、より多くの人に届けていくために、様々な人からアイディア・提言をもらいブラッシュアップしていくために、PMIでは「家族」について取り組んでいる方々との意見交換会を実施しています。


「個別の政策の先にある未来像を自分たちでも思い描いてみたいという問題意識から、このペーパーを制作。個別の問題ではなく、”家族像”という大きな問題関心からビジョンを示して、9月までに個別の政策提言に落とし込んでいきたい」との想いで、このような意見交換会を行っています。

7月5日の今回は、20年近い厚労省でのキャリアをお持ちで、著書「ブラック霞ヶ関」でも有名な千正 康裕さんと意見交換の場を設けさせて頂きました。

千正 康裕氏 プロフィール
2001年 厚生労働省入省(法律職)
〇 法制度の立案 
年金、雇用、子育て、虐待、女性活躍、医療など8本の法改正に携わる。

〇 大臣政務官秘書官 
 ルールづくりの政治サイドの動きをサポート。

〇 在インド日本国大使館一等書記官
 日系企業のビジネス環境整備のためにインド政府に働きかけ、
 日本の医療機器のインドでの実質審査なしの販売を実現
 日系企業の進出支援
 日印の大学など研究機関間の医療分野の協力推進
 社会保障協定発効に向けたインド政府との交渉
 インドとの技能実習制度開始に向けたインド政府との交渉
 日系企業(製造業)の労使紛争の防止
 医療分野のODAなど開発援助
 インパールなど旧日本軍の戦地での慰霊・援助・遺骨収集 など

〇 政府全体の政策と厚労省の政策
 骨太の方針、規制改革、財政・社会保障、地域共生、外国人労働者受入れなどを担当。

〇 医療政策企画官(管理職)
 医師の働き方改革、上手な医療のかかり方、医療の国際展開、医療の生産性向上などを担当。

〇 採用活動・組織改革
 10年以上、面接官や採用説明会の対応。業務改善。

〇 企業やNPOと厚労省をつなぐ
 政策と現場や実務の関係を知るために企業やNPOなどへの訪問をライフワークとし、
 外部の方の政策アプローチなどの相談に乗る。

〇 官僚時代から政策についての発信を10年間(実名個人ブログ、twitter、講演など)

〇 株式会社千正組(現在)
 2019年9月30日 厚生労働省退官(当時44歳)
 2019年10月 個人事業主登録
 2020年1月6日 株式会社千正組を設立し、企業のコンサルティング、
 NPOのアドバイザー、講演・執筆活動、メディア出演などの事業を行っている。

PMI理事の田中より、 #ミレニアル政策ペーパー を一通り説明後、千正さんからは「共感する」というコメントともに、千正さんなりのお考えの「家族」をご紹介頂きました。

正確に言うと、「みんながどうやったら不安を抱えずに安心して生きていけるのか」を考え、そのための家族や社会の変化に焦点を当てて、制度は何をすべきかを考えた結果、作成されたスライドで、なんとこちら、5年程前に、千正さんご自身で作成されたスライドだそうです!

千正さんは、社会保障など人の生活を支える制度をつくる仕事をされてきましたが、そもそも制度の前に、人の生活を支えているのは家族という運命共同体とインフォーマルな支え合いがあるということに着目しています。

家族の機能や家族を支えるインフォーマルな支え合いが弱くなっていく中で、制度はどうしていくかということを考えてこられたそうです。

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高度成長期においては、
サザエさん一家のように三世代同居も多く家族の機能も高かった。そして、従業員の家族の福利厚生を含めた雇用のセーフティネットにも下支えされてた。さらに、地縁・血縁コミュニティの機能がかなり強く、日常の困りごとは助け合いで何とかなっていた時代
です。

こうした家族を中心とした重層的な支え合いのセーフティネットからあぶれた人々(失業、病気・けが、高齢、障害など)を特定して、制度が支えていたいたのが、日本の社会保障の歴史です。


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バブル崩壊後は、
核家族化(同居構成員の減少)、非正規雇用(雇用のセーフティネットの希薄化)、地縁の希薄化(地域のセーフティネットの希薄化)によって、各種セーフティネットが希薄になりました。

この頃、制度は主に何をしたかというと、待機児童問題や介護問題など、「家族では担えなくなった機能の社会化」のための制度の整備が進みました。

弱体化したインフォーマルな支え合いからこぼれたけども、制度に救われない人たちが複合的な課題を抱えるケースも増えました。ニート・引きこもり、こどもの貧困、虐待・DV、困難を抱える女性、自殺など新しい社会課題がどんどん出てきました。経済の低成長・行政改革の流れの中で、行政が十分光を当てられない中で、NPOなどの社会的企業も増えてきたと思います。


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今後何が問題になってくるかと言うと、一つは単身世帯(高齢者の単身世帯、未婚・離婚など)の増加家族の機能はますます小さくなり、脆弱になる一方だと。

「どうしたらみんなが困らないように生きていけるか」
「その時に制度は何をすべきか」

を考えた結果、たとえ家族の在り方は法律で認めたとしても、生き辛さみたいなものは残るのではないだろうか。人は衣食住が足りれば生きられるわけではなくて、必ず人のつながりが必要だ。家族だけではなく、”家族を取り巻くインフォーマルな支え合いの希薄化”についても何らかの手を打って、昭和型とは違う形で再生しないと、社会における生きづらさは残ってしまうのではないだろうか。

自助(働く)、共助(社会保険)、公助(福祉)とよく言うけども、自助と共助の間のインフォーマルな支え合いである「互助」が大切だ。


そんなお話を千正さんからスライドともにご紹介頂きました。

このスライドと見解については、PMI一同インスパイアされ、大変感動でした。その後も議論が活発に行われましたが、議論を一つご紹介します。


PMIより質問
「家族だったり地縁だったりは元に戻そうという人と、オルタナティブをつくろうとする人がいる印象を持っている。個人的には新しい家族像を創り出すとともに、制度も変えていかないといけないとは思っているが、その互助の再生について、千正さんはどのようにお考えでしょうか?」


千正さんより
1:ウェットな地縁的なつながりは、リバイバルできる部分があり、受け入れられる人もいるだろうから、それはやっていけばいいのではないか。

2:助け合いを効率的に行うテクノロジーを使ったサービスの発達(例:As mama)。元気な高齢者がそうでない高齢者を助けるなど。

3:上記1・2の支え合いの輪に入れない孤立化している人に対しては、ソーシャルセクターをもっと強化しなければいけないと思っている。企業がソーシャルセクターに投資だけでなく協働していくことが必要ではないか。ESGやSDGsなど、潮流が来ている。

4:もう一つ、デジタルで困りごとを解決するという方向性はあるだろう。実際、困りごとを抱えている人ほど、情報へのアクセスが出来ない人が多い。これまでの周囲の世話焼きな人の「お節介」が無くなってしまったのを、当事者が普段使っているチャネルからカスタマイズした情報を案内して行政や民間サービスに繋げてることも必要だ。

その後も議論が活発に行われましたが
貴重な意見交換の場を、千正さん、本当にありがとうございました!

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千正さんは、これまで培ってきた企業、NPO、永田町・霞が関、自治体、海外、メディアなど多様なネットワークを活かして、各セクターの方々の特技・力を合わせて新たなサービスや価値を創造する活動をされています。

現在、様々な取り組みを実践・発信されていらっしゃいますので、ぜひこちらもご覧ください!

千正組の「政策人材の教科書」
(政策に働きかける民間の人が必修知識を学べる定期購読マガジン)

政策人材のための教科書 ~現場の声を政策につなげるために~|千正 康裕@千正組|note

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千正 康裕@千正組|note

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